AI翻訳が急速に発達、語学学習は必要か?

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AI翻訳が急速に発達する現代、 語学学習は必要か?

ここ数年でAI翻訳の精度は飛躍的に向上。自然な文章による翻訳が瞬時に 生成・量産されるようになった今、語学を学ぶ必要性はあるのでしょうか。

AI翻訳が発達しても外国語を 本当に理解するためには語学が必要。

AI翻訳の進歩は目覚ましく「AI翻訳があるから語学を勉強しなくても良い」と考える⼈もいるかもしれません。しかし、それは⼤きな誤りです。AIは⽂の意味を理解した上で翻訳しているのではありません。膨⼤な対訳データに基づいて統計的にもっともらしい訳⽂を⽣成しているに過ぎないのです。ですから、いくらAI翻訳の精度が向上しようとも、AIが誤訳する可能性をゼロにすることは原理的に不可能であり、その訳⽂の正しさを判断できるのは我々⼈間だけなのです。また、たとえ訳⽂が正しくても、もっと根本的な問題があります。分かりやすい例として"There is a book on the table."と"There are books on the table."という英⽂を考えてみましょう。このどちらに対しても、「机の上に本がある」は訳⽂として正しいです。しかし、この正しい訳⽂を⾒ても"a book"と"books"の違いは分かりません。

また、冠詞の有無によって重大な意味の違いがあるにもかかわらず、日本語訳ではその意味の違いが分からないこともあります。同じような日本語に訳される単語や表現でも、日本語に訳出できない意味の違いがあることもあります。言語が表す意味はそれぞれの言語に固有のものがあります。そのため、原文が持っている意味を完全に翻訳で伝えることはできないのです。よって、翻訳さえあれば原文を読むことは不要だと思うことは極めて危ういことなのです。原文の本当の意味を理解するためには、その言語そのものを学ぶ必要があるのです。

外国語学部 ヨーロッパ言語学科 フランス語専攻
平塚 徹 教授

専門分野:フランス語学、一般言語学

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