経営学部 卒業生インタビュー
三陽商事株式会社 営業部 課長 金谷 淳平さん(2008年卒)

京都府京都市の新町通りに伝統的な産業である風呂敷・和装小物を取り扱っている老舗、三陽商事株式会社があります。会社に入ると風呂敷をはじめ、多くの和装小物を展示されているのが目に入りました。オーソドックスな無地のものから四季折々の風物詩が表されているもの、「東京今昔物語」というテーマに東京の今と昔の街並みを柄に描いたものなど、多種多様なものをモチーフにされた風呂敷が飾られています。その三陽商事株式会社に勤めておられる京都産業大学の卒業生、金谷淳平さんにお話を伺いました。

インタビュアー

経営学部 吉岡ゼミ:兼田 拓実さん、加藤 健悟さん

(左) 兼田 拓実さん、(右) 加藤 健悟さん
三陽商事株式会社 営業部 課長
金谷 淳平さん(2008年3月卒)

まず初めに、京都産業大学経営学部での思い出について語っていただきました。
金谷さんは高校3年生のとき、商品が作られてからユーザーにどのように届けられるのか、その経営戦略に興味を持ったといいます。数多ある同業他社の商品から、自社製品を選んでもらうためにいかにアピールをしていくか。”1”を”2”にも”3”にも見せる必要があり、その戦略は風呂敷や和装小物の営業をしていくうえでとても大切なものであるとお話をされました。
大学時代はゼミの仲間と関わる時間を大切にされていたそうです。大学の講義でインプットしたことを、ゼミでの合宿や旅行などでアウトプット、実践できる機会を積極的に作っておられました。とはいえ、ゼミの仲間たちも最初からみんなが協力的だったわけではなかったので、固い雰囲気を和ませるためにゼミ長として様々な企画を考えて働きかけをされ、ゼミを牽引されていたそうです。


”恐怖心”と”焦燥感”を持つこと

金谷さんは今、風呂敷や和装小物の営業をされています。新しい顧客を開拓するため、従来の風呂敷の使い方にとらわれない様々な案を作り、幅広い顧客に案を持ち掛けています。
一人一人にあった風呂敷・和装小物を使うスタイルを提案していく営業職ですが、100%自分が提示した案を受け入れて買ってもらえるわけではありません。時には厳しい言葉で突き返されてしまうこともあります。案を練り直してはまたお話を持ち掛ける、を繰り返すことは言わば自分自身との戦いであり、その過酷な環境の中で特に大変だと思うのはどのようなことかを伺いました。
「モチベーションを維持すること」と金谷さんは答えます。
金谷さんは意図的に、常に「恐怖心」と「焦燥感」を持って営業という仕事に向き合うようにしておられるそうです。どれだけ大きな案件をこなしても、いくつもの取引を成立させても、それでも自分よりもはるかに優秀な営業がこの世界にはたくさんいるのではないかという「恐怖心」、そしてそれらを越えて限りなく高いレベルを目指すためにはもっとハイテンポで成長しなければならないという「焦燥感」。これらの一見ネガティブな思考を敢えて抱くことによって、転じて自分の成長意欲と積極的に新たな世界に飛び込んでいくというメンタルに繋がっていると言います。
金谷さんは「”50歳のときにはこんな自分になっていたい!”というような長期的な目標は持っていない」と話されました。長期的な目標から逆算していくのではなく、”5年後はこうありたい”と、5年というスパンで自分の理想像を持ち、そして、5年後に自分の思い描いていた姿になれているか、なれていればまた新たな理想像を描いてそれに向かって走り、なれていなければどこが足りなかったのかを考え、自分を見つめ直す という人生の”5か年計画”のスタイルを貫かれているそうです。

伝統産業を守っていくためにはどのようなことが大切なのですか?

「“伝統を守る”ってなんなんだろう?」金谷さんは私に問いかけました。「僕は”伝統を守る”という言葉は、”職人を守る”、”技術を守る”という言葉に言い換えることができると思うんだよね。一枚の風呂敷でも、”生地”や”染め”、”縫製”など様々な技術が組み合わされて作られているんだ。そのような技術力を継承していくことが大事なんじゃないかな。」
変わらないこと=”伝統”ということではありません。古典的なものにとらわれず、ニーズに合わせて方向性を変えていくことも重要であり、同じ商品でも時代に合わせて表情を変えさせていくことも大切です。従来の風呂敷の用途は「包む」でしたが、現在はそのデザイン性からインテリアとして、ファッションとして使われているとお話をされました。

金谷さんにとって、風呂敷とはなんでしょうか?

この問いを投げかけると、金谷さんは「長嶋監督は、あなたにとって野球とは何かと尋ねられ『野球というスポーツは、人生そのものだ』という名言を残したけどその質問に似ているね」と笑い、少し考えた後このように答えました。「僕にとって風呂敷とは、『職人たちのプライド』だね。彼らの血と汗と涙の結晶、それが風呂敷。僕は彼らを知っているから営業に回ることができるし、自信をもって風呂敷をアピールすることができる。」

在学生へメッセージをお願いします

「様々なことに挑戦して、“今”を一生懸命楽しんでください。将来、必ず自分の力になるから。今仲良くしている友達や周りの人は自分と同じ進路へ進むわけではなく、各々別の道へ飛び立っていくことになる。何か「知りたい」と思うことがあっても、自分が属していない業界の情報を得るのって結構難しいし、その機会もそう多くはない。お互いがお互いの進む道を理解し合って情報交換をしながら助け合っていくことができる仲間を、コネクションを作っておくことが大切だよ。ゼミに入っているのだったら、講義終了後や長期休みを有効に活用してゼミの仲間と関わる機会を積極的に作って、彼らと過ごせる時間を増やしていくことがその第一歩になるんじゃないかな。卒業までの限られた時間の中、出逢うことができた仲間を大切にして大学生活を充実したものにしてほしいです。」
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