経営学部経営学科 山田 昌孝 教授

きわめて有効な「パーソナリティ・スコアによる採用時期予測モデル」開発。新製品を発売
初期に購入するのは「自立型」の自己観の持ち主である。

研究テーマの概要、今日のマーケティングの現状等についてお聞かせいただけますか。

経営学部経営学科 山田 昌孝 教授

 新たに発売された製品や商品の採用や普及について、その意志決定の包括的モデルから売上予測モデルまでを研究テーマにしています。対象分野はエンターテイメントから耐久消費財まで多岐にわたります。私は工学部の出身なので、マーケティング・サイエンスに興味があります。何らかの法則性を見出し、これを実用化したい。市場の現場で使えないのでは意味がないと考えていま。
 ですから、私の研究室の学生の卒論は、いずれもそのまま活用できるモデルになっています。時代が移り、商品が市場にあふれ、消費者のモノ選びの眼が熟成する中で、これまでのマーケティング手法が機能しなくなっています。たとえば、プロダクト・ライフサイクルでは導入期から右肩上がりでゆっくりとピークを迎え、やがて衰退していくというのが定説ですが、これも異なってきています。特にブランドの場合は、これが顕著です。まったく釣鐘型を成さない。1995年秋に発売されたウィンドウズ95は象徴的でした。新曲CDも発売初日に最高の売上を上げて、後は下がる一方です。欲しいモノは欲しいというベーシックな部分は不変ですが、明らかに様変わりしています。現在の日本のマーケットは、その中でも複雑で読み解くのが難しい。「卒業してリプレゼンタティブになるとしたら、日本を選びますか」と留学生たちに問うと、「日本だけは避けたい」と言っています(笑)。

現在、研究中の「採用時期予測モデル」は具体的にどのようなものですか。

 現在、研究している「パーソナリティ・スコアを用いた採用時期予測モデル」は、きわめて有効なモデルだと考えています。これは、16の設問によって対象者の自己観が「自立型」か「協調型」かを見極め、マーケティングに用いる方法です。質問は切り口を変えているだけで、繰り返し本人がいずれのタイプかを問い、当人が一貫して答えているかをテストしていますので、分析は正確です。しかも、スピーディに行えます。これによって、新製品を初期に購入する人は「自立型」であることが解りました。「自立型」に追従するかたちで「協調型」も購入しはじめるのです。携帯電話の買い替えを事例とした調査でこのモデルが開発されました。性別、年齢、お小遣いなど他の変数も加えましたが、ほとんど関係ありません。ドコモかauかといった履歴が若干影響しただけです。続けて、資生堂が2006年の3月下旬に発売したシャンプーの新商品「TSUBAKI」を対象に調査しています。発売時期から10日単位で区分し、約1000名の学生にWebを通じて協力してもらいました。詳しくはまだ分析中ですが、結果はほぼ予想通りです。人数的には約100名がすでに購入していました。この新商品のテレビCMでは今までに例を見ない6人もの人気女優が登場していますが、その人気度も調べました。1位は竹内結子で31%。2位は仲間由紀恵で21%、3位が田中麗奈で14%といった具合です。思いの外、差が出ています。パーソナリティ・スコアを細やかに分析すれば、早期拡販を実現するためには、どの女優に絞れば良いかということも解ってきます。これは、まだ資生堂の方でも分析できていないかもしれませんが、購入客の男女比では男性が半数以上を占めています。いずれにしても、新製品を高効率で拡販するためには、まず「自立型」を集中的に攻めればよいということです。この人たちだけを集めてオピニオンリーダーにすれば、確実に拡販は加速するはずです。逆に「協調型」の人たちに第2波のセールスプロモーションを仕掛けるのも有効です。このモデルは実に多くの可能性を秘めています。

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