京都産業大学創立60周年・文化学部開設25周年記念シンポジウム

京都産業大学創立60周年・文化学部開設25周年記念シンポジウム

京都産業大学文化学部では、2000年4月の開設以来、文化学の素養と豊かな教養を持ち、地域社会および国際社会に貢献する意欲を有し、柔軟な適応力と文化に関わる諸問題に対処できる能力を備えた人材の養成を行ってきました。このたび、2026年4月に、文化構想学科、京都文化学科、文化観光学科の3学科体制へと再編し、伝統的な人文学を基調としつつ、情報学的手法も取り入れながら、次世代を見据えた新たな研究領域を切りひらき、実社会に対して学びの成果を提供・還元・発信していくことを目指します。

新たに生まれ変わる京都産業大学文化学部の教育研究内容を紹介するシンポジウムを、全3回開催いたします。

主催:京都産業大学文化学部/共催:京都産業大学日本文化研究所/後援:京都新聞、KBS京都、(公社)京都市観光協会

「であう、もぐる、ひらかれる-人文学×デジタル=文化構想学-」

人文学の諸分野の知見とデジタル技術を組み合わせて、現代社会の様々な課題解決に取り組み、未来に向けた新たな文化のあり方を構想する学問領域—それが私たちの考える文化構想学です。様々な実例を通して、文化構想学の魅力と特徴をお伝えします。

開催日時 2025年5月17日(土)13:00~16:00 (予定)※開場12:30
会場 京都産業大学むすびわざ館ホール(京都市下京区中堂寺命婦町1-10)
定員 約200名
入場料 無料
プログラム
趣旨説明 近藤 剛(文化学部教授)
発題 文化構想学科就任予定教員による講演
テーマ①:「知の冒険と共創—デジタルヒューマニティーズがひらく新しい教育の可能性」
登壇者:須永 恵美子(文化学部 准教授)
テーマ②:「「気になる」を見つめる・「ワクワク」を広げる—デジタルで深める美術史の世界」
登壇者:桑原 夏子(文化学部 准教授)
テーマ③:「デジタルアーカイブによる日本のメディアアートと映像研究の現状と未来」
登壇者:平澤 剛(明治学院大学言語文化研究所研究員/2026年4月文化構想学科着任予定)
コメント ・梶原 洋一(文化学部准教授)
・田中 里奈(文化学部准教授)
総合司会 加野 まきみ(文化学部 教授)

近藤 剛 教授

文化学部副学部長・国際文化学科 教授(2026年4月文化構想学科着任予定)
専門分野:宗教哲学・組織神学
主要著書等:『尚古の思想』『問題意識の倫理』『増補版 キリスト教思想断想』(いずれもナカニシヤ出版)

要旨

今日の文化研究の特徴は、従来の学問領域では十分に捉えきれなかった文化事象を把握しようと試みる点にあります。文化の多様な側面を理解するためには、歴史、思想、文学、芸術、音楽、舞台芸術、映画、メディア、異文化コミュニケーションといった諸分野との関係に着目し、様々な学問領域の視点と方法を組み合わせる必要があります。このたび新設される「文化構想学科」(Department of Cultural Exploration and Co-creation)では、「歴史、思想、文学、芸術といった人文学の知識と方法論を基礎に、情報学的手法を取り入れながら、国際的なコミュニケーションを可能とする英語運用能力を用いて文化交流・発信に努め、人間らしい文化的な社会を構想し、その実現のために協働できる人材」を育成するカリキュラムの実現を目指します。文化構想学科は人間性の理念を核として、その文化的表現の在り方を複層的に捉え直し、文化の本質的価値を探究します。そして、新たに見出された価値を発信して、積極的なグローバル化とデジタル化を視野に入れた交流を生み出し、文化の共創に努めて未来を切り拓いていきたいと考えます。

須永 恵美子 准教授

文化学部 国際文化学科 准教授(2026年4月文化構想学科着任予定)
専門分野:デジタルヒューマニティーズ
主要著書等:須永恵美子・熊倉和歌子『イスラーム・デジタル人文学』(人文書院)

