経営学部 卒業生インタビュー
(株)しもむら 代表取締役 下村 裕司さん(1986年卒)

大正8年3月から続く株式会社しもむらは、8年前に『花そば・料理 ゆう』を創業されました。西二階町商店街にある手打ちそば専門店です。ミシュランガイド2016兵庫のビブグルマンに認定されています。また、兵庫県の厳選ブランド「五つ星ひょうご」にも認定されています。
インタビュー当日私たちは、姫路城と姫路駅の間に位置する、のどかな商店街に高級なたたずまいの『花そば・料理 ゆう』にお邪魔しました。外から店内を覗くと蕎麦打ち部屋が見え、お店で出されている蕎麦は全てこの部屋で打たれたものだそうです。入り口の真上にあるショーウインドウには、播州静々窯二代目当主である佐々木ゼミ第5期生の下村さん手作りの大きな陶芸品が展示されていました。店内はおしゃれで和モダンな内装でした。特に壁に埋め込まれた焼き物が、花が散りばめられているようで綺麗でした。お昼にお蕎麦とだし巻き卵をいただきました。とてもおいしかったです。下村さんが作られた陶器もあり、こだわりがすごく感じられました。

インタビュアー

経営学部 佐々木ゼミ:木下 智貴さん・白井 杏奈さん・竹内 香菜さん・中須 浩誉さん・森本 航平さん

『花そば・料理 ゆう』にて:左から中須 浩誉さん・森本 航平さん・下村 裕司さん・白井 杏奈さん・竹内 香菜さん・木下 智貴さん
(株)しもむら 代表取締役
下村 裕司さん(1986年卒)

学生時代の思い出

学生時代はゼミがとにかく楽しかったそうで、インタビュー時にもゼミの話をされるときにはとても楽しそうに語っておられました。今でもゼミの同級生とは連絡を取る仲だそうで、蕎麦屋の日本酒メニューを同級生の友人をつてに取り寄せて提供されています。好きだった授業は一般教養の美術系の授業で、先生が面白い方だったらしくインタビューのときにも楽しそうに語られていました。
アルバイトも忙しい日々を送っていたそうで、北白川の飲食店で働いておられました。アルバイト先も自由なスタイルで、自分が作った料理がおいしければお店で料理のメニューとして採用されるといったお店で、現在の蕎麦屋を開くきっかけにもなったバイト先だとおっしゃられていました。
サークルはフォークトレインに所属し、ライブ三昧の日常を過ごされていました。人前でライブするのが好きだったらしく、バンド活動は今でも趣味としてライブ会場を借りて週末にプライベートライブをされているそうです。
 

和装から蕎麦への転身

実家が和装屋をしていたために、大学卒業後は大阪で服飾の仕事をされていました。3年ほどして実家に戻り、服飾関係の店舗を4店舗出店されました。しかし、バブルの崩壊に伴い服飾のお店を閉めることになりました。家業の和装屋を続けていましたが、時代が変化するにつれ、普段着や正装が和服から洋服になったために、顧客ニーズにマッチしなくなってきました。その結果、和装屋も閉めることになりました。
そして自らの手で最初から最後までできる仕事がしたかったために、得意であった和食屋(蕎麦)を出すことを決断されました。

