フィンランド University of Jyväskylä

外国語学部 国際関係学科 畑 渓晶さん

留学先 Finland, University of Jyväskylä
留学期間 2017年8月~2018年4月
留学アドバイザー 外国語学部 Maccormack Noah Yoshinaga 准教授
出身高校 大阪府立渋谷高等学校

留学のきっかけ

私は幼い頃から海外に関することに強く興味があり、中学生になる頃にはいつか長期で留学に行きたいと思い初めていました。そして本学の国際関係学科を専攻し、国際平和や国家の社会福祉制度について学びを深めていました。大学で留学に行くことは入学前から自分のなかの大学生活のなかの一つの大きな目標にしていて、特に経済的な面や学校からのサポートを考慮して交換留学を志望していたのですが、私はなかなかIELTS試験で結果を残すことが出来ず、合計4回受験し、最後の一回で資格を満たすスコアを取ることが出来ました。IELTS試験は一回の受験料が高額で、複数回受験することは容易ではありませんでしたが、お年玉やアルバイト代を貯めて、受験していました。フィンランドを選んだ理由は私は国家の幸福や、社会福祉についてもっと勉強したいと考えていた為、2018年度世界幸福度指数一位に選ばれる程、幸福の国として世界中から認識されているフィンランドを選びました。また当初は英語力を磨くため、英語圏留学も考えましたが、“英語を使って何を勉強するか”を大切にしたいと考えた為、英語圏ではないが英語で専門分野の授業を受けられるフィンランド留学を決断しました。また国際関係学科の必修であるフィールドリサーチでオーストラリアに3週間滞在し、勉強面でももちろんですが、現地でコミュニティーを作ることにおいても約3週間ではまだまだ足りないと感じ長期留学の重要性を改めて実感したことも一つのおおきな要因です。

Finland, Jyväskylä

約1年間生活したユヴァスキュラと言う町はフィンランド真ん中あたりに位置します。町と言うよりも村だね、とよく友達と話になるくらい小さくで平和な場所でした。平和と言っても人々はとても自由に生活しているので、町の至る所にスプレーアートがあり、メタル(?)ミュージックが主流、髪の毛が7色ぐらいの人がいたりと、何かと“フィンランド”のイメージを覆される一面もありました。私は、Myllyjärviという名のアパートメントに住んでいたのですが、少し他のアパートメントより家賃は高め(日本円で月40,000円弱程)でしたが、静かで穏やかな場所で、アパートメントの前には大きくてとても綺麗な湖があり、夏場はよく友達と湖に遊びに行きました。スーパーまで徒歩25分ほどかかり、他にスーパーのような買い物が出来る施設もなかった為、一週間に一回大量の食材を調達しに行っていました。フィンランドは物価が高いと有名ですが、ミルクやポテト、ヨーグルトなど生活必要最低限のものは日本と同等かそれ以下の値段で買えるものもありました。一方でバス代や洋服、化粧品、文具などは日本よりずっと高いものも多く、税率の高さを日々痛感していました。

フィンランドの日照時間

フィンランドではサマータイ中、日本との時差は6時間になり一日中太陽が昇っている「白夜」になります。私が現地に到着したのは8月1日で夏も終わりにさしかかっていましたが、日の入りは23時頃、日の出は4時頃とまだまだ日本では想像できないくらいの明るい世界でした。現地に到着した直後は湖に飛び込めるくらい日中は暑かったのですが、毎日実感できるスピードで寒くなり、日照時間も短くなっていきました。初雪が降ったのも10月末で、暗さも11月には16時にはすっかり日が落ちてしまっていました。私は体験したことのない暗さがとても怖く、毎日のように友達に「暗くなるのが怖い!!」と泣き言を言っていました。Vitamin Dのサプリメントを毎日摂取していたのですが、本当に気休め程度で効果は実感できませんでした。それよりも沢山寝て、美味しいものを食べて、友達とゆっくり時間を過ごして、リラックスしていたら、あまり暗さのダメージを受けず楽しんで毎日を過ごせました。

Finns

一般的なフィンランド人のイメージは、シャイであまり感情を表に出さないと言われています。実際、物静かで無表情な人が多く最初はとっつきにくく感じることもありましたが、心を開いてくれたあとは、ユニークでおしゃべりな人ばかりでした。寒くて暗い国で生きている一方、フィンランドに住む人々の心はとてもあったかく、困った時にはみんな快く助けてくれます。実際に駅中で迷ってしまった時、私と友人が携帯を見ながらきょろきょろしていたら「You need help?」と見知らぬフィンランド人の方が英語で電車の乗り方を教えてくれたこともありました。フィンランドは治安もとても良く、困っても助けてくれる人ばかりで大変暮らしやすい国だといつも感じていました。

