大窪 七彩さん(カーン/カーン大学)

フランス留学体験記

はじめに

カーン城から見える街並
フランス北西部、バス=ノルマンディー地方にある美しい街カーン。私は、この街にあるカーン大学に交換留学生として約10ヵ月間留学をさせていただきました。カーンはカルヴァドス県の県庁所在地なのですが、それほど大きな街ではなく、ノルマンディー地方特有の造りで建てられた家々が立ち並ぶとても美しく、住みやすい街です。私は、この留学がきっかけで初めてカーンという地名を知りました。日本では「カーン」と言っていますが、実際にはCaenと書いて、日本人には「コン」のように聞こえる音で発音します(厳密には、[kã]という発音です)。その為、留学当初は自分の暮らしている街の名前すら聞き取れず、苦労したのを覚えています。街の中心には、ウィリアム1世により建てられたカーン城、その目の前には高く聳え立つサン・ピエール教会。お城を囲むように植えられた芝生の上でサンドウィッチを食べ、教会や街並み、そして寝転がって美しい空を眺めながらのんびりするのが大好きでした。

留学のきっかけ

有名な男子修道院
私が外国語に興味を持ったのは中学生の頃。ネイティブの先生に学ぶ授業が楽しく将来は外国語を使って仕事がしたい、そう思ったのがはじまりです。その為、高校も自分で好きな授業を選択出来る総合学科に進学し、高校2年生の夏にはアメリカに短期留学をしました。「少しでも英語が話せるようになりたい」と思い留学するも、辞書がなかったら会話が続かなかったり、どうしても積極的に発言が出来なかったり、と楽しかった思い出ばかりでなく、自分の無力さや悔しさを感じ、大学に入ったら絶対に1年間留学をしようと決めました。なぜ、フランス語を学ぼうと思ったか。それは、このアメリカ留学でたまたまステイ先が同じだった女の子が話す言葉、それがフランス語だったのです。私が初めてフランス語を聞いた時は、すごく美しい言語だなと感じ、フランス語を学んでみようかなと思ったものの軽い気持ちでしかありませんでした。しかし、フランスという国について調べていくにつれて、自分自身で見て感じたい、そして学びたいと思うことがフランスにはたくさんあることに気が付き、フランス語学科を選び、フランスという国に留学することに決めました。

フランスでの生活

私自身1人暮らしが初めてで、しかもヨーロッパ。日本との時差は8時間、飛行機で約12時間。そう簡単に帰れる距離でもないし、時差を考えて電話もしなければなりません。その上、この学校の交換留学生は過去にはおらず、話を聞ける人もいませんでした。その為、留学初日パリから電車でカーンに向かったものの、家にどうやっていけば良いのかさえ分からなかったのです。協定校からも詳しい地図やバスの案内もなく、日本から地図を調べることも出来ず、私ともう1人の交換留学生と周りの人に協力を求めながら、なんとか家にたどり着くことが出来ました。そして家に着いたものの、まだ入居出来ないと言われたり、留学の初日は散々な1日でした。こうして始まった留学ですが、楽しいことも辛いことも数えきれないほどありました。中でも、ホームステイ先の家族と過ごした日々はとても楽しい思い出です。初日は緊張しすぎて何も話すことが出来なかったのですが、ホストマザーに料理を教えてもらったり、庭で家族と友達を招いてのバーベキューをしたりしているうちに自然と会話に入れるようになっていきました。授業は、フランスならではのワインやチーズの授業がある日やみんなでゲームをして大笑いをした日、授業についていけず、悔しくて泣いてしまった日もありました。しかし、様々な国から留学しているクラスの仲間は、理解出来ていない私を見捨てるのではなく、とても親切に教えてくれました。その他にも本当にたくさんの問題がありましたが、充実した留学生活を送ることが出来たのは、周りの人たちの支えがあったからだと思います。そして、周りの人たちに支えてもらいながらも精一杯自分に出来ることをやり遂げ、問題を乗り越えていったことで留学以前よりも成長でき、この留学で得ることの出来た大きな成果だと思います。
ステイ先の庭でバーベーキュー
大好きな学食

ヨーロッパ旅行

以前から、リゾート文化やツーリズムに興味があったため、たくさん旅行をし、様々な角度からフランスという国やヨーロッパの国々を見てみたいと思っていたことから、授業がない日や長期休暇を使っていろいろな場所に旅行をしました。私の将来の夢の為には見ておかなければいけないと思った世界三大カーニバルであるニースのカーニバルを見に行こうと決めたのは、開催日の2日前でした。このように、今週末旅行しようとかばん1つで旅行に出かけた時もあれば、数ヶ月前から計画を練って旅行した時もあります。そして、留学最後の1カ月間、私はホームステイ先を出て、2人がかりで閉めないと閉まらないほどのスーツケースを持って電車とバスでヨーロッパの様々な国を旅しました。日本ではなかなか経験することの出来ないこともたくさんありました。スイスから帰る電車が突然キャンセルされ、国境を越えローカル電車でフランスまで戻ったこと。8時間を廊下で過ごしたポーランドの満員夜行列車。ホテルの部屋の洗濯機が壊れていて部屋中水浸しになったハンガリー。高校の時の友達と再会して手打ちうどんを作ったドイツ。毎日のように中国人と間違われたこと…たくさんの思い出があり、留学や旅行が出来て本当に良かったです。

最後に

フランスはMerci(ありがとう)、Pardon(すみません)という言葉が街中にあふれている素晴らしい国です。私は「ありがとう」という言葉があふれた国で留学生活を送ることが出来たことを本当に嬉しく思います。この留学で充実した生活を送ることが出来たのは、私を支えてくれたたくさんの人のおかげです。ステイ先の家族や友達、親戚、先生方。それだけではありません。スーツケースを運んでくれた人、一緒にお店を探してくれた人、優しいカーンの街の人々…たくさんの方々にお世話になりました。中でも、誰よりも私のことを思い、支えてくれた家族には本当に感謝しています。Skypeで祝ってもらった誕生日や両親の温かい言葉、生活に困らないようにと何度も何度も送ってくれた荷物。どれも形には残っていませんが、その両親の想いは決して忘れられない私の大切な宝物です。この留学を通して、人は一人では生きていけないということを改めて強く感じました。この留学で得た経験は、決して語学だけではありません。そして、この貴重な留学経験を無駄にしないように、これからの就職活動や生活に役立てていきたいと思います。

外国語学部 フランス語学科 大窪 七彩
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