要旨

デジタルヒューマニティーズとは、従来型の人文学にデジタル技術を取り入れることで新たな知見を得るための研究分野です。たとえば、歴史資料や古文書に対して、GIS(地理情報システム)やネットワーク分析、OCR(自動文字認識)、AI機械学習など、多様なデジタル技術を活用する革新的な取り組みが始まっています。これらの技術は、最先端の研究者やテクノロジーの専門家だけでなく、文化を学ぶ大学教育の現場でも活用可能です。デジタルアーカイブを用いた資料の読解や、VR空間を利用した新たなプレゼンテーションの手法など、デジタル技術が切り拓く未来の学びと文化の可能性について考えます。

桑原 夏子 准教授

文化学部 国際文化学科 准教授(2026年4月文化構想学科着任予定)
専門分野:西洋美術史
主要著書等:『聖母の晩年-中世・ルネサンス期イタリアにおける図像の系譜』(名古屋大学出版会)

要旨

デジタルを取り入れることで、大学での学びはどのように変わるのでしょうか?その疑問について、西洋美術史の場合をケース・スタディとして考えていきたいと思います。美術史学という学問は、美術作品が誰によって、なぜ、どのように作られ、それがどんな風に社会に受容されてきたのかを学ぶものです。大学で美術史を学ぶ学生も、美術史の研究者も、「なんとなく好き」「ちょっと怖くて気になる」「惚れ惚れする」など、自分の「気になる」が研究のスタートです。ただ、研究を始めたばかりの学生は、どのような文献を読んだら良いか迷ってしまったり、先行研究の吟味に集中しすぎてしまい、その結果、せっかく持っていた自分なりの「気になる」を後まわしにしてしまうことがあります。デジタルを活用することで、自分が目をつけた「気になる」を勉強の中心に据えることができ、なおかつ、人文学の土台である文献読解のスキルも一緒にあげることができる、その具体的な事例をモネの《睡蓮》と京都のレトロタイルを例に解説していきます。

平澤 剛 氏

明治学院大学言語文化研究所研究員(2026年4月文化構想学科着任予定)
専門分野:メディア、映像研究
主要著書等:Japanese Expanded Cinema and Intermedia, Archive Books: Germany、『風景論以後』(東京都写真美術館)

要旨

21世紀に入り、メディアアート、映像を中心とした日本文化に対する関心は、国際的に高まっており、日本国内だけでその研究が完結するものではなくなっています。また、デジタル技術の発展によるネットワークやアーカイブの構築、デジタルヒューマニティーズによる新しい領域横断的な研究などが、飛躍的に拡がっている。本発表では、新たな文化構想学を考えるうえで、デジタルアーカイブによるメディアアート、映像研究の可能性を議論するために、国内外における関連するアーカイブの歴史を、実際の活動、作品を交えて紹介するとともに、今後の学術的、技術的な課題などについて検証していきたと思います。

 

「京都文化学と文化遺産 -仏教美術を中心に-」

京都文化学の意義を、文化遺産、特に寺院と仏教美術に焦点をあてて考えます。あわせて文化遺産の調査・研究・活用に関する京都文化学科の試みを紹介し、これからの京都文化学科と京都文化学の未来を展望します。

開催日時 2025年5月31日(土)13:00~16:00 (予定) ※開場12:30
会場 京都産業大学むすびわざ館ホール(京都市下京区中堂寺命婦町1-10)
定員 約200名
入場料 無料
プログラム
趣旨説明  吉野 秋二(文化学部教授)
発題 テーマ①:「京都の寺院と彫刻」
登壇者:高橋 早紀子(文化学部 准教授)
テーマ②:「醍醐寺の文化遺産とその継承」
登壇者:田中 直子 (総本山醍醐寺 霊宝館 学芸員)
テーマ③:「京都文化学科と文化遺産」
登壇者:吉野 秋二(文化学部教授)
パネルディスカッション 【テーマ】「文化遺産と大学教育-京都文化学科の実践から-」
・村上 忠喜(文化学部 教授)
・吉野 秋二(文化学部 教授)
・高橋 早紀子(文化学部 准教授)
・田中 直子(
総本山醍醐寺 霊宝館 学芸員
総合司会 笹部 昌利(文化学部 准教授)

当日、同館内ギャラリーにて「などころ と めいしょ—和歌から洛外図まで—」(5月1日~7月5日)を開催しています。

同展示には2022年に京都産業大学が購入した「洛外図屏風」(八曲一双)を展示しています。本邦初公開です。展示は前期・後期に分けて片隻ずつの展示になりますが、5月31日にはシンポジウムに合わせ、当日12:00~16:30の間、ホール前にて左隻を展示いたしますので、この日のみ両隻を一度にまじかにご覧いただけます。なお、シンポジウム終了後、15:30頃から村上忠喜(文化学部教授)による洛外図解説を行いますので、そちらの方も足をお運びください。

