経営学部 卒業生インタビュー
株式会社マックアース代表取締役 一ノ本 達己さん(1990年卒)

インタビューに応じてくださったのは、株式会社マックアースの代表取締役社長である一ノ本達己さん。元々、スキー一家に生まれ、京都産業大学の体育会のスキー部にも所属されていたり、スキーに明け暮れた学生時代を送っていたそうです。27歳でマックアースの社長になり、滋賀県高島市のスキー場を皮切りに経営難のスキー場を立て直し、現在は日本全国30か所以上のスキー場の運営権を持っています。

インタビュアー

経営学部 大室ゼミ:加藤 功志さん、長谷川 右近さん、尾形 早佑莉さん

株式会社マックアース代表取締役
一ノ本 達己さん(1990年卒)

マックアースこれまでの道のり

株式会社マックアースとは?

マックアースは、「リゾート施設の運営」「リゾート運営・再生」「リゾート設計」「旅行事業」を中心に事業活動を行っています。 
各々の事業について、まず第1にリゾート施設の運営は、日本の中山間地域をフィールドに30か所以上のスキー場をはじめ全国に約90の施設を運営しています。第2に、リゾート運営・再生は施設管理やマーケティング等各部門の運営支援や、コスト削減提案など、リゾート再生に関するコンサルティングを行います。第3に、リゾート設計はリフトや人口降雪機などランニングコストの低い最新設備の導入、効果的な人工降雪機の配置やコースの設計等、自然背景に配慮したリゾート施設設計を行います。第4に、旅行事業はスキー場をはじめとするリゾート施設へのパッケージツアーを提供しています。

スキー場をマネジメントするようになったきっかけ

「実は、スキー場のマネジメントに携わるようになったのは2008年からなんです。それまでは、宿を中心に外食事業をしていました。27歳の時、当時1事業所しかなかった旅館「パークホテル白樺館」の増築を計画しました。当時売上3億、借入も3億。さらに7億のファイナンスをしようとしたのですが、親父の許可が下りなかったんです。そこで勝手に親父のハンコを借りてファイナンスを実行したら怒られて、自分が社長になりました。増改築も完成して商いをするとエリアでは1番になって、ある程度のシェアを超えると周りのお客さんを吸ってしまうようになりました。観光産業は地域産業一人勝ちはありえない。これ以上ここで頑張ったらだめだ、よそに出ていかないと、また社員も増えていったので、皆に将来の収入とポストを用意するために商いも大きくしないとなと思って、もう1つの宿の経営をするようになりました。」

宿からスキー場を経営するようになったきっかけ

「閉鎖が発表されたスキー場があってそこが経営しているホテルに近かったんですね。最初は、スキー場が潰れると大変やなって他人事のように思ってたんです。でも、宿を経営していくうちに仲良くなった地域の人から、スキー場が無くなったら困る。お前の会社で買ってやってくれと頼まれて、経営することにしました。」

−なるほど。そこで地域の人から頼られるというのは、一ノ本さんが信頼されているということですね。

「そうなんですかね。今となってはにこやかに迎えてくれるが、最初は完全によそ者扱いでした。マキノの宿だと、学校に向けたカヤックなどの事業を行っていますが、湖の使用許可が出るのに時間がかかりました。漁師さんには、「そんなことをせんでいい、鮎が死んでしまう」と言われました。そんな中、オープンに必要な人手を回覧板で募集したら、近所のおばちゃんが来てくれたんです。そうしたら、たまたま漁師さんの奥さんで、ご主人に話をしてくれて使用許可が出たんです。おかんは強いね。」

−でも、地域によって文化とかカラーは違いますよね。

「そうですね、ややこいところは本当にややこいです。でも、粘り強くいくしかないなと。地域の清掃やお祭りに参加するなど、地道に頑張りました。他にも、スキー場であれば地元の小学生を無料で受け入れるとか。そうすることで、だいぶ柔らかくなりました。それに、他のプラスの効果もあるんです。スキーをしない子たちは地元を出ていくけど、する子たちは大きくなったときにも、地元に戻ってきて、スキーに関わってくれるんです。実はスキー場の従業員の7割がスキー経験者なんですよね。スキーをして大きくなったし、地元に戻って働こうかってなる。結果、持続的な経営を行うことができるんですよね。」

−そうすると、地域の活性化にもかかわってきますよね。

「そうですね。スキー場が地域を支えているところはいっぱいありますね。スキー場自体の商売はそんなに大きくなくても、スキー場があることで、それに関連している業者さんの仕事もできます。そこに人が来るから、ガソリンスタンドも、コンビニも必要になります。百貨店のシャワー効果と一緒ですね。スキー場は地域のシャワー効果です。1番奥に人を呼んで、人をいきわたらせるというね」

観光産業は地域産業。独り勝ちはできない。

「自分の家だけ良いのではなく地域の中にもそういう仕組みをもっていかないと駄目なんです。周りが栄えてくれないと、宿が元気じゃないと、スキー場のお客さんも減っちゃうし、宿がどんどんつぶれると、スキー場に来る人もいなくなるしね。」

とはいうものの、スキー人口自体が減っている状態です。他のスキー場やリゾート施設もどんどん閉鎖されています。そのような逆境にも立ち向かい、業績を伸ばしているプロセスを伺いました。

