経営学部 卒業生インタビュー
滋賀県 土木交通部 交通戦略課 交通プロジェクト係 恩地 衛さん(1997年卒)

今回私たちは、ゼミの夏合宿を利用して、滋賀県職員の恩地 衛(おんち・まもる)さんにインタビューをすべく滋賀県庁を訪問しました。大学時代に体育会射撃部で主将をしていた恩地さんは、経営学部を卒業後に大和ハウス工業(株)へ就社、コミュニケーションスキルや意思決定過程の重要性を学んだとのこと。そして2003年に滋賀県職員へ転職、住宅課や企画調整課などへ配属され、宅建業の許認可や関西広域連合の設立、観光交流局ではインバウンド(訪日外国人)誘致などの仕事を担当。現在は、交通戦略課副主幹として交通政策を担当し、自転車利用の推進(自転車で琵琶湖を一周する“ビワイチ”の推進や自転車利用の促進など)や鉄道利用促進(SHINOBI-TRAIN運行など草津線の利便性向上、SL北びわこ号活性化など北陸本線の活性化、)に取り組んでいるそうです。そんな恩地さんに、仕事への向き合い方や学生へのメッセージを中心に、お話を伺いました。

インタビュアー

経営学部 宮永ゼミ:青木 千陽さん、上畑 祐人さん、大杉 太朗さん、大福 肇紀さん、金田 唯奈さん、瀬戸 理彩子さん、武田 悦弥さん

 滋賀県 土木交通部 交通戦略課 交通プロジェクト係(兼:商工観光労働部 観光交流局 ビワイチ推進室)
恩地 衛さん(1997年卒)

公務員になるには、どのような勉強をすればいいのでしょうか?

公務員試験の勉強だけでなく、いろんなことに興味を持つことが大切です。私はニュースにはできるだけ触れるようにしています。仕事をしていくうえで、情報は命です。たとえ興味のないニュースであっても、いろんなジャンルの見出しだけは目を通します。
あと、最近の面接においては、人に物事を説明する能力やコミュニケーション能力は重要なチェックポイントになってきているような気がします。その際に大事なのは、相手が求めているものや背景を理解する力です。それを理解することで、こちらが何を伝えればよいのかが見えてきます。作業において機械は優秀ですが、判断するのは人ですから、多様な価値観で人が動く今は、より共通の理解を得て納得してもらい、前へ進める力をつけるのが重要になってきていると思います。
相手の立場や気持ちに寄り添い、解決につなげる能力を、ぜひみなさんには身につけてほしいと思います。

水泳が趣味とのことですが、タイムはどのくらいですか(笑)?

私は現在42歳ですが、なんとか50m自由形で30秒を切ることができています。学生時代には切ることができませんでした。今は学生時代と違い、体力や練習時間に限りがあるわけですが、実は社会人で培った経験を水泳にも生かしているんです。つまり、ただ長い距離をガムシャラに泳ぐのではなく、限られた時間で自分に必要な能力を見つめ直して練習するようにしています。

京都・大阪・奈良などの有力な観光都市に囲まれている中で、滋賀県はどのようなインバウンド誘致戦略をもっているのでしょうか?

私が担当として海外を周り、現地の旅行会社でヒアリングした時に、まず、滋賀県とその宿泊地を知らない旅行会社が多かったので、まずは、滋賀にある宿泊施設をリストアップして多言語化し、それを海外の旅行会社に情報提供しました。折から訪日外国人が増加の一途でしたから、波に乗って、滋賀での外国人宿泊者数は13万人から47万人へと増加しました。
次の戦略としては、京都や大阪に3~4回訪れたことのある外国人観光客は、コアな場所に行きたがる傾向にあるので、そのような層を対象とした発信・誘客に力を入れました。29,800円くらいの観光ツアーだと、どうしても東京→大阪→京都みたいなルートになってしまいますから、それに飽き足らない個人の旅行者層をターゲットにしたわけです。

公務員を辞めたいと思ったことはありますか?