左隻
右隻

吉野 秋二 教授

文化学部 京都文化学科 教授
専門分野:日本古代史
主要著書等:『日本古代社会編成の研究』(単著・塙書房)、『古代の食生活』(単著・塙書房)、『古代都城のかたち』(共著・同成社)など

要旨

文化学部京都文化学科は、2015年の創設以来、2019年の大学院京都文化学研究科設置、2021年の観光文化コース増設と着実な前進を果たしてきました。今回の報告では、京都文化学科の歩みを文化遺産の探究や継承につながる活動を仏教芸術にかかわるものを中心に振り返り、歴史都市・文化都市京都と京都文化学科の〈未来〉を展望します。

高橋 早紀子 准教授

文化学部 京都文化学科 准教授
専門分野:日本美術史(仏教美術史)
主要著書等:『神仏融合の東アジア史』(共著・名古屋大学出版会)、Dynamics of Interregional Exchange in East Asian Buddhist Art, 5th–13th Century(共著・Vernon Press)、『仏師と絵師—日本・東洋美術の制作者たち』(共著・思文閣出版)、『「見える」ものや「見えない」ものをあらわす—東アジアの思想・文物・藝術』(共著・勉誠社)など

要旨

平安京遷都の十二年後、空海によって密教の教えが日本にもたらされました。空海は、密教の奥深い教えを示すには文字だけでなく絵画や彫刻が必要であると述べ、視覚やイメージの重要性を主張しました。こうした思想を背景として多くの密教美術が生み出され、千年の時を越えて京都の地で守り伝えられてきました。密教は京都文化の基層をなしており、その最初期の寺院や彫刻について知ることは、京都の文化遺産のより深い理解につながります。空海とその弟子たちが関わった寺院と彫刻を取り上げ、仏像にこめられた密教思想や祈りを読み解くことで京都文化を重層的にとらえます。

田中 直子 氏

総本山醍醐寺 霊宝館 学芸員
専門分野:文化財保存・文化史・教育学
主要著書等:『文化財の誕生—寺宝の整理と継承の歴史的変遷—』(単著・法藏館)、『文化創造としての和文化教育—過去・現在・未来の絆を紡ぐ—』(共著・風間書房)

要旨

京都は794年に平安京がつくられて以来、千年以上、日本の都として存在してきました。ユネスコは、1994年に、京都を中心とする17の社・寺・城を「古都京都の文化財」として世界遺産に認定しました。その構成資産のうち13は寺院です。仏教・仏教文化は、6世紀半ばに日本に受容されました。それ以降、日本における仏教・仏教文化は歴史に翻弄されながらも、現在まで途絶えることなく続いています。しかも、仏教文化の中では、建築・庭園・絵画・彫刻・工芸など、美の粋が育まれ継承されてきました。このように創出され、明確な意思により継承された伝世品を今も生きた文化の中で活用しているということは、世界的に見ても貴重でたぐいまれな事例といえるでしょう。このような、文化財の特徴を、「古都京都の文化財」を構成する寺院の一つ、醍醐寺を例に紐解いていきます。

 

「『文化観光』って何だろう? -新たな学びが京都で拓く-」

2026年4月に新たに開設予定の「文化学部文化観光学科」では、文化観光を学び、担う人材を育成します。当学科教員は、食文化、サブカルチャー、伝統文化、建築文化、観光産業など多様な分野の研究者が集っており、日本を代表する文化観光都市「京都」を舞台に、フィールドワークやワークショップを中心とした多彩なゼミを展開します。学科開設を記念し、そのビジョンやミッションを皆さまにご紹介します。

