経営学部 卒業生インタビュー
株式会社アドウェイズ ベトナム支社長 野間 悠磨さん(2012年卒)

『新興ビジネスへの挑戦』

インタビューの対象となる野間 悠磨さん(以下野間さん)は、2012年 京都産業大学経営学部 卒業の具ゼミナールのOBです。大学を卒業後、株式会社アドウェイズ(以下、アドウェイズ)に入社。東京の本社で3年間勤務後、アドウェイズの中国支社であるアドウェイズ・上海支社へ駐在勤務の募集に立候補し、上海で2年間の駐在勤務を経験、Blue bee boxの開発に携わり、その功績が評価され、本年4月からアドウェイズ・ベトナム支社の社長に就任されました。

アドウェイズは、2006年に東証マザーズ上場のインターネット広告会社で、成果報酬型広告のリーディングカンパニーである。現在アジアを中心に11カ国に展開。デジタルマーケティングに強みがあり、メディアアプリの開発等も行っている。

インタビュアー

経営学部 具ゼミ 3年次:岡本 菜花さん、小林 万純さん、晋 雷さん、茂呂 孝介さん

具 承桓先生の研究室にて。右上が野間さん。中央が岡本 菜花さん、左側が小林 万純さん、中央したが晋 雷さん、その隣が茂呂 孝介さん。
株式会社アドウェイズ ベトナム支社長
野間 悠磨さん(2012年卒)

デジタルマーケティングは電子メディアを通して行うプロモーションを指します。私たちが普段、授業で聞くマーケティングとは市場調査から始め、広告宣伝を通して販売、購入後のサポートまで一貫して行われる市場活動のことですが、デジタルマーケティングはこれらのプロセスを全てインターネットで行います。
デジタルマーケティングの強さは人々の行動をデータとして計測し、マーケティングを行うこと。自社のWebサイトで集客し、購買できる仕組みを作ることでデータを取り上げ、それらを解析する。取り上げたデータを統合的に管理し、人と触れずにマーケティングプロセスを自動化することが可能になります。
実はデジタルマーケティングの始まりは1990年代前半で、携帯電話さえ普及していなかった時代でした。それまで消費者は、新聞や雑誌などの紙面広告や、テレビやラジオなどのCMなどの媒体(4マス)を通じて商品やサービスの情報を得ていました。近年では、スマートフォンの普及により、インターネット広告費は増加傾向にあり、世界の広告市場(2017年)においてインターネット広告費は約22兆円を突破しTV広告を追い越す見通しです。

野間さんの卒業された2012年の世界の媒体別広告費でインターネット広告はテレビに次ぐ2位でした。当時の多くの就職活動生はインターネット広告が、わずか5年でTV広告を追い越すことを予想できなかったでしょう。その中でデジタルマーケティングに強みがあるものの、当時10年目を迎えたところのアドウェイズに入社。前述の通り、成長の見込みはあったがリスクもありました。その決断には野間さんの確固たる哲学、思考がありました。ここからは野間さん個人に迫っていきます。

参考:日経新聞2017年4月6日 広告費、ネットが初の首位 17年世界市場予測 (2017年5月16日確認)


社会人としての“value”を高める

インタビュー中、この言葉を聞いて初めは何を言っているのか正直分かりませんでした。
“value”とは何なのか。Value=価値、つまり社会人としての価値を高める。言葉の意味としてはその通りなのだが、価値を高めるとは何だろうと疑問を持っていました。 しかし、野間さんの体験談を聞き『社会人としての“value”を高める』という言葉の意味が分かりました。

