経営学部 卒業生インタビュー
株式会社村田製作所Murata Electronics Europe B.V.,Finance & Accounting Manager 辰巳 一樹さん(2006年卒)

企業活動がますますグローバル化していることに伴い、京都産業大学の卒業生の先輩方にも、海外で活躍されている方々は年々増えています。
私たちは、現在、村田製作所オランダ欧州統括拠点にて、ファイナンス&アカウンティングマネージャーとして勤務されている、京都産業経営学部2006年度卒の辰巳一樹さんに、海外勤務とはどのようなものなのかと関心を持ち、6月にご出張で一時帰国されている機会に、ゼミ生3人とゼミの井村先生の4人で訪問して、お話を伺いました。

インタビュアー

経営学部 井村ゼミ:寺岡 尚樹さん、牧 弘晃さん、若松 誠也さん

株式会社村田製作所 Murata Electronics Europe B.V.,Finance & Accounting Manager
辰巳 一樹さん(2006年卒)

【企業紹介】

株式会社村田製作所:携帯電話や自動車、産業機器などに使われているコンデンサや圧電製品などのコンポーネント、モジュールなどの、電子部品の開発、製造ならびに販売を行っており、特に主力商品であるセラミックコンデンサは世界トップのシェアを占めています。また、村田製作所は2015年で92.2%、2016年で93%と非常に高い海外売上比率を占めており、年々上昇傾向にあります。村田制作所のセラミックコンデンサにおけるメインマーケットはスマートフォン市場であり、スマートフォンの世界トップ10メーカーは全て海外企業であるため、村田製作所は多くの海外拠点を持っています。また、日本生命保険相互会社や明治安田生命保険相互会社など国内からの投資だけではなく、JPモルガン・チェースやノルウェー政府年金基金など多くの海外投資家も村田製作所に投資を行っていることから、村田製作所はグローバル企業であり、優良企業として外国人投資家からも注目されていることが伺えます。   
 

    出所:村田製作所の有価証券報告書より作成

【村田製作所の強み:専門分野での技術追求とシェアの拡大と人材育成】

村田製作所の強みの一つとして、「技術力の高さ」があります。村田製作所の主力商品であるセラミックコンデンサとは、電気を蓄えたり放出したりする電子機器には欠かせない部品であり、そのセラミックコンデンサ市場において、村田制作所は世界一を誇っています。近年、「総合」を旗印として掲げた多くの日本の電子機器企業が不採算事業の撤退に追われています。そんな中、村田製作所は創業者である村田昭氏の時代から、競合他社が半導体や完成品に多角化を進める中、セラミック技術を核にした電子部品に経営資源を集中してきました。それにより、村田製作所のセラミック技術は非常に高いものとなっています。そして、その技術力の高さを武器に、セラミックコンデンサを更に拡大するための買収と、その周辺分野の技術を有する会社や事業の買収を行い、世界での活躍を実現させています。
村田製作所の強みは、専門性の高い技術力、積極的なM&A以外にも、大胆な権限委譲を可能にする人材育成があげられます。グローバル化が進み競合他社が多い今日では迅速な意思決定が必要です。村田製作所では30歳代の係長クラスが、CEOのように世界中の顧客と直接交渉し、即断即決で事業を進めていくことを可能とするため、開発や製造現場での活躍ぶりや語学などのコミュニケーション能力を見極めながら、複数の現場を異動させて様々な体験をさせ、意思決定者になるための専門教育を施すなど、「経営陣から権限委譲を受け、 意思決定をする専門の人材」を育成することに力を入れています。
村田製作所の有価証券報告書より

【辰巳さんの大学時代】

辰巳さんの学生時代では、ゼミでのことが一番想い出に残っているそうです。本格的に専門的な勉強がはじまり、課題が多く忙しかったが、下宿しているメンバーの家で集まり、研究内容の勉強をしたことは良い思い出になっているそうです。その他、ゼミで文化祭に出店したことや、ゼミ生での卒業旅行など、大学時代の想い出の多くが、ゼミに関するお話でした。ゼミのメンバーと夜遅くまで遊んだり、一番仲のいいゼミ生と1年間シェアハウスをしていたほど、ゼミ生とは仲が良く、「一生つきあえる友人が出来たし、君たちもそういう関係を築いていってね」、とアドバイスを受けました。
一方で大学の間に、静岡に住む彼女と遠距離恋愛をしていたお話も聞かせていただきました。ご卒業後にご結婚され、現在2人のお子様とオランダ在住だそうです。
就職活動に関しては、メーカーに行きたいと考えていたけれど、業界にはこだわりは無かったそうです。就職活動前に簿記二級も取得し、就職試験の準備も早くからした、と、将来の目標に向かってきちんと準備する事の大切さを教えていただきました。村田製作所を選んだ理由としては、学生にはそこまで認知度のない業界だけれど、グローバルで将来性があると、村田製作所を選んだそうです。
たまたま、同期に大学で同じゼミの方がいらっしゃり、7月からシンガポールに赴任されると伺いました。ゼミの先輩に海外で活躍していらっしゃる方が多いというのは、自分たちにとって身近なロールモデルでもあり、今後私たちが社会で働く際にも、大変心強い点です。