こだわりの内装と蕎麦

店内の外観は、入口に下村さんが作られた陶器の作品が飾られ、高級感がある店構えとなっており、そば打ち処も外から見ることができるようになっていました。内装は下村さんの釉薬が壁一面に埋め込まれており、目を惹きつけられるような壁となっていました。照明も少し落ち着くような度合いに調節されていて居心地がよかったです。
席数にもこだわりがあると話しておられて、本来の席数は100人くらいが入れる店の構造となっているのですが、ゆっくりとお客さんに過ごしてもらいたいという下村さんの希望もあり、1階が24席で2階は宴会スペースとなっており、実際に蕎麦を食べさせて頂いた時にも、過ごしやすい落ち着いた印象がありました。
料理は温かいものを温かいうちに提供し、温かいうちに食べてもらうようにしておられます。私たちはお昼に、香りと食感にこだわっておられる下村さんの手打ち蕎麦をいただきました。「てんぷらともりそば」は昆布とかつおにこだわっておられる出汁とお蕎麦ですごく美味しく、てんぷらは熱々でサクサクでした。またてんぷらの穴子は中がふっくらとしていました。また、初めて食べたえのきのてんぷらもサクサクしていてとてもおいしかったです。出汁にこだわった「鴨なんば」は、陶器に入っているので熱が逃げず、最後まで熱々の出汁で食べることができました。蕎麦湯もあっさりとしていてとても飲みやすく、最後まで美味しくいただけました。「だし巻き」もいただきました。モーツァルトの音楽を聞きながら生まれた玉子を使用し、こだわりのだしと合わせておられます。ふっくらとしていて、出汁との組み合わせがとてもよかったです。大根おろしと一緒に食べることでまた一味違って最高でした。
その他、『花そば・料理 ゆう』が店舗を構える商店街の活性化も考えています。以前はこの商店街はハッピーストリートと呼ばれていたそうで、結婚式の準備や住まいの準備など何でもこの商店街で揃うくらいだったと話されていました。この商店街もショッピングセンターなどの進出によって衰退しています。商店街の活性化は落語を武器にされています。集会所に落語家をお呼びして、お年寄りや子供たちなど幅広い層の人たちに興味を持ってもらおうと工夫していると話されていました。下村さんのお店「ゆう」にも落語家の方を招き、食事をしながら落語家の方の話を聞いてもらうという取り組みもされていて、その取り組みも毎回大盛況で皆さん満足して帰られると話されていました。私たちが実際に商店街に行った時にも、落語のポスターが商店街に貼り出されていました。
播州静々窯二代目下村裕司さんの作品

これからの展望

『花そば・料理 ゆう』もミシュラン掲載により人気もでて、今後のさらなる展開も考えているようです。店舗拡大も考えていますが、店舗の改装費などの費用に悩んでおられました。店舗拡大も様々な地域を物色されていて、京都、店舗近くの姫路駅の駅前、それらとは反対の郊外、さらには海外展開まで考えています。実際に今すぐの展開を考えているわけではないけれども、将来的には店舗拡大を視野に入れているようでした。


後輩へのメッセージ

「これイケるんじゃないか」と思うものがあったら迷わず実行することです。下村さんは学生時代を振り返って、多くの後悔があるそうです。レコードレンタル屋さんがこれから伸びるとわかっていたのにそっちに挑戦しなかったことも一つです。そのほかやりたいことがたくさんあったけど躊躇して挑戦しなかったそうです。学生時代は失敗したとしても「あちゃー、やってしまったー」で済むし、何度でもチャレンジすることができます。是非学生時代にいろんな選択肢を試してほしい、たくさんの失敗を経験してほしい、自分の選択肢を狭めないでほしいそうです。
大人がよく言う「後悔しないように」という言葉の解釈の仕方は、「冷静に考えたほうがいいのではないか」という解釈と、「やけどしない時期のうちにいろんなことに挑戦したほうがいい」という解釈があるとすると、下村さんはいろんなことに挑戦してほしいに一票投じたいと話していました。

インタビューを終えて

最初は下村さんがどんな人なのかわからず、少し緊張しながら店に入りました。しかし会って少しお話ししてみると、すごく気さくな方で質問もしやすく話がわかりやすい方でした。話を聞いて特に印象に残ったことは、下村さんが学生時代に後悔したことと学生へのメッセージです。まず、もっと勉強しておけばよかったと言われていたことについては、やっぱりそういうふうに感じるのだなと思いました。
また、勉強以外のこともでも後悔しない大学生活を送っていきたいと思いました。下村さんはレコードレンタル屋が伸びて行くと薄々思っていたのに取り組まなかったことを後悔としてあげられていました。「これいったらイケるんちゃう、っていうことがあれば、学生のときにしたほうがいいよ」「学生時代なら何度だって失敗できる」と言う言葉が、特に印象に残っています。また「今は何をやってしまっても、やってもうたーで済むから、選択肢を狭めずにいろんな選択肢を試してほしい」とおっしゃられていました。これから就活も本格的に始まって行くなかで、このことを頭の片隅にずっと置きながら取り組んでいきたいと思います。
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