野間さんは、社会人になりベトナム支社の社長になったこれまでも、そしてこれからも自分の価値を高めています。価値を高める=社会で自分と同じ経験や能力を持っている人の分母を減らすこと、と考えています。 新卒で就職し、数年後には海外で駐在経験をし、自ら考えたシステムで結果を出し、その後には管理職に就く。大学卒業からたったの6年で能力を認められ社長に就任できる人が社会人の中に何人いるでしょうか。それに加え、デジタルマーケティングという世界的に急成長している市場で、企業の成長の一端を担っていると言っても過言ではないでしょう。
もともと、野間さんは大企業に就職するつもりはなかったと仰っていました。野間さんの父親は安定していると言われている業界で働いていましたが、リーマンショックや世界の情勢の影響を受けて大企業も確実な安定はないと在学中に感じ、就職活動の際にはベンチャー企業を狙っていました。 「ベンチャー志向」というだけなら簡単ですが、野間さんは、挑戦を続けています。

野間さん曰く、自らの価値を高めるには“挑戦すること”が大切、どれだけ他人が経験できない事を経験するか。海外駐在も日本語以外話せないけど、このチャンスを逃さないためにすぐに飛び込んだそうです。
上記での記述したように、野間さんは2年間の上海駐在勤務を自ら志願し、その中でBlue Bee Box(※1)を開発し、今年からベトナム支社の社長に就任している。
野間さんは今も挑戦し続け、社会人としての価値を高めています。

『社会人としての“value”を高める』
この言葉はこれから社会に出る私たちも大切にしたい哲学なのではないでしょうか。

※1.中国市場初となるDSPトレーディングデスクツール。高度かつ複雑化する広告配信技術の導入をサポートし、効率の良い広告設計から配信、分析までを一貫して行うことが可能。


苦労した『外国人のマネジメント』マネージャーとしてのマインド

2年間の上海駐在を経て、ベトナムアドウェイズの社長になられた野間さん。上海支社での駐在中苦労したことの一つに現地社員の“巻き込み”があった。
そもそも“巻き込み”とはなんなのだろうか。ここでの”巻き込み”とは、『周囲の人々を取り込みながら物事を成し遂げること』を指します。
野間さんは上海駐在中に、東京の本社から予算をもらい事業を行おうとしたが、事業を行うには1人ではできない。つまり、上海に野間さんよりも前から勤務している現地の人の協力が必要不可欠でした。
自分たちに置き換えて想像して欲しい。例えば部活動で、つい最近転校してきた人に
「私は〇〇がしたいから、皆さんも協力して欲しい。」
と、今までやってこなかった練習をしたいと言われたらどうだろうか。すぐに実行したいと思う人は少ないと思います。
提案をした人の人柄や周りからの評価など判断基準は多くあるが、ただ〇〇がしたと言われても、もともと現地で働いている人からしたら受け入れがたいでしょう。仕事の現場だから先ほどの例のような単純ではないが野間さんも同じようなことを経験しました。 上海支社では一部の日本嫌いの人たちにあまり良く思われず、仕事に協力してくれないこともあったそうです。正論を伝えても人は動くことはない、そのような環境で自身の企画に協力してくれない現地社員に野間さんはどのように対応したのだろうか?

《キーマンをつくる》

自分に批判的な人と仕事をする際、野間さんは”キーマンをつくる”ことを意識しています。キーマンとは自分を認めてくれている人で、優秀且つ発言に影響力のある人のこと。このキーマンに発言や指示を委託し、影響力を借りることにより仕事を円滑に進め、自分は完全に裏で指示を出すことに専業する。
側から見れば、野間さんに指示されることはなく、現地の人も信頼している人からの指示だからよそ者からの指示を受けているという違和感はない。つまり、真正面からのコミュニケーションではなく、遠回りのコミュニケーション。 野間さんは、この“巻き込み”の話に付け加えて次のことを仰っていました。

「成し遂げたいこと(目標達成)に、自身の感情は必要ない。」
「嫌われている人をどう巻き込んで、
自分の目標をその人の目標にしていくか模索する。」

この話をして頂いた時、野間さんはマネジメントの経験はないが、自身の経験と持っているマインドはマネージャー(管理職)のマインドを持っているように感じました。このように自身で効率的で柔軟な考えを持つことが海外でも成果を出せる要因の一つであるように思います。


