日本経済リレー講義

「経済学への羅針盤として」

 今ほど情報が豊富ではなかった時代、羅針盤を持たずに航海へ出ることほど危険なことはありませんでした。同じように、大学において方向性の見えない授業に出続けることほどツマラナイことはないでしょう。

 「経済学部の授業は抽象的な議論が多くて、現実の経済との関わりがどうなっているのか分かりにくい!」
 学生から良く聞く声です。でも、本当は、それぞれの講義は現実の経済社会の動きと密接な関連を持っているのです。ただし、実際の経済は非常に複雑なので、経済学には多かれ少なかれ、ある程度の抽象化が必要となってくるのです。自分の興味ある問題、勉強したいテーマ、そういったものがはっきりしていない学生は、往々にして抽象的な議論の波に流されてしまいがちです。それはまさに、羅針盤を失ってしまった大海の中の小さな舟のようなものです。
「できれば、そのような学生を1人でも少なくしたい!」
「より多くの学生に、興味を持って経済学の授業に臨んで欲しい!」
こんな教員たちの思いから生まれたのが、この「日本経済リレー講義」です。

 現実経済の様々な問題、そしてそれらが経済学ではどのように扱われているのか。学部の早い段階からこのような点に興味を持ってもらい、上級年次での経済学に取り組めるような、経済学への羅針盤となるような授業を、この講義では目指しています。

 この講義では、1年次生を対象に、経済学部教員がそれぞれの専門分野の立場から「日本経済は今どのような問題をかかえているか」という共通テーマについてリレー式でわかりやすく話をします。講義を通じて、日本経済の現状の理解を深め、現実の経済の動きに興味を持ってもらうとともに、上級年次で受講する経済学の専門科目へのステップとしてもらいたいと思います。

以下の順番で、海外と日本、経済政策の問題から、都市・環境・労働などの個別分野に議論が及び、最後に日本経済全体をまとめるという構成になっており、各教員の専門分野の内容を概観すると同時に、「やさしい日本経済入門」になっています。

講義回 担当者   講義回 担当者  
1
(9/26)
菅原 イントロダクション 9
(11/28)
菅原 地方自治体の財政
2
(10/3)
山田 日本の将来人口と経済 10
(12/5)
田中 人的投資と大学教育
3
(10/10)
大西 経済環境の変化と日本産業 11
(12/12)
並松 食品問題と農業政策
4
(10/17)
井川 日本の国際通商戦略 12
(12/19)
葉原 サブプライム・ギリシア危機と日本経済
5
(10/24)
西村 金融に関する最近の話題について 13
(12/26)
川越 日米貿易問題
6
(10/31)
八塩 日本の国家財政の現状と課題 14
(1/16)
中国の経済成長をどう見るべきか
7
(11/14)
寺井 日本経済と物価 15
(1/23)
菅原 まとめ
8
(11/21)
福井 少子高齢化と社会保障      

