経営学部 卒業生インタビュー
株式会社岡重 代表取締役社長 岡島 重雄さん(1974年卒)

今年で創業162年を迎える京友禅の老舗、株式会社岡重。かつて日本画家の横山大観氏の常宿であったという本社は、京都市役所駅近くの木屋町通沿いにあります。私たちゼミでは、夏休みを利用して、株式会社岡重の四代目社長である岡島重雄さんにお話を伺いました。江戸時代から続く老舗であること、また、京友禅という伝統技法を扱う会社であることから、格式や敷居の高さを感じて、はじめはとても緊張しました。けれども、京都産業大学経営学部の卒業生である岡島さんは、とても親切な方で、なんと、お嬢様も同じく京産大出身であったことから、たいへん気さくにお話ししてくださいました。

インタビュアー

経営学部 涌田ゼミ:野田 寛太さん、森 ななみさん、堀江 諒さん、清水 諒さん、井田 大輝さん、加藤 太一朗さん

左から、清水さん、井田さん、堀江さん、岡島さん(OB)、森さん、野田さん、加藤さん
株式会社岡重 代表取締役社長
岡島 重雄さん(1974年卒)

1.株式会社岡重について

まず初めに、株式会社岡重についてご紹介していただきました。株式会社岡重で扱う友禅とは、筆を使って絹に染色していく技法を言います。岡島さんの曾祖父にあたる岡島卯三郎さんは、幕末のころに外国で化学染料が開発されたことを知り、京友禅の商いをはじめたそうです。その後、明治、大正、昭和と京友禅の技法を研ぎ澄まし、株式会社岡重は発展しました。第二次世界大戦の前後は、着物より食料への需要が多く、大変な苦労があったそうです。
現在は、岡島重雄さんが四代目社長となり、京友禅を使ったバッグを製品化し、OKAJIMAブランドとして、多くの人に親しまれています。また、インドネシアのバティックの技法と京友禅を組み合わせたストールも製品化しています。このように、伝統技法を新しい製品に展開して、現在の株式会社岡重はさらに発展してきました。
インタビュー当日は、写真のように、OKAJIMAブランドのバッグやバティック友禅ストールも見せていただきました。とても美しいものでした。
 

OKAJIMAブランドのバッグ(左)とバティック友禅ストール(右)
バティック友禅ストール

2.大学時代の思い出

大学時代の岡島さんはヨット部で活躍されていたそうです。「のちに、アメリカズカップ(ヨットレースの世界大会)に出場した仲間もいたんですよ。」大学時代、岡島さんは部活にとても熱心に取り組んでいらっしゃったようでした。
「当時は(大学生は)のんびりとしていましたから、部活ばかりしていても、卒業できたんです。」と岡島さんは謙遜されていましたが、
「でも、一番の思い出は、大学2回生の夏休みに、アメリカ大陸を横断する一人旅をしたことです。」と教えてくださいました。
「『若いうちから海外に行け』と(岡島さんの)父が言い、いとこがセントルイスに当時暮らしていたので、アメリカに行こうと思いました。日本にいるうちにアルバイトで旅費を貯めましたが、当時は1ドル=330円の時代でしたので、本当に貧乏旅行となりました。ホットドッグで空腹をしのぎながらの旅でしたね(笑)」
「バスの周遊券は日本で安く買えましたが、バスの停留所も決して今のように治安のよいところではなく、また当時のニューヨークは治安も良くなかったので、怖いと思ったことも何度かありました。ニューヨークのYMCA(ユースホステル)の部屋には鍵が3つもついていましたし(笑)」
そんな苦労の多い海外旅行でしたが、岡島さんは「得るものが何より大きかった」とおっしゃいました。
「やはり(得たものの中で)一番は、海外までの距離を近く感じることができるようになったことです」

3.大学時代の経験を新製品開発に活かす!

通常、京友禅は着物に使われます。しかし、株式会社岡重では、それをバッグに使っています。どんなきっかけがあってバッグを開発したのでしょうか?
「海外までの距離を近く感じることができるようになっていたという学生時代の経験があったので、開発できたのだと思います。そもそも、大学卒業後に数年勤務した東京の商社で、銀座の百貨店の担当になったことがありました。当時、着物は冠婚葬祭用が主流で、京友禅のような“派手もの”(多色で染めたもの)は、ほとんど売れていませんでした。だから、京友禅は、好きな時に好きに着るものとして生き残るしかないのではないかと思ったのです。」
「そこで会社(株式会社岡重)に戻った後に、型染め(版画のように文様のパターンをあらかじめ作って染める)よりも手書きに力を入れるようにしました。さらに、手書きで作った染地をニューヨークに売り込みに行ったんです。・・・しかし、結果はダメでした。かなりたくさんの取引先を回ってみたのですが。その時、たまたま籐のバッグを持っていたのですが、『それだったら取引しても良いよ』と言われる始末でした。自社製品でないものを取引するわけにはいかないですよね(笑)。でも、それで、『バッグだったらいけるかも!』と思ったんです。」
日本の伝統技法である京友禅をニューヨークで売り込んでみようとするチャレンジの仕方に「海外は近い」という感覚が活かされていたのだ、と私たちは気づきました。

4.大学時代の経験をブランド開発に活かす!

京友禅を使った株式会社岡重のバッグは、OKAJIMAブランドとしてニューヨークのマンハッタンでのオープニングパーティーを経て、デビューしたそうです。これも「海外は近い」という感覚が活かされているのではないか、私たちはそう感じました。しかし、ブランドを開発するときには、多くの苦労があったそうです。
「みなさんは(ゼミの主たるテーマである)消費者行動論やマーケティングに関心があるようですから、ブランディングの話をしましょう。OKAJIMAブランドのバッグを開発するときには、いろいろと知らないことがありました。アメリカの広告代理店の担当者にアドバスを受けながらブランディングしたのです。その時に、バッグの中に金属製のタグ(プレート)を作らなければならないことを知りました。そこにあるバッグを開けてみてください。」
私たちは、見せていただいたバッグの中を覗き込みました。確かに、金属製のプレートがつけられていて「OKAJIMA」と刻印されていました。
「そればかりでなく、バッグを収める箱やお客様とやり取りするときに必要となる封筒にもOKAJIMAというブランドロゴをつけなきゃいけないと教えてもらったんです。京友禅の技法を使っていればそれで良いというわけではないんです。伝統技法を既存の市場に売り込んだというよりも、むしろ新しい市場にチャレンジしたという感じでした。」


5.在校生に伝えたいメッセージ

最後に、在校生へのメッセージをお願いしました。
「どんどん世界へ出ていただきたいです。つまり、視野を広く持っていただきたいです!自分のやりたいことが決まっていなくても、新しいことに取り組んでみることが大事だと思います。頑張ってください。」
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