令和5年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「中間報告書」

「学習成果実感調査」についての分析結果

理学部における春学期・学習成果実感調査の実施科目は112科目(対象科目数124科目の90.3%)であった。延履修者数3,688名に対して回答者数は1,810名(回答率49.1%)である。ほとんどの授業が対面形式で行われているため、授業時間を利用した調査協力依頼がされていることもあって、前年度(回答率37.4%)および一昨年度(回答率32.2%)に比べて、回答率は大幅に改善傾向にある。とはいえ、依然として約半数にとどまっており、低い数値であると言わざるを得ない。授業の開始時や終了間際に調査への回答依頼を行うと、遅刻をしてきたり回答せずに教室を出たりする学生もいると思われるので、授業の中頃に調査を実施するなどさらなる工夫改善をお願いしていきたい。
今年度の年間計画では
(ⅰ) 公開授業&ワークショップへの参加者数の向上のための努力
(ⅱ) オンライン授業経験を活かした対面授業のあり方のさらなる工夫改善
(ⅲ) 教学マネジメントに伴うシラバス(到達目標)のあり方の検討
を重要項目として挙げている。(ⅰ)については、公開授業およびワークショップについては今後、秋学期授業時間中に実施予定である。また(ⅲ)については学習成果実感調査とは直接の関係は無いものの、以下の分析において関連項目については言及したい。主に(ⅱ)について検討を行う。5つの全学統一設問について、その結果を分析したい。
設問1は、当該科目を履修した理由を問うている。「学部・学科等のカリキュラム上、履修が必要であった」との回答が圧倒的である。ディプロマ・ポリシーの厳格化にともなって必修科目設定がより厳格化される傾向が強い理学部においては、学生が自由に学びたい学問を選ぶという自由度が極端に少なくなりつつあることをうかがわせる。学生は入学時(学科選択時)に学びの自由度を失っており、大学入学後に学びの興味の深まりに応じて科目を選択するということが難しくなりつつあるのではないかと考える。学科のカリキュラムに選択肢を多くもたせることは学生にとって学びの喜びを深めるに有用と思われるが、そのためには並行して多くの選択科目を開講する必要があり教員負担増となるため、教員にとって多様な業務が増えつつある現在、学科でより多くの科目開講をするという方向性にはなりにくいのが現状であろう。本当に大学にとって何が必要なのか、業務全体の再検討が必要ではないかと考える。
設問2は事前・事後学習の時間を問うているが、30分間未満が約20%であり、この層の学生の平均成績やGPAとの相関を検討する必要がある。単純には事前・事後学習の時間が短い学生の成績が悪いとも予想されるが、そうであれば事前・事後学習をうながす仕組みが必要になる。過度な頻度でのレポート提出も問題あるため、反転学習の技法を含め、今後の検討事項であろう。
設問3、4、5については、ポジティブな回答が70-85%を占めており、理学部における教育が、学生にとって評価されていることをうかがわせる。一方、設問4で、大学で学ぶ意欲が高まったか、設問5で総合的に満足しているか、と問うた結果、ともに約7%が否定的(「そう思わない」、あるいは「全くそう思わない」)である。この層の学生は、当該学科の学びと自信の学びたかった内容にギャップを感じている可能性が高い。そもそも入学時のギャップ解消も課題であるが、入学後に明らかになった「学びたいこと」と実際のカリキュラムのギャップについて、現在の制度では、そのズレを解消しうる選択肢の提供が困難である。転学科などの敷居を下げることや、理学部の中で学科間の移動が容易になるような仕組み(2−3年次での学科選択、など)を、今後さらに検討する必要がある。
以上は全体としての結果であるが、講義科目、実験科目、演習科目の別に見てもおおむね同様な傾向にある。唯一、特別研究(卒業研究)に関しては上述の否定的な回答がほとんどなく、特別研究に関する授業科目を履修できるところまで学びを進められれば、非常に満足度は高い。しかしこの結果は、ギャップを感じている可能性が高い一部の学生(5-10%)は、そもそも特別研究を履修できるところまで学びを進められていない(留年、休学、退学など)のではないかと考えられる。今後、学部収容定員に対する在籍者数の充足率について学外の審査がきびしくなる方向であることから、退学者数を少なくし、より満足のゆく学びを提供するための施策(選択肢の拡充について)の検討が課題であろう。

「学部独自のFD活動」についての成果報告

その他研修会等
  • テーマ:入学前教育プログラム報告会(講師:SATT株式会社 川邉 忍 氏)
  • 概 要:例年実施している本学部の入学前教育プログラムに関して、講演者から結果についての概要と傾向について報告をいただいた。サンプル数が少ないため、各種入試制度による根本的な違いがあるのかどうか明確な答えは出ないが、引き続き注視してゆく必要があると状況の共有ができた。
  • 実施日:6月21日(水)
  • 参加人数:34名(理学部教員32名、理学部事務室職員2名)
  • テーマ:アントレプレナーシップに関する研修会(講師:有限会社パザパコーポレーション代表取締役 河野周啓氏)
  • 概 要:アントレプレナーシップについて、社会を取り巻く状況や本学の学生の様子について、講演者の経験をもとにご紹介いただいた。理学部学生についても、今後、アントレプレナー教育が重要になることを鑑み、社会の状況を共有した。
  • 実施日:9月20日(水)
  • 参加人数:33名(理学部教員31名、理学部事務室職員2名)

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