講義回 講義内容 (担当者) 内容紹介
第1講 イントロダクション
担当:菅原宏太
ここでは,以降の各講義での内容を大まかに紹介します。併せて,経済学部でどのようなことが学べるのか,特に2年次秋からの専門コース制についても紹介します。
第2講 日本の将来人口と経済
担当:山田 勝裕(マクロ経済学)
現在,日本の総人口は減少し,政府は子ども手当でそれを食い止めようとしているかに見えます。果たして,そんなことで上手く行くのでしょうか?また,そんなことが必要なのでしょうか?この回では,人口学の分析を利用し,50年先の日本の人口ピラミッドをお見せし,日本経済を考えます。
第3講 経済環境の変化と日本産業
担当:大西 辰彦(日本産業論)
中国・アジアの経済発展,円高による為替変動リスク,地球環境問題など日本の産業を取り巻く経済環境は大きく変化しています。そうしたなか,自動車,メカトロニクス,半導体,液晶,新エネルギーなど日本経済を牽引するリーディング産業に焦点を当てつつ,世界市場における日本産業の現状と課題,今後の展望について考えます。
第4講 日本の国際通商戦略
担当:井川一宏(国際経済学)
GATT・WTOの自由化の行き詰まりと複数国間FTAへの日本の出遅れの状況の中で,どのような通商戦略が求められるかを考えます。
第5講 金融に関する最近の話題について
担当:西村 佳子(金融論)
金融に関する報道は日々行われ,問題をじっくり掘り下げることを忘れがちです。この回では,金融システムの維持のために日本銀行が何を行っているのか,敵対的M&Aの実例とステークホルダー間の利害対立,米国のサブプライムローン問題と各国中央銀行の対応など,その時々の話題を取り上げて,金融の観点から平易に解説を行います。
第6講 日本の国家財政の現状と課題
担当:八塩裕之(財政学)
現在,わが国の政府は巨額の財政赤字を抱えています。それを改善する具体的な手段としては歳出カットや消費税増税があげられ,毎日のようにその是非が議論されています。この回では,そうした現状を紹介し,それを通じてわが国財政の今後について検討します。
第7講 日本経済と物価
担当:寺井 晃(マクロ経済学)
物の値段の上がり下がりは,多くの人の関心を集めます。食料品,ガソリン,パソコン関連品...物の値段は身近というだけでなく,「経済の体温計」と言われ,様々な経済指標と深い関連があります。この回では,「物価」の作成方法,「物価」の種類,様々な経済変動との関連について,日本経済を題材にお話ししようと思います。
第8講 少子高齢化と社会保障
担当:福井 唯嗣(社会保障論)
社会保障は,ほとんどの皆さんにとってあまり馴染みのないテーマかもしれません。あるいは,社会保障に多少興味がある人であれば,少子高齢化の時代,たとえば年金なんか負担ばかりで払っても損するだけだ,と思っているかもしれませんね。この回では,皆さんがどう社会保障とつきあっていくかを考えるためのいくつかの視点を提供します。
第9講 地方自治体の財政
担当:菅原 宏太(地方財政論)
夕張市の財政破綻は,今や例外的なことではありません。人々に一番身近な公共部門でもある地方自治体の財政は危機的な状況に陥っています。この回では,地方自治体財政の現状を紹介するとともに,地方分権の意義や現在進められている改革などについて考えていきます。
第10講 人的投資と大学教育
担当:田中 寧(労働経済学)
人的投資とは,将来のことを考えて今の自分に投資することです。この回では,皆さんに直接関係ある大学教育を例に挙げて,この労働経済学のコンセプトを説明します。
第11講 食品問題と農業政策
担当:並松 信久(農業経済学)
ここ数年,食品の安全性に対する関心が高まってきています。しかし,この問題は最近起こったわけではありません。半世紀に渡って日本が抱えてきた根本的な農業問題と関わっているのです。この回では,安全性と農業問題との関連について解説し,安全性は技術や科学の問題だけではなく,経済の問題でもあることを説明していきます。
第12講 サブプライム・ギリシア危機と日本経済
担当:葉原 壽人(国際金融論)
国境を超えて瞬時に動く巨額のグローバル・マネーが,実体経済に大きな影響を及ぼす時代になっています。サブプライム危機やギリシア財政危機が,どのように日本経済に打撃を与えたのかを例に,国際的な金融のメカニズムを説明します。
第13講 日米貿易問題
担当:川越 吉孝(国際経済学)
日本とアメリカの間の貿易に関する諸問題について考えてみましょう。具体的には,近年,関税にかわる手段として増加しているアンチダンピングをメインに説明していきたいと考えています。
第14講 中国の経済成長をどう見るべきか
担当:岑 智偉(中国経済論)
中国は高成長を達成し経済規模を拡大しています。その結果,中国は世界2位の経済大国となりました。中国の経済成長は各国にとって脅威となるのか,チャンスとなるのか。この回ではこれらのことを分かりやすく解説します。
第15講 まとめ
担当:菅原宏太
これまでの日本経済リレー講義のまとめを行い,2年次からの講義履修への橋渡しとなる注意事項を解説します。

履修上の注意

 毎週講義のスピーカーが代わるので、経済学部にどのような教員がいるかを知る意味でも楽しい講義になると思われます。毎週の講師が何にポイントをおいて話そうとしているのか、興味を持って授業を聞くことが重要です。なお、授業内容と目的から、履修登録できるのは経済学部の1年次生のみであることに注意してください。