University of Jyväskyläでの学び

私は大学でHumanities and Social Sciences を専攻しており、フィンランドの移民政策など社会に関することをメインに学んでいました。フィンランドの移民政策を扱ったMigration policyは、毎週20ページ前後のヨーロッパの移民政策に関する論文を読み、その内容について授業中にディスカッションをしました。留学生も多く授業取っており、ディスカッションもさまざまな国の意見や状況が加わりいつも大変興味深いものでした。また私は自分の専攻学部以外にもビジネスやコミュニケーションの授業などなかなか学ぶ機会がなかった分野も積極的に受講しました。そのなかでもFundamentals in multilingual and intercultural communicationという授業は、留学に行っていた人、現在留学でユヴァスキュラ大学に来ている人、次の学期に留学に行く予定の人が受講する授業があり、留学中の気持ちの変化や、留学先にどうやって馴染んでいくか、フィンランドが抱える差別問題などをグループワークやゲストスピーカーを招きながら進めていく授業があり、自分が留学中ということもあり、大変興味深かったのを覚えています。

フィンランドの授業は実際に授業に出席することよりも、論文を読んだり、エッセイを書いたりと授業外学習への比重がとても大きいものでした。いつも学校の図書館は満席で、みんな閉館まで勉強している姿に授業ひとつひとつの重みを感じる一方で、その分バケーションも多くフィンランドの学生はonとoff を上手に切り替え、勉強している印象を受けました。

Family and Friendship Program

ユヴァスキュラ大学には交換留学生用にFamily and Friendship Programというプログラムがありました。プログラム内容は現地の家族と週に一回程度交流しながらお互いの文化に触れるというものでした。私はホストファミのリー都合により前期と後期で別々のファミリーにお世話になったのですが、前期は偶然ユヴァスキュラ大学の留学生コーディネーターとして働いているホストマザーと付属中学校の先生をしているホストファザーの家庭にあたり、学校のこと、生活のこと、ホームシックになったことなど沢山話を聞いてもらい、そしてアドバイスなどを貰いました。それだけでなくお家に招待してもらい一緒にフィンランド料理を作ったり、雪山にフリスビーをしに連れて行って貰ったりとフィンランドでの忘れられない思い出が沢山できました。また私は幸福の理由を知りたいと思いフィンランドに行ったのですが、このホストファミリーとの経験を通じて、家族を愛おしみ、一緒にする時間を大切にすることが、彼らが幸せにのんびり暮らしている理由の一つでもあると感じました。

後期のホストファミリーは2歳の女の子がいるお家でした。私のつたないフィンランド語でコミュニケーションを取ることは簡単ではありませんでしたが、うまくコミュニケーションが取れた時はいつもすごく嬉しくて、次に会う時までに新しい単語を覚えておこうという、モチベーションにもなりました。ホストファミリーのお家でお料理している時、ホストファザーがナイフで指を切ってしまい緊急で病院に行かなくてはならなくなったのですが、お医者さんのホストファザーは「フィンランドでは救急病院に行くと軽く2時間は待たされるから、友達の所(同じお医者さん友達)に行ってくるよ」とホストファザーが車で友人宅に向かって行く姿には大変驚かされました。このプログラムを通じてフィンランドでの家族との生活を沢山知ることができました。

Erasmos schoolを使用した学校見学・ボランティア活動

私は留学中、ユヴァスキュラ大学から更に田舎に行った小さな小・中・高等学校一貫の学校にフィンランド教育の見学と日本文化を伝えるボランティアを兼ねて2回訪問しました。学校の方が教えて下さったのが、フィンランドの田舎の方はフィンランド人以外の人、特にアジア人と出会う機会が少なく、生徒達に異文化交流をしてもらうことを目的に実施していらっしゃるそうです。私はErasmos schoolと言う留学生を対象にしたプログラムに参加して、この学校見学に行ってきました。Kangasniami という名の村で、ユヴァスキュラから車で40分ほどかかり、校長先生が車で迎えに来てくれました。

朝から小学校・中学校を見学し、また授業時間を貰ってパワーポイントを使用した日本文化に関するプレゼンテーションをしました。
事前にコンタクトを取った時、「かるく日本のことを喋って欲しいから、写真を持ってきてね。」と言われていたのですが、実際授業に行ってみると、授業時間全て貰ってプレゼンテーションをすることになり、生徒の日本に関する質問をその場でインターネットを使いながら答えていく方法を取り、無事授業を終えることが出来ました。授業をまるまる任せて頂き不安もありましたが、たくさん日本のことを知ってもらえ、反対に生徒達からもフィンランドについて教えてもらい、たくさんの学びがありました。
午後からは美術やクッキングなど実践的な授業を見学しました。小学5年生のクッキングの授業は大変印象に残っており、日本の調理実習と比べて、より実践的で生徒の参加度合いがとても高いように感じました。例えば、菓子パンを作るときも2人ペアで20個程度のパンを焼き、配膳や片付けをきちんと自分達で終わらせており、自立することを学校で学んでいるイメージを持ちました。
小学校や中学校の授業が終わった後は、高校の授業にショートプレゼンテーションと授業見学に行きました。フィンランドの高校は必修の他に自己選択で学習する分野も多く、フィンランド語であまり理解はできませんでしたが、ディスカッションやプレゼン等を含めたかなりハイレベルな授業を行っていました。

