令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

令和2年度中間報告書(2020年9月報告)において、「1回の授業あたりの準備学習の平均時間数」が1時間半を超える学生数の割合の学部平均値が、前年度(令和元年度)36%に対して今年度春学期は80%超と大幅な増加を示したことを報告した。今年度秋学期の集計結果によれば、この値は46%であった。春学期における大幅増加(36%→80%超)の主要因として、すべての授業科目がオンライン環境下でおこなわれた中にあって学生が課題やレポートなどの授業時間外学習を例年より多く取り組む必要があったことを取り上げた。今秋学期においてこの値が再び前年度のレベル近くに低減(80%超→46%)したのは、春学期中からの学生からの「課題が多すぎる」という声に学部教員が真摯に対応することができたこと、そしてオンライン化授業(一部授業は対面環境での実施にシフトした)への適応が学生と教員の双方にあったことが主要因ではないかと考える。データからは、1回の授業あたりの準備学習が30分未満の学生が1割近くいることもわかる。この学生たちには成績公表後の履修ガイダンス時に何らかの個別指導があって然るべきであり、今後具体的な方策にしたい。ともあれ、学部平均値は3.5ポイント前後(大学全体は3.0ポイント前後)で安定維持されており、すなわち1回の授業あたりの準備学習時間が学部平均で1.5時間以上である点は「概ね従前からの学部目標に到達した状況にある」と総括したい。「学びの面白さ」「スキルアップ、成長」「総合的な満足度」の三項目での実感調査結果からは、いずれにおいても80%超の学生が「強くそう思う」あるいは「そう思う」と回答していることがわかった。この結果は本年度中間報告で総括した春学期の状況を維持継続したものと捉えることができ、本学部の学習成果実感の良い面が安定して可視化されているものとして総括したい。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    30名:オンライン会議ツールを用いた授業運営のためのスキル共有ミーティング(2020年4月23日にzoom会議アプリケーションを用いたオンライン環境のもとで実施した)

(2)ワークショップでの意見交換内容

具体的なオンライン会議ツールの使い勝手について、実演と口頭説明によって共有した。またミーティング内容を全て録画して、参加できなかった教職員が非同期で視聴できるようにするとともに、参加者も繰り返し復習することができるようにした。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

本学部が過去に重点目標としていた「準備学習(事前事後学習)をうながす授業形態の工夫や導入」が持続的な成果を示している。本学部の授業·カリキュラムの長所としては、前述の状況のもとで新たに本年度はじめに組織された学部教員参加型の各種取り組み(令和2年度においては特にオンライン化授業対策など)によって各授業科目で提供すべき専門知だけでなく、その提供・共有方法についての共通理解およびスキルが獲得され、そのことを生かした科目運営が実践されつつある点があげられる。

(2)1と2において確認された改善すべき点

昨年度報告(令和元年度)において、学習成果実感調査結果の春学期と秋学期の比較から、準備学習時間数の減少や広い意味での学習成果実感の低下が見られたこと、そしてその原因の検証と改善方策の検討の必要性について記した。今年度はコロナ対策という全教員・全学生が関わる一大事の中で、授業オンライン化にいろいろな意味・場面で関係者が一体になって取り組み、その結果「学びの面白さ」「スキルアップ、成長」「総合的な満足度」の三項目という三観点で見た「学習成果実感」において上述の通り一定の成果を得ることができた。その一方で従前より課題となっている「学習成果の可視化」特にカリキュラムマネジメントの視点、学部の学位授与方針に照らした検討を伴うものとしての取り組みについてはまだまだ進んでいないのが現状である。令和3年度においてはこの点を改善していきたい。

4. 次年度に向けての取り組み

本学部は開設された2019年度以来、重点テーマを「初年次教育FDと学部カリキュラムマネジメントの実践」として、学士課程4年間の学びの成果あるいはその評価指標の検討、そして具体的な実施計画には学部内(学科内および学科間)科目連携、1年次春学期必修科目フレッシャーズセミナーにおける教員FD、新任教員のニーズに基づく学部FD活動の設計と実行の3項目をあげていた。これらのうち、「学部内(学科内および学科間)科目連携」は次年度にも継承し、引き続き取り組むこととしたい。
学部内における科目連携については、コロナ対策としての授業オンライン化に長時間かつ大きな労力をかける必要が生じたこともあり、若干取り組みが停滞した感がある。令和3年度においては再び、特に生命科学部1〜3年次における講義科目と演習科目との学科内連携(受講生の立場からみた内容充実と科目連動性強化など)および学科間連携(学部教育としての内容充実と運営方法の妥当性確保など)を秋学期前後(9月および2~3月)に当該科目担当教員陣および2学科それぞれのレベルで検証し、同結果の共有を学科主任会議と教授会のレベルで実行していきたい。そして、学習成果実感調査から読み取ることのできるデータ(自由記述も含む)を少なくとも科目連携当事者間で共有した上でのディスカッションや科目運営が可能になるように環境整備に臨みたい。
加えて、令和3年度においては学部の学位授与方針と開講科目(群)の機能的連関をより可視化し(科目ナンバリング、カリキュラムマップに加えての量的検証の対象となりうる、かつストーリー性のある言語化と可視化)、学士課程全体における学習成果の可視化と検証が可能なプラットフォームづくりに着手するとともに、教育デジタルトランスフォーメーションの一環としてさまざまな学習成果データ(科目GPA、ベネッセi-CareerのGPS-Academic、その他)を統合した分析(本学IR推進室との連携)、並びに分析結果(エビデンス)にもとづく修学支援の実行など、学習者中心の学びの最大化・最適化をビジョンに掲げた取り組みを具体化したい。

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