経営学部 卒業生インタビュー
(株)コタニ住研代表取締役 小谷 俊仁さん(1991年卒)

インタビューに応じてくださったのは、株式会社コタニ住研の代表取締役社長である小谷 俊仁さんです。小谷さんは、京都産業大学経営学部を卒業した後、長谷工コーポレーションに就職し4年間勤めました。その後、実家で父が経営していたコタニ住研を継ぎました。
学生時代は志学会執行委員会に所属し毎日のように学校へ通いました。先輩のもと上下関係の厳しさも学びました。さらに志学会を通して努力、忍耐、根性という座右の銘を得たそうです。現在は、“子どもたちの未来のために健やかな暮らしを育む「コタニの元気な家」”をコンセプトに、環境や住む人に優しい素材を使った家づくりをしておられます。今回は、小谷さんに学生時代をどのように過ごし、どのような道をたどって現在に至ったかを中心にお話を伺いました。

インタビュアー

経営学部 佐々木ゼミ:竹村 日佳里さん・千葉 友博さん・戸澤 悠利香さん・中村 春今さん・森 健輔さん

コタ二の元気な家の前にて:左から森 健輔さん・竹村 日佳里さん・戸澤 悠利香さん・中村 春今さん・千葉 友博さん・小谷 俊仁さん
(株)コタニ住研 代表取締役
小谷 俊仁さん(1991年卒)

「コタ二の元気な家」への道のり

現在はどのようなお仕事をされていますか。また今までの仕事の中で一番大変だったことは何ですか?

実は10年前まで普通の家を売っていました。普通の家というのは自然素材を使わず、壁にもクロスを張っているような家のことです。しかし、他社と同じでは価格競争になってしまい、お客様から価格交渉をされてしまいます。安価でレベルの低い家を提供して、地元であり本社がある三田市での評判が悪くなるよりは、本当にいいものを提供し、その価値が分かる人たちに買ってもらいたいと思いました。そこで、本当にいい家を作ることにしました。今は、「家族」と「健康」にこだわった住まいをつくっています。
わが社では壁に漆喰を使用しています。漆喰は、湿気を吸ったり吐いたりするため、空気をきれいにする効果があります。さらにわが社独自の特殊な効果によってニオイ・化学物質を吸着・分解することができます。またわが社では杉の木も使用しています。スギは免疫力UPに有効です。使い古した合板の机で三ヵ月間勉強した子どもの免疫力が4%UPだったのに対して、杉の木を使った机で三ヵ月間勉強した子どもは免疫力が37%UPしたという研究データもあります。
人は触れている空気、吸っている空気に影響を受けて生きています。どこの病院に行っても治らなかった症状が、「コタ二の元気な家」に住んで数か月でその症状が改善した例があるほど、わが社で扱っている漆喰と杉の木が強みです。
今から10年前に「コタ二の元気な家」をつくる道のりがスタートしました。「コタ二の元気な家」の体制は2年前に完成したのですが、そこに至るまでの道のりが大変でした。2年前に体制が完成するまでは、普通の家と「コタニの元気な家」の両方をつくっていました。“普通の家は体に良くないと言って「コタニの元気な家」を作っているのに、なぜ他のお客さんには普通の家を作っているのか”というお客様からの疑問がありました。しかしそれは、「コタニの元気な家」がまだ世間に浸透していなかったため、コタニ住研にとっては仕方がないことだったのです。会社を運営していくためには一定程度の売り上げが必要で、「コタニの元気な家」の一本では勝負できなかったからです。普通の家から「コタニの元気な家」への転換期が一番大変でした。
 


学生時代に頑張っていたこと

学生時代に頑張っていたことは何ですか?またそれが社長となった現在活かされていると思うことはありますか?

一つはアルバイトです。大学生の頃は一人暮らしをしていましたが、父親の方針で、学費と下宿代は出すけれど、生活費は自分で稼ぐようにと言われていました。そのため住む部屋が決まってすぐにアルバイトを探し始め、入学式までにアルバイト先は決まっていました。ガソリンスタンドのアルバイトをメインに4年間続けていましたが、単発のアルバイトなども含め、時間が合ったり興味があるものはたくさんやっていました。
もう一つは志学会のクラブ活動です。先輩が怖くて一回生の頃は正直辞めたいと思うこともありました。しかし、辞めると言ったら学校を辞めさせられるんじゃないかと思うほど怖い先輩でした。それで忍耐がついたと思います。その時代は、上の人の言うことは絶対でした。一回生の頃よく教えられたのは、一回生から四回生の存在価値が、順番に「ちり、ごみ、人間、神様」です。それほど上下関係は厳しかったですね。
アルバイトや志学会で経験が、社長となった現在に生かされていると思うことはありますかという質問に答えることができれば模範的だと思うのですが、こういった仕事につながっているという具体的なイメージはありません。しかし今になっても思うのは、大学の四年間は一番なんでも出来る時期だったということです。だからあの時期を無駄に過ごさなくてよかったと思います。もう少しいろいろなことを出来たかな、とも思いますが、自分なりに考えていろいろなことをできたという思いはあります。大学生は高校や社会人とは違って時間の制約は受けませんからね。そのため私が言えることは今ある時間を大事にした方が良いということです。