それはありませんが、仕事が大変なのは事実です。民間企業で働いていた頃は、受注を取って、目の前の顧客を満足させることが仕事でした。それに対して行政は、県民や企業のみなさんからいただいた税金を使って仕事をしていますので、それらみなさまが顧客です。そこが一番大変なところで、時には利益が相反することもありますし、すべての事柄、施策に対し、賛否がありますので、施策や事業の意義について常にしっかり説明できるようにしておく必要があります。
その中で、県民の方から評価をいただける仕事ができたと感じた時は嬉しいですね。
「仕事の報酬は仕事である」、これが私が仕事をしているうえで感じていることです。仕事の報酬は、もちろん報酬としてのお給料も頂戴しますが、実はお金だけではないんですよね。
やっていて感じるのは、仕事は、仕事ができる人に回って行くような気がします。新しい仕事に出会う度に勉強し、しっかり自分が動いて、成果や実績につなげる。するとまた、次の新しい仕事を任される(頼まれる)という循環になります。仕事は、成果をつなげていくことで、信頼を戴いていくものだなと感じるんですよね。

滋賀県の中で一番好きな場所はどこですか?

「自分の部屋」、というのは冗談として(笑)、ビワイチの仕事に関わってからは、奥琵琶湖からの景色が大好きになりました。高島市あたりは、大阪から移住して商売している方もいらっしゃって、「ここは西の軽井沢だ」とおっしゃっていました。また、海津大崎の桜並木も好きです。ということで、やっぱり琵琶湖が一番好きなんでしょうね。

自転車の普及促進のために、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

みなさん「自転車」というと、ママチャリとシティサイクルくらいしか思いつかないのではないでしょうか? でもビワイチって、クロスバイクとかロードバイクのような“良い自転車”に乗ると、実はすごく楽に走れるんです。ということは、良い自転車に乗るという習慣が広まれば、少々遠いところでも自転車で行こうという気になる。
こうなれば、4~5キロ圏内であれば、移動手段を車から自転車に変えようとする人が増える可能性が高まります。まずこれが1つのアプローチですね。
それ以外に、レンタサイクルの充実が考えられます。シニアの方は、さすがにクロスバイクやロードバイクに乗るのは難しい方もおられます。そこで代わりに、電動アシスト自転車だとかを各駅に配置するわけです。本当ならば台湾やフランスなどでもあるように、市内各所で乗り捨てができるシステムが望ましいんですが、これは人口がある程度集まっていないと黒字にならないという難点があります。
あとは、自転車だけが走れる専用レーンの整備も課題です。ただこれはお金も時間もかかるなど、一朝一夕にはできません。少しずつでも前に進めることができたら良いなと考えています。
 

「交通戦略課」という課は、市町村にもあるのでしょうか?

滋賀県の『滋賀交通ビジョン』では、人口減少社会を迎えるにあたって、滋賀の目指すべき交通の姿を展望する中で、地域交通の課題が重要な政策の一つとしています。例えば、バスや地域の鉄道をどのように充実させていくかといった問題です。滋賀県では交通がこのような政策的位置づけにあり、結果として交通戦略課という部署がそれを担っています。
一方市町村では、「生活交通課」「土木交通課」「都市計画課の中の交通政策室」「地域振興・交通政策課」など、交通政策を担当する部署はさまざまです。それは、各自治体が将来のビジョンの中で交通をどう位置付けているのか、まちづくりの一環なのか、によって変わるのではないでしょうか。

最後にOBとして、京都産業大学経営学部へメッセージをお願いします。

今改めて思うのは、京都産業大学経営学部を卒業してよかった、ということです。実は学生時代、起業を目指したこともあったのですが(笑)、それは経営学部で学んだことがベースになっていたんです。あと、あの自由な校風がとても好きでした。今後の経営学部についてですが、会社だけではなく、人や空間、社会のマネジメントについても学べる場であってほしいと願っています。
最後に、学生のみなさんにもメッセージを送りたいと思います。会社でも役所でも、組織というところには、例えば今の私にはない、「情報量が多く記憶力や回転がずば抜けている“頭のいい”人」や、「感情を頭で理解できる優秀な人」がたくさんいます。
なかには、「面倒くさい(人間くさい)ことをさける人」であったり、「すぐ結論や結果だけを求める人」も多くいます。
私は組織で仕事をする中で、そうした人達のスキルと、私自身のスキルが相乗効果を発揮するように、力の活かしどころをしっかり見つけて、発揮するのが良いと思います。
ですので、京産大生には京産大生だからこそできる、身に着けたことを活かす場面が多くあると思っています。
社会では人がそれぞれ身につけたものに応じて、役割がありますので、常に自分を分析し、足りないものは勉強して、経験して、補いながら、笑顔で自分を信じて頑張って欲しいです。生きていること、を充分に楽しんでください!
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