シンプルに一つ一つに意味を持たせる

続いて学生時代の野間さんに話を移すと、学生時代については二つの話をしてくださいました。専門書(ビジネス本)を読むことで身に付いたこと・学生時代の衝撃です。これらの両方が現在の仕事にも結び付けられており、基盤ともなっているそうです。
野間さんは学生時代に専門書を多く読まれていました。では一体、専門書を読むことで野間さんは何を身に付けたのでしょうか。 ‘その時に専門書で学んだ知識が今の働く上で役立っている’。このことは私たちもなんとなくイメージできるのではないでしょうか。しかし、最も大きなメリットと感じられたのは“論理的に物事を説明する力”でした。野間さんはこうおっしゃった。

「学術上の知識はもちろん身に付きました。でも実際にマネジメントする際に学術通りにいくことばかりではない。知識が身に付いたこと以上に論理的に物事を説明する力や、その手法が身に付いたのが大きかった。」

というのも、専門書は一つの理論を紹介するにあたり、その理由や事例というものが絡まり説明されています。 つまり因果関係がはっきりしているのです。この因果関係をはっきりさせる力はわかりやすい説明をする上で必要不可欠であり、小説を読むだけでは養えない専門書独自のものです。 付け加えて就職活動においてもこの力は活かされます。
「面接っていう短時間で語彙の豊富さを見極められない。むしろどれだけ物事を論理的に説明できているかを見るようにしている。」
実際に面接を行う野間さんがおっしゃるので間違いないでしょう。
このように野間さんは専門書を読むことで専門的な知識に加えて就職活動や就職後も必要な論理的に物事を説明する能力を身につけられたのです
野間さんの学生時代の衝撃はトヨタの工場見学であります。 「第一印象というか、見に行った感想は‘でけぇー’くらいでした。」と笑いながら語られ、続けて「でも家に帰ってよくよく考えてみると当たり前だが、あんだけでかいのに一つ一つに意味があって全く無駄がないことに気づいた。これが世界トップクラスの企業かと思った」。野間さんはこれがTPS(Toyota production system)の極論であると考えられた。そして現在、働く上でもシンプルに一つ一つに意味をもたせる。このことを強く意識されています。

ここからは本論とは離れますが、一つの経験を帰宅後に振り返ることの重要性が理解できるでしょう。野間さんの場合、大学学生時代、ゼミ活動の一環として行われたトヨタの工場見学が大きな一つの経験であったといいます。 もし行ってその場で考えるだけなら「デカさ」に驚愕するだけで、TPSの極論を導くことが出来ず、現在の野間さんはなかったかも知れません。家に帰ってじっくり考えることの重要性が顕著に表れたエピソードであると私たちは感じました。


“野間悠磨の哲学と思考”

このように野間さんの現在の成功は自らの哲学、考えを持ち、それらのため努力や勉強を惜しまずに続けてきたことにあります。
私たちは決してベンチャー企業に行った誰もがこのように海外支社で社長になれるとは思いません。若くから出世するには必ず理由があります。
私たちは実際インタビューを通して野間さんの人を惹きつける魅力を感じ取りました。
説明の一つをとっても自分たちにわかりやすい事例を紹介してくださり、『デジタルマーケティング』という当時の私たちにあまりなじみのなかったキーワードの理解へとつながりました。
そして野間さんの人格も表情から感じ取れました。
ビジネスの話をされるときの真剣な表情とは打って変わり、家族のことを語られるときの温かい表情からは野間さんがいかに優しい方であるか、そしてビジネスの場面では優しい心を鬼にしてマネジメントされているか理解できました。 最後に京都産大の生徒に向けて語られた厳しくも優しい言葉を紹介します。
「学歴だけで考えると京都産大は劣るかもしれない。 しかし、その差を埋める何かを考え、努力することがきっといい未来を作り出す」
この言葉は私たちの脳裏に焼き付きました。自ら考え行動してほしい。これこそが野間さんから私たちへのメッセージだったのではないかと思います。


ベトナムでの生活

PAGE TOP