【辰巳さんの現在の仕事】

京都産業大学経営学部を卒業後、村田製作所に入社し、現在オランダにある欧州地域統括会社にて、ファイナンスマネージャーとして活躍されています。辰巳さんの海外での主な仕事内容は、欧州域内におけるファイナンス業務と欧州域内のM&Aサポート、PMIサポートを行っています。「PMI」とは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、Ⅿ&A(企業の合併・買収)成立後の新しい組織体制の下で、よりシナジーを生み出すために、企業の価値観や文化を買収先の企業と融合させることを通じて、企業価値の向上と長期的成長を支えるマネジメントのしくみを構築、推進する仕事です。
経理財務の仕事内容は、主に数字を扱う仕事という印象を持たれがちですが、M&Aを行い一緒に仕事をする海外の方々に対して、村田製作所としての仕組みの説明や働き方や考え方のすり合わせなど、仕事の幅はとても広く、インタビューを行うまでの経理の印象との違いに驚きました。

マネージャーとして、海外の方と仕事を行うにあたり気をつけていることを質問すると、「ヨーロッパの国々は『欧州』としてまとめて考えられがちですが、オランダ、フランス、ドイツなど国によって大きく文化が異なります。こういった人達と一体となって、仕事をすると、多様な考え方や働き方に出会います。例えば、オランダでは“先のこと”より“今”を重視した働き方をします。報連相(報告連絡相談)も少ないですし、会議もあまり多くありません。残業もほとんどありません。これは、その時その時の全力を出すことが考えの根幹にあるからこその働き方だと思いますし、問題や課題に直面した際に全員がまとまって仕事をし、段階ごとに進める日本とは異なった働き方です。また、フランスではトップダウンでの意思決定や働き方の傾向が強く、ドイツは専門性が高く自分の仕事ではない仕事への関与が少ないなど、その国ごとに働き方は違っています。働き方に優劣は無いので、相手の考え方を尊重しながら如何にゴールを目指すかということが大切です。」と教えて頂きました。
私たち日本人が当たり前としてきた働き方や考え方が、他の国ではどのように違うのか、具体的な体験談として聞くのは大変興味深かったです。
「オランダでの仕事メンバーの方々との写真」(真ん中:辰巳さん)
「現在辰巳さんが住んでいるオランダの街並みの写真」
「フランスでの仕事メンバーの方々との写真」(左:辰巳さん)
「フランスでの仕事の際に撮った街並みの風景」

【社会人になって気付くこと、学生へのエール】

辰巳さんは社会人になって十数年経ち、学生のときには見えてこなかったことや、社会人になって気づいたことがたくさんあるとおっしゃっていました。

「社会での仕事は特定の仕事だけを行うわけではなく沢山のビジネススキル(知識)を要求されます。例えば経理だから戦略や法律を知らなくて良い、営業だから経理や人事は知らなくても良いといったことはないと社会に出て感じました。
だからこそ、大学での授業を大切にした方がいいです。大学の授業は専門性が高く、一つの分野を深く学ぶことが出来ます。何か一つでも深い知識があれば、自分の専門外の仕事でも、多くの人と繋がる仕事でも、仕事のどこかで必ず役に立つことがあります。だからこそ、大学で学ぶことを大切にすべきです。」

“大学での授業を大切にした方がいい”という言葉は私たちに対する忠言でもあり、学生へのエールでもあります。私たち学生は、大学生活というより深い知識を学べる期間を大切にし、その機会を積極的に活かしていくべきなのだと実感しました。

【辰巳さんが感じている最近の学生に対する印象】

「最近の学生は優秀であり、アカデミックな知識は持ってるのですが、思っていたことと違うことをやりたくないという傾向を感じます。私は入社時に営業部を希望していましたが、最初に配属された部署は経理・財務部でした。希望していた部署と違っていましたが、実際に業務に就くと、経理は数字を常に扱っているというイメージとは違って、結果に基づき、今後の戦略を考えるようなマネジメントの仕事でした。そのため、学生時代の経営学の勉強が役立つ場面が多く、今では、経理の仕事に就けて良かったと考えていて、楽しさを感じています。大学の視野と社会に出てからの視野は大きく変わります。与えられた仕事には、嫌がらずに、まずチャレンジするのが大事じゃないかなと思います。
あとは最近の学生は上昇志向が少ないように感じます。新しいことにも挑戦したがらないですね。フィリピンやタイ・中国など発展途上にある海外の方は仕事に対するモチベーションや、将来のキャリアアップなど上昇志向がとても高いです。非常に良く勉強しますし、積極的です。一緒に仕事をして危機感を感じましたし、語学はもちろん、大学で学んだ戦略論などを改めて勉強し直しました。」

私たち学生はこれから社会に出て、思い描いていた仕事とは違うことや、やりたいこととは違うことをする機会に出会うことが多くあると思います。そんな時、今の価値観だけで物事を測るのではなく、新たな発見を見つけようという姿勢と、挑戦する姿勢を持って頑張りたいと思います。

【インタビューを終えて】

今回のインタビューは、京都産業大学のゼミの先輩から当時のゼミ活動も含めて様々なお話を聞くことができました。学生のうちに多くのことに挑戦し、いろんなテーマについて学ぶことが社会人になって活きてくるんだなと、辰巳さんの話を聞いて思いました。残りの学生生活をより充実させて、自分の関心に凝り固まらずいろんなことに関心を持って挑戦し続けていきたいと思います。
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