コンピュータ理工学部ネットワークメディア学科 黒住 祥祐 教授

次代の監視カメラをはじめ応用分野はきわめて多彩。
パンチルト方式による全周画像の撮影を実現。

すでに特許も出願済のようですが、研究開発のポイントをお教えください。

コンピュータ理工学部ネットワークメディア学科 黒住 祥祐 教授

 本方式では1ドライブ方式でカメラを全方向に高速回転させ、全周画像を撮影・編集します。高解像度の画像を必要とする視野角で得ることも可能です。これが研究内容の要約です。パンチルト機構と全周囲画像システムについて特許出願中です。これまでのカメラは、上下方向と水平方向を撮影するために、基本的に2つのモーターを用いていました。これを1つで行うのが1ドライブパンチルト方式です。利点は非常に迅速に撮影できるようになるということです。上下方向に回し、一度静止させて、次に水平方向を撮り、さらに斜め方向をねらえば、それだけの時間を要しますが、一度で行えば格段に速くなるというわけです。全周囲を長方形画像(部分的/複数枚)で撮影し、それらを1枚の全周画像に変換します。実際の画像を見ていただかないとイメージしにくいかもしれませんが、円球のすべてを撮影することができます。もう少し具体的にご説明すれば、長方形画像で対象を部分的に連続させながら撮影し、これをつなぐわけです。 長方形の端の部分には歪みができますので、これを修正しながら上下左右360度を映像化します。 たとえば、地球儀がありますね。あれは、いくつかの部分がつなぎ合わせてあります。概念的にはこれに近いとお考えください。全周画像の他に、実用的に用途の多い水平方向の周囲画像を撮ることもできます。上下の幅も自在です。レーダーのように振りながら必要な部分のみを撮影することも可能だと思います。また、デジタルカメラの解像度は中央部の方が鮮明です。ですから、この部分に限定して撮影を繰り返せば、これまで以上に高解像度の画像が得られます。

応用分野や共同研究のニーズなどに関してお聞かせいただけますか。

 魚眼レンズやミラーを用いたり、広角カメラを複数台並べれば、これまでにも全方位の撮影ができました。ただし、それぞれに大きな難点があります。魚眼レンズやミラーの場合は解像度です。デジタルカメラよりも解像度が劣り、方向によって差が出ます。広角カメラは装置が大掛かりになり、利便性が悪い。また、いずれの方法でも撮影ポイントを絞り込むことはできません。本方式を採れば、これらの欠点をすべてクリアすることが可能です。しかし、解決しなければならない課題も残されています。回転させるために、回し始める瞬間の画像が欠落します。速度にもよりますが1枚から2枚ほどは撮れていません。これを補整しなければなりません。その他の技術的な問題としては、コンピュータ制御でも映像のつなぎに僅かながらブレが出る点です。もちろん、最終的には直せると考えています。応用分野としては、監視カメラが考えられます。現在は隅々に設けられていますが、天井の中央に設置すれば、1台で全方向がチェックできます。しかも、どの角度もOKです。高機能で大幅なコストダウンを図ることができます。 装置検査にもきわめて有効です。パイプなどの中も簡単に検査できます。工場の管理にも役立ちます。古墳の中を探索するといった学術分野にも使えます。また、対象物の球面スキャンも可能です。共同研究のテーマとしては、画像の境界に跨る動きのずれを改善するための高速化に必要な可動部分の小型化・軽量化、撮影・画像変換・メモリ保存・位置決めなどの制御に関する共同開発があります。

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