東北一人旅の経験

小谷さんが学生時代、実際にされた経験について教えてください。

大学三回生の夏休み、10万円を元手に、5万円で東北一周の周遊券を買い、一人で東北を10日間旅しました。その時期の東北は、青森県のねぶた祭りや仙台の七夕祭りなど、各県で祭りがよく行われており、それを制覇しようと考えました。そのとき、ただ祭りを回るのでは面白くないため、当時青函トンネルができて間もない頃だったため、それを通って函館まで行くことも計画に入れていました。
現地でのお金は5万円しかなく、当然宿などは一切とっていないため、毎晩どこかの駅の待合室や階段の下などに泊まっていました。青森でも同じように寒い駅で寝る際ダンボールを被って眠るのですが、その時初めてダンボールはこんなに温かいものかと感じました。仙台の駅で寝ていると、お巡りさんが来て、「こんなところで寝ていると刺されたりして危ないことに巻き込まれかねないよ。」と注意を受けたりもしました。自分と同じように東北一人旅をしている人との出会いもありました。お金も限られているので一日の食事はだいたいおにぎり一つに素うどんのみでした。それでも楽しかったです。電車で一緒になったおばあちゃんと喋りながら行ったりと、いろいろな人とふれあいながらの旅でした。

「コタニの元気な家」に続く夢

今後の夢や目標があれば教えてください。

「コタニの元気な家」を広げていきたいです。そして、以前から思っていることがひとつあるんですが「コタニの元気な家」で使っている木を用いて、仕事として幼稚園や保育所を作りたいです。さらに言えば、幼稚園や保育所を経営できたら嬉しいです。子どもたちにこういう建物で育ってほしいですし、素直に育っていってほしいと思うからです。
私は田舎で育ったので、バス停から家に歩いて帰っているとき、知らないおじさんが「乗っていきなよ」と車で家まで送ってくれることがよくありました。田舎ではごく普通のことです。わたしはそんな平和な時代で育ちました。しかし今は、PTA会長が子どもを殺す時代です。子どもに対して「人を信用してはいけない」というふうに育てなければならない時代になったのかと思うと胸が痛いです。「あいさつをしてはいけない」とか、「知らない人とは話してはいけない」など昔では考えられない暗黙のルールが増えました。愛想のいい子どもほど危ない世界です。そういった時代の流れを「コタニの元気な家」から少しでも変えることができたらいいなと思いますし、小さいころから身体にいい建物で育ってほしいという気持ちから、幼稚園や保育所をコタニの木で作り、将来的には経営したいと考えています。
 


後輩へのメッセージ

人との出会いは大事にしてください。なぜかというと、人の成長は会った人に比例するという話を聞きその通りだと感じました。人に誘われたり、何か会があったりしたら率先して行くべきだと思い、食事会や懇親会に積極的に参加するようにしています。会えば会うほど自分と違う感性を持っている人に出会うチャンスが増えます。自分と違う感性を持っている人はすべて自分の肥やしになります。それが人間を大きくするとわたしは思います。そうすると、様々なことに対応できる器になっていく気がします。また、そのような機会の中で会話をしたり疑問に思ったことに対し質問をしたりすることで、新たな人とのつながりを築くことができます。
世の中には年相応のすごい人はたくさんいます。これから先、みなさんの周りにも同世代で「こいつすごいなぁ」と思う人がたくさん出てくると思います。みなさんにもそのような人になってほしいと思っています。わたし自身もそうなれるように努力しています。そして、縁やチャンスは自分で掴んでください。人との出会いや縁を大切にしてほしいです。先ほども言いましたが、私は誘われ事や頼まれ事は基本的に断りません。どうにか都合をつけて行きますし、なるべく断らないようにしています。そのおかげで繋がった縁や深まった親交もあります。今どきの若者は、上司や先輩に飲みに誘われても断る人が多いです。しかしそれは自らチャンスを逃しているのではないかと思います。「行ってもおもしろくない、楽しくない」というのも自分の捉え方次第のように感じます。視点を変えれば捉え方は変えられるはずです。そうすることで質問も湧いてくるのではないかと思います。質問をしてくれる人には応えたくなるものですし、可愛いなと思うものです。積極的に会や行事に参加したり、縁を大切にしてチャンスを掴もうと努力している人の周りには同じくそういう人が集まってきます。
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