「商売としては普通のことをしています。スキー場は山奥だし、情報も足らないし、がっつり商売をしている人はいないです。他のスキー場をグループで経営している企業は大きなスキー場を経営しているわけで、再生事業をしているわけではない。お客さんが来るものしかしていない。僕らは彼らが気づかないことをしているんですね。まず第一にすることはマーケットから見たスキー場の役割を1つずつ明確にしていることですかね。」

−それと、やはりさっきから話されている地域としてトータルでものを見ているのも特徴ですかね。

「そうですね。僕らは宿泊施設とかがある中で、スキー場だけが経営が苦しいという所の立て直しをしていますからね。あと、宿泊施設をはじめ集客をする人がたくさんいるという状況はお客様をキープしやすい。例えば、スキー学校とかスノーボードスクールとかが人を集めているとスキー場に人が集まる。他にも周りにある小さいペンションが固定客を持っていて、冬にはこの宿だけで900人来るとか。これらの人は私たちが集客しているのではなく、宿が集客しているんですよ。そういう装置がそれぞれにあると、集客しやすいですよね。宿泊業からスキー場経営まで、全部自分たちでやっていると大変なことも、地域の人と協力してそれぞれの事業を行うことで、地域全体として、集客することができるんです。」

−やはり、事業再生において最も必要なのはコミュニケーションですかね。

「そうですね。その時に、7割同調して、3割は意見を述べるようにしています。そうじゃないとやっていけない。マックアースとしてこういうスキー場にしたいというのは伝えないといけないし、特にマネジメントができていないところの意思決定をしないと。でも、もちろん地域の人の意見も大切。スキー場を経営しつつ、地域の人の意見を尊重しないと駄目だよね。」

これまで多くのスキー場を立て直し、地域に元気を届けてきた一ノ本達己さん。一ノ本さんのスキーへの熱い想いが伝わってきました。私たちは、観光産業を地域全体の産業で見るなど、「トータルでものごとを見ることの大切さ」や、どんな冷たくされた地域でも地道にコツコツ、真正面から向き合っていく、「コミュニケーションの大切さ」を教えていただきました。

そして最後に、学生へのメッセージをいただきました。

学生へのメッセージ:何かのマニアになるべき!

「僕はスキー場のマニアなんですけど、空からスキー場見て、名前のわからないスキー場はないです。全部分かりますし、そのスキー場にどういうリフトが何メートルかっということも全部覚えていますし、標高とかも全部頭に入っています。だから他のスキー場からお話がきても、分析は5分できますよ。そういうマニアックな分野を1つ作っておくと、強いですよね。スキー場の名前全部言えてそれでどうやねんって話なんですけど(笑)でもマニアックだからこそ、そこから広げていけるところもあるんですよ。
まぁ僕ら山奥で生まれ育ったんですけど、もしスキー場がなかったら、残念ながら大学に行かしてもらえるような財力もなかったです。たまたまスキー場があって嫌でやっていたけど、親父が頑張ってくれて、スキー場があったから育てられました。そこに恩返しできなかったらなんのこっちゃわからないと思っていますね。だから1つのことを極めましょう。」

<最後に2つの質問に答えていただきました>

Q1. 私たちは大学で学んだことが使えるのかなと思う時があるのですが、学生がもっと学ぼうと思えるようなメッセージはなにかありますか。

「単位をとるために授業をとっていたらだめですね。何をするにしても勉強することに損はなかったです。そのことが直接いきるかいきないは別として、実際に現場で緊急な状況に追い込まれると、1年かけて勉強してきたことが、3日で身につきますね。けれどもベースがあるのとないのとでは全然違いますし、やっぱり勉強して損はないです。まあ学費を1コマで割ったら3000円くらいするので、授業にはいったほうがいいですよ。結構高いですし、行かないのはもったいないです。自分もだいぶ損しましたよ。」

Q2. あと、これやっとけば良いみたいなのってなにかありますか。

「なるべくインターンシップとかちゃんと行っといたほうがいいですよ。ようこんな就職活動であれやらしてくださいとかこれやりたいですって言って、それしたことないのにわかんのかっていうね(笑)、大丈夫なんかって思ってしまいますもんね。まぁだから積極的にインターンシップはいったほうがいいですよね。
でも最後は自分の人間力とか対応力なのでまぁ本当にクラブでスポーツをやっている人はそうだろうし、自分の限界というのはある程度高いレベルに持っといたほうが乗り越えていけるんだろうなと思います。僕ら週に5時間睡眠を4ヶ月したことがあるし、1日5時間じゃなくて、週に5時間ですからね(笑)飯も1食しか食べないですからね。それを乗り越えられたのは1回生のときにビシビシに追いやられていたので、自分の限界っていうのを何かで乗り越えておかないと、限界の低い人間になってしまうと何やっても辛いと思いますね。       
別になんでもいいですよ。毎晩オールで友だちと遊ぶとかでも良いと思うんですよ(笑)まぁほんとに限界は上げておいたほうがいいですよ。」

このメッセージを聞いて、私は、好きなことでいいからなにか1つのことのマニアになれるようにこれか模索していこうと思いました。また、私は自分の限界を知ることも大事な勉強なのかなと思いました。何日オールできるか機会があればやってみようかなと思いました。また、仕事をするうえで重要なコミュニケーション力をこの大学生活でいろんな方と関わって、つけていきたいと思いました。
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