平成27年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

学習成果実感調査は、対象科目数42科目(全履修者数3884名)のうち40科目に対して実施(実施率:95.24%)した。また回答者数は2492名であり、回答率は64.16%であった。
全科目における出席回数に関して、84%の学生が出席率80%以上であると回答している。履修に関してシラバスを確認したかどうかに関する質問に対しては、71%の学生が確認したと回答している。この結果から、シラバスを見て授業を選択し、また選択した授業に関する出席率も高いという傾向が見られている。
事前・事後学習に関して、シラバスに記載された指示に従い進めたかどうかに関して、39%の学生が従って進めたと回答した。事前・事後学習に関する学習時間に関しては、2時間以上取り組んでいる学生の割合は13%、1時間から2時間取り組んでいる32%であるという回答を得た。この結果から、学生が事前事後学習に関してシラバスに記載している指示に従っておらず、また、学習時間も少ないという結果である。事前・事後学習は各科目の内容を理解するためには必須であるため、今後はこのシラバスにおける事前・事後学習の指示の明確化と、事前・事後学習への取り組み強化を行っていく必要がある。
各科目への積極性に関して、60%の学生が積極的に取り組んだと回答している。各科目の理解度に関しては、50%の学生が理解できていると回答している。この結果から、積極的に科目に取り組んでいると回答している学生が多くない状況にあり、またそれに比例するように科目を理解できていると感じている学生も半数しかいないという現状が判明した。授業内容を精査し、授業の内容のレベルを落とすことなく、授業内容に対する学生の理解を高めるような内容にしていく必要がある。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

参加人数

①「公開授業」:20人程度
②「ワークショップ」:20人程度

ワークショップでの意見交換内容

今回のワークショップでは、公開授業を行った基礎プログラミング演習2の授業内容に関する振り返りと、学部カリキュラム等の改革に関する意見交換をおこなった。
基礎プログラミング演習2は、コンピュータ理工学部の基盤をなす科目であり、この科目の習得は学生のその後の学習に大きく関係してくる。そのため、少人数教育とグレード制の導入を今学期からおこなった。具体的には、今学期から2クラス制(1クラス:80名)から4クラス制(1クラス:40名)に変更し、担当教員も2名体制から4名体制へと変更した。また、基礎プログラミング演習2を履修するためには基礎プログラミング演習1の単位を習得しなければならないように変更した。少人数化により、履修学生の理解度を教員が把握しやすくなり、フォローアップがしやすくなったという意見がでた。その一方で、学習内容についていけていない学生も見られるとの指摘もえた。今後は、基礎プログラミング演習1の成績との相関などを調査し、ついていけない学生に対する授業補助の方法について改革する必要がある。
また、学部カリキュラム等の改革に関して、講義科目と演習科目の連携に関して意見が出た。科目を習得するためには、講義科目において理論的なことを習得した上で、それを利用して実験するというのが理想的な形である。しかしながら、カリキュラムの構成上で、実験科目を講義科目よりも先に履修するという形になっている科目がある。先に実践を行いそのあと理論的なところを整理するという形でも良い場合もあるが、今後のカリキュラム改革において、効果的な学習を行うためにカリキュラム改革を進めていく必要があるとの意見が出た。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

本学部の授業・カリキュラムの長所は、コンピュータ理工学において基盤となるプログラミング能力を身につけるために、グレード制と少人数制を導入していている点にある。プログラミングは数学と同様に積み上げ型の学問であるため、基本的なことが理解できていないと発展的な内容のプログラミングすることができない。そのため、基礎プログラミング演習1の内容をしっかり理解した上で、基礎プログラミング演習2を履修するというグレード制は、プログラミング能力の習得に有効である。また、プログラミングの習得には、プログラミングを理解している教員やTAに気軽に質問できる環境が必須であり、少人数化により本学部はそれを実現している。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

授業内での理解向上と事前・事後学習に取り組むように学生に促すことである。本学部の学習は積み上げ型であり、それを習得するためには学習時間が必要である。そのための基本としては、講義に出席している学生がその内容を理解できるような講義内容に改良していく必要がある。しかしながら、授業内で学習分野の全てを教えることは難しいため、学生の事前事後の学習時間は必要不可欠である。そのためには、事前事後学習において、具体的にどのようなことに取り組めば良いのかを記載するなど、学生が学習する時間をとるような方策を行う必要がある。またこれに関連してコンピュータ理工学の分野における技術の発展は早いので、授業内で内容を基本的な内容を理解し、自学習において学生が発展的な内容に取り組むようにしていくような方策も必要である。

4. 次年度に向けての取り組み

次年度に向けての取り組みとしては、以下の2点を挙げる。
  1. 数学科目改革
  2. 事前事後学習を促すための取り組み

1の数学科目改革に関しては、コンピュータ理工学における重要で基礎的な学問は、プロログラミングと数学である。特に、近年の機械学習や人口知能分野の発展により、コンピュータ理工学における数学の重要性が一段と増してきている。しかしながら、本学部の学生には数学に対する苦手意識を持つものが多く、コンピュータ理工学を深く理解していくための妨げとなっている。ソフトウェアや人口知能などの分野と数学との密接な関係を学生に説明し、数学とプログラミングの両方の能力を磨いていけるような支援とそのためのカリキュラム改革を進めていく。

2の事前事後学習を促すための取り組みとして、現段階で具体的な方法論は持ち合わせていないがその第一歩として、学部のカリキュラム改革として、講義科目と演習科目との連携や、関連する授業間の連携の強化や進めていく。
また、現在の授業内容を改革することにより授業内での学生の理解を助けるとともに、宿題や関連する情報の提供などにより授業外において学習内容のさらなる理解を行えるようにしていく必要がある。また、授業などで扱っている範囲は、コンピュータ理工学においては基礎的な知識である。コンピュータ理工学の発展は速いため、授業で学習した基礎的な知識をベースとして、自ら新しい学問に挑戦できるように支援するような仕組みを考えていく必要がある。

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