ドイツ語授業のクラスメイト達

海外旅行について

フィンランドの冬は暗く、どうしても気分が落ち込んでしまうため、気分転換も兼ねてヨーロッパ圏内の旅行に頻繁に行っていました。スウェーデンを始めフランスやイタリアなど、格安フライト等を使用し約10か国を旅行しました。フィンランド留学前は自分がこんなに沢山旅行するとは想像もしなかったのですが、現地の大学でヨーロッパ各国から来た友人ができ、彼らの母国の話を聞くととても興味を惹かれ自ら訪れてみたくなったことが一番の旅行のモチベーションでした。どの国も言葉では言い表せない程素敵だったのですが、特に印象に残っているのがイタリアとトルコです。
イタリアはローマを訪れたのですがヨーロッパでは水道水が飲めない国がほとんどなのにも関わらず、ローマでは町の至る所に湧き水を引いた蛇口があり、冷たくて美味しい水を飲むことができました。またイタリアの人々はとても陽気で、落としてしまった水のボトルを一緒に探してくれたりと、物静かなフィンランド人の国民性のギャップをダイレクトに感じとても面白かったです。一方のトルコはヨーロッパとアジアの雰囲気が入り混じった不思議な国で、物価が安く、食事も日本人の口に合い、何よりもトルコの人々はとても親日で日本人と言っただけでおまけをつけて貰え、日本人にとって、とても旅行しやすい国だと感じました。スペインやイタリアは万引きなど軽犯罪が心配でしたが、ポケットは使わない、貴重品はセーフティポーチに入れて肌身離さず持ち歩く等の基本的なことを意識するだけで、安全な旅行をすることが出来ました。そしてフィンランドに行くまでは国内旅行でも旅行会社のツアーを使用して行っていましたが、数々のヨーロッパ旅行を自分で全て手配する中で、航空券やホステルなど旅行の手配を抵抗なく出来るようになりました。世界の文化や人々に触れ、経験値のみならず感性や思考の幅を豊かになったと感じています。

親友について

留学当初はなかなか打ち解けた関係の友達が出来ず、友達ってなんだったっけ?!と、悩んだ時期もありましたが、日本に興味があるフィンランド人が集まるサークルや、ペアワークが多い言語の授業を積極的に取ることにより、人に出会う機会を増やし留学の後半には一生の友達と呼べる素敵な出会いがありました。彼らとは母語や育ってきた文化は違っていても、ずっと前から知り合いのような居心地の良さがあり、国境を越えたこの友情は私に人との出会いの素晴らしさを改めて教えてくれました。またフィンランド人と仲良くなったことによって、外から見るだけではわからなかったリアルなフィンランドのいい点・悪い点を沢山教えてもらい、これまで以上にフィンランドを身近に感じられるようになりました。

この留学を経て感じる自分の変化

私は幼い頃から留学に行くことが目標で大学に入学をしてからも、その目標を叶えるため様々なことに力を注いで来ました。ですがその分、留学自体に比重を置き過ぎていたこともありフィンランドで留学生活を始めたあと、何をしていいのか一瞬何も分からなくなってしまいました。ですが今では、焦らずにフィンランドでしか経験できないこと、学べないこと、出会えない人々などその時その時を大切に過ごせればよかったのだと感じます。実際、結果としてフィンランドの幸福の秘訣や国境を越えた親友など私が憧れていたものは、焦らず現地での生活を満喫出来るようになってから、少しずつ感じることができる様になりました。もしこれから留学をする人がいれば、焦らずに留学先で過ごす一瞬を全力で楽しんで欲しいと心から感じています。また私は留学先で沢山悩んで、いろんな人に力を借りながら乗り越えた経験は、どんな環境でも自分心とよく相談する大切さや、助けてくれる周囲の大切さを改めて教えてくれました。辛い思い出も今では私を成長させてくれた大切な思い出です。

今後について

フィンランドで様々な経験をして、帰国してからは以前よりも焦らず自分らしさを大 に出来るようになりました。帰国してからは新しい視点でも日本のことを捉えられる ようになり、これは今後の私の人生をずっと豊かにしてくれると感じています。今後 は、フィンランド留学で広くなった視野やヨーロッパを旅行してみてきた世界、そし てコミュニケーション能力を働くことでもしっかりと活かしていきたいと考えてい きたいと考えています。この留学を思い返してみると、いいことばかり思い出して、 本当に行くことが出来てよかったと感じています。この留学は沢山のにサポートをし て頂き実現できたことです。今後は少しでもこの感謝の想いを還元できるようにしていきたいと感じています。
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