令和4年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

「年間計画書」には次のとおりと書いた。
(i)公開授業&ワークショップへの参加者数の向上のための努力
(ii)オンライン授業経験後の対面授業のあり方のさらなる工夫改善
(iii)教学マネジメントに伴うシラバス(到達目標)のあり方の検討の開始
このうち、(ii)が学習成果実感調査の内容と重なる部分が多いので、こちらと関連づけて分析を行う。

0)回答率について

今年度は、秋学期での実感調査実施率が改善した。昨年度の実施率は56.85%と低かったが、今年度の実施率は83.0%であった。回答者数は883名で、これは履修者2,974名の29.7%であった。回答率を見る限り依然として低い数値ではあるが、昨年度秋学期の回答者数が477名で、これは履修者2,142名の22.27%であることを考えると、これまで減り続けてきた回答率が上昇に転じたのである。回答の仕方はもちろんオンラインである。基本的に全ての授業が対面授業であるため、授業中に回答するよう教員には依頼したことが功を奏しつつあるとも考えられる。改善の兆しがあるとはいえ、やはり回答率は低く、これは授業に熱心な層が回答している可能性が高いことでもある。そのため、結果データの信憑性に疑問が残るが、年間計画書の(ii)と関連づけられるところについては関連づけつつ、分析を行っていきたい。

1)出席とシラバスの確認について

設問1(授業参加の度合いを問う設問)や設問2-1(受講にあたってのシラバス確認についての設問)での肯定的な回答が高い。12回以上出席したという学生の割合が80%で受講に当たってシラバスを確認したという学生の割合が93%となっている。この傾向は、回答率が低かった昨年も同様に見られる。やはりデータに偏りが存在しており、学生全体の傾向を知るというよりも、授業の参加度が高い層の学生がどのような傾向にあるかを読み取るために用いるのが適切な使用法であると思える。

2)実験科目について(講義科目との対比を含む)

実験科目については、学生から高い評価を得ていることがわかる。93%の学生が12回以上出席している。設問7(学びの面白さを感じたかを尋ねる設問)から設問10(課題の妥当性を問う設問)については100%の学生が「そう思う」までを選んでいる。これは講義科目での相当箇所で「そう思う」までを選んだ結果(70%から80%程度)を大きく引き離している。実験科目に関しては、対面授業から学生は多くを得ていることがうかがえる。年間計画書の(ii)に書かれていることが実現されていると考えて良かろう。

3)演習科目について

友人と相談できること、教員にすぐに聞けることなど、対面授業を肯定する意見が多い。例えば、「授業で出された課題で授業内容を理解できた場面が多く、その課題の発表を先生に見ていただくことで気づいたことがたくさんあったので、それが自分の学びに大きく役立ちました。」という記述がそれに当たる。その一方で、「分からない問題は置いておいて自分が分かる問題から進めるため、演習時間に質問をする学生がほとんどおらずTAが授業の役に立っているとは思わない。」といった記述もあって、学生の学び方を指南する必要がみられるものもあった。また、「授業で習っていないところの演習があったような気がする。」という回答は正直な気持ちであろうが、受身的な印象をうける。未知のことであっても、自分から取り組んでいく姿勢を育てることが必要であろうかと思う。

4)特別研究について:

前回に引き続き「特別研究」を一つのカテゴリーとして調べた。このカテゴリーは他よりも、回答率が高く54.1%であった。結果からは、学生が高い満足度を示していることがうかがえた。45%程度の学生が事前事後学習に平均3時間以上かけているにもかかわらず(設問3)、設問7(学びの面白さを感じたかを尋ねる設問)、設問8(自らの成長を実感したかを尋ねる設問)、設問9(総合的な満足度を問う設問)の肯定的解答がいずれも90〜95%あった。やはり、「自分の研究したい内容を詳しく研究することができた。」という回答にあるように、学生が自ら課題を見出して、探究することが特別研究の醍醐味であって、それを学生も実感していることが明らかになっている。

5)終わりに

冒頭の繰り返しになるが、出席率の高い学生でのデータであるから、学習に課題のある学生の声が拾えていない可能性も捨てきれない。新年度からは形態が変わるが、引き続き学生に声をかけることで、回答率の上昇を目指すとともに、主体的な学びを促して参りたい。

2. 学部独自のFD活動についての報告

(1)公開授業とワークショップ

  1. 公開授業:
    • 科目:代数学・幾何学IB
    • 担当教員:中嶋祐介 助教
    • 実施日時/場所:12月9日金曜日2時限目・T402教室
    • 参加人数:14名
  2. ワークショップ:
    • 参加人数:17名(教員14名、学生3名)
    • ワークショップでの意見交換内容:
      参加学生からは、当該授業に対して、「授業が丁寧でわかりやすい」、「問題の難易度もちょうどいい」といった意見が聞かれた。その反面、パッド利用により提示される画面が少ないため、前の内容を参照しにくいといった問題点も浮き彫りになった。また、参加した本年度採用の教員からは、参加学生に対して授業進行についての質問もあるなど、教員と学生の交流も行われ、教員のFDはもちろんのこと、学生自身にとっても、大学での学びを考える場となった。

(2)その他研修会等

春学期に行ったものについては、すでに中間報告に記載したので、ここは秋学期のものを記す。

  • テーマ:8つの資質・能力について研修(前編)
  • 概要:ヴィデオ研修。学修者本位の教育を行うこと。DPを細かく分割し、学生にもわかりやすいものにする。そうすることで、学習成果の可視化を図る。
  • 実施日:10月19日
  • 参加人数:35名(教育職員33名・事務職員2名)

  • テーマ:8つの資質・能力について研修(後編)
  • 概要:ヴィデオ研修。学修者本位の教育を行うこと。DPを細かく分割し、学生にもわかりやすいものにする。そうすることで、学習成果の可視化を図る。
  • 実施日:11月9日
  • 参加人数:34名(教育職員32名・事務職員2名)

  • テーマ:アカハラについての研修
  • 概要:アカハラが理系に顕著であること。2020年にパワハラ防止法が成立し、事業者の管理義務が問われるようになった。アカハラ防止にはコミュニケーション力が大切であるが、自分のコミュ力を過信しないことが重要。「期待している」などというのはMG。
  • 実施日:12月21日
  • 参加人数:34名(教育職員32名・事務職員2名)

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

受講に際しては苦労が伴っているものの、「特別研究」への満足度が高い。学生間の対話や教員への質問など、対面授業の良さを学生が感じていることが窺える。また、多くの教員が工夫をしていて、学生の学びをサポートしている。そして、学生もそれをわかり好意的に受け止め、支持している。

(2)1と2において確認された改善すべき点

学生が受身的になっていることをうかがわせる記述が散見される点。

4.次年度に向けての取り組み

次年度、教学マネジメントにおけるアセスメントを行う。PDCAの1サイクルが回ることになる。それにあたり、教員間の認識を共有し、学習者本位の教育の実現に向けて取り組む。
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