開催日時 2025年6月14日(土)13:00~16:00 (予定) ※開場12:30
会場 京都産業大学むすびわざ館ホール(京都市下京区中堂寺命婦町1-10)
定員 約200名
入場料 無料
プログラム
趣旨説明 寺岡 伸悟(奈良女子大学教授/2026年4月文化観光学科着任予定)
発題 文化観光学科就任予定教員による講演
テーマ①:「建築鑑賞のススメ:文化観光資源としての建築」
・前田 尚武(京都美術工芸大学特任教授/2026年4月文化観光学科教授着任予定)
テーマ②:「コンテンツツーリズムから振り返って考える京都の観光の姿」
・奥野 圭太朗(文化学部 講師)
パネルディスカッション 【テーマ】「あなたにとって『文化』とは、『観光』とは」
・2026年4月文化観光学科着任予定教員
総合司会 大平 睦美(文化学部教授)

寺岡 伸悟 氏

奈良女子大学教授(2026年4月文化観光学科教授着任予定)
専門分野:観光社会学・地域社会学
主要著書等:『よくわかる観光社会学』(共編著・ミネルヴァ書房)、『観光メディア論』(共編著・ナカニシヤ出版)、『現代観光学』(共著・新曜社)、『ザ・ツーリスト』(共訳・学文社)など

要旨

観光は、国内だけでなく世界の人々と互いを知り合う素晴らしい機会です。しかし、オーバーツーリズムなどの問題も生じており、観光を「量から質へ」と転換していくことが求められています。このときのキーワードが「文化観光」です。観光を、文化との出会い・相互理解の場、そして文化を守る/育てる場としていくためには、多角的で実際的な学びが必要となるでしょう。私の講演では、こうした「文化観光」の必要性と、その学びの具体的なイメージについて話します。

前田 尚武 氏

京都美術工芸大学特任教授(2026年4月文化観光学科教授着任予定)
専門分野:建築文化、ミュージアム計画
主要著書等:『モダン建築の京都100』、『建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの』(いずれもEchelle-1)

要旨

近年、専門家ではない一般市民の間で「建築文化」を楽しみ、学びたいという関心が着実に高まっています。私は建築士と学芸員という二つの視点を活かし、名建築の保存・活用に取り組むとともに、「建築鑑賞」を楽しむ人々を増やすための研究や活動を続けてきました。本発表では、これまで実践してきた活動の具体的な紹介を通じて、建築が「文化観光資源」として持つ可能性について考察します。とりわけ京都は、震災や戦災の影響を比較的受けていないことから、伝統的な古建築から現代建築まで、名建築が濃密に現存しています。この街は、いわば「建築のフィールドミュージアム」です。京都という地で「建築文化」を学ぶことで、日本文化の深い本質に触れることができるでしょう。

奥野 圭太朗 講師

文化学部 京都文化学科 講師(2026年4月文化観光学科着任予定)
専門分野:観光社会学・サブカルチャー観光論
主要著書等:『旅行業界におけるクレーマーの意義に関する社会学的一考察』(旅行新聞新社)、『地方創生のための観光客の趣味趣向に沿うAI観光リコメンドシステムの提唱』(第17回ITSシンポジウム論文)

要旨

コンテンツツーリズムとは、アニメやゲーム、ドラマや小説、映画などの「作品(コンテンツ)」を由来とする観光の総称です。「アニメ聖地巡礼」などの言い方でも知られています。それ自体が楽しい観光行為ですが、昨今では、新しい文化を知る・学ぶきっかけとしても機能しています。京都は様々な作品に出てくることの多い土地柄。コンテンツ由来の観光が持つプラスとマイナスの両側面を振り返り、そこから京都の理想的な観光の在り方を探ってみたいと思います。

参加申込について(各回共通)

以下の留意事項をご確認の上、同意いただける方はお申込みください。

留意事項

  • お二人以上での参加をご希望の場合は、お手数ですがお一人ずつお申込みください。
  • 観覧中にマスコミ関係者による撮影・取材が入る可能性があります。
  • 観覧中にスタッフがイベントの様子を撮影し、京都産業大学の広報活動(HP、SNS、広報誌等)や活動報告で使用させていただく可能性があります。
  • ご提供いただいた個人情報は、本シンポジウムの運営・連絡のみに使用します。これ以外の目的には利用しません。
お問い合わせ先
京都産業大学 文化学部事務室
〒603-8555 京都市北区上賀茂本山
Tel.075-705-1941
E-mail:bunka-jim@star.kyoto-su.ac.jp

文化学部事務室 窓口取扱時間
月~金曜日:9:00~16:30(13:00~14:00を除く) 土曜日:9:00~12:00
日曜日・祝日:休業につき取扱いいたしません。
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