令和3年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

「年間計画書」には「(1) 公開授業&ワークショップへの参加者数の向上のための方策の検証、(2)オンライン授業経験後の対面授業のあり方の検討」と書いた。このうち、(2)が学習成果実感調査の内容と重なる部分が多いので、こちらと関連づけて分析を行う。

0)回答率について

まずは、秋学期での実感調査実施率と回答率の低さが目立った。実施率は56.85%と低く、回答者数は477名で、これは履修者2142名の22.27%である。本年度春学期は実施率65.93%で回答率が40.56%(回答者数は履修者2937名中946名)であったが、これと比較しても低い値に止まった。ちなみに、昨年の秋学期では実施率75%で回答率が30.30%(回答者数は履修者1551名中470名)、一昨年の秋学期では実施率94.74%で回答率が66.16%(回答者数は履修者1593名中1054名)であった。まさに回答率は単調減少である。回答の仕方はもちろんオンラインである。春学期に回答率が低かったことを受けて、対面授業の時には、授業中に回答するよう教員には依頼しているが、このような事態になった。はっきりとした原因は不明であるが、学生の方にも疲れや面倒臭さが出てきているのかもしれない。回答率が低いので、授業に熱心な層が回答している可能性が高く、データの信憑性に疑問はあるが、年間計画書の(2)と関連づけられるところについては関連づけつつ、分析を行っていきたい。

1)出席とシラバスの確認について

設問1(授業参加の度合いを問う設問)や設問2-1(受講にあたってのシラバス確認についての設問)での肯定的な回答が高い。12回以上出席したという学生や受講に当たってシラバスを確認したという学生の割合が共に90%となっている。この傾向は、回答率が低くなった昨年も同様に見られる。やはりデータに偏りが存在しており、学生全体の傾向を知るというよりも、授業の参加度が高い層の学生がどのような傾向にあるかを読み取るために用いるのが適切な使用法であると思える。

2)実験科目について(講義科目との対比を含む)

新型コロナウィルス感染症の蔓延で難しい状況ではあるが、秋学期も各教員の様々な努力によって実験科目が対面で行われ、学生から高い評価を得ていることがわかる。例えば、設問8(学びの面白さを感じたかを尋ねる設問)も「強くそう思う」が40%で、85%の学生が「そう思う」までを選んでいる。これは講義科目の「強くそう思う」が22%で、76%の学生が「そう思う」までを選んだ結果を大きく引き離している。昨年の秋学期も、実験科目はすでに対面で行われていたが、その時の設問8相当の設問では「強くそう思う」が42%で、84%の学生が「そう思う」までを選んでいた。実験科目については母集団が小さいので、単純に結論づけられはしないが、実験科目に関しては、対面授業から学生は多くを得ていることがうかがえる。そして、出席率80%以上の学生に限れば、全ての学生が実験授業を対面で行うことを望んでいる。このようなことから、実験科目については、オンライン授業経験後も対面で行われるべきであり、その方法は理学部においては確立し、学生からも受け入れられていることがわかる。

3)演習科目について(講義科目への考察も含む)

演習科目を担当している教員にも慣れが出てきているようで、それぞれの教員のやり方に沿った授業に対して学生からは肯定的な記述が見られる。人前で説明する演習スタイルを取っている授業の場合は、対面授業を肯定する意見が多く、自分で問題を解答して提出する演習スタイルの場合は、「教員の解説ビデオ+ムードル利用」のオンライン授業を肯定する意見が多いように思われる。対面授業の良さとして、友人とすぐに話ができる点を挙げている者もいた。また、OneNoteを用いて共同作業的に演習を行っている教員もいて、学生からも一定の評価を得ていた。演習科目が対面授業に戻るなら、学生に人前で話させる経験やディスカッションを取り入れることで学生の満足度が上がるのではないかと思わせる結果である。その際にも、ICTを用いた共同作業を取り入れるといった工夫も有効であろう。こういったことは、講義科目にも当てはまるとも考えられる。

4)特別研究について

今回からは「特別研究」を一つのカテゴリーとして調べた。その結果、学生が高い満足度を示している結果となった。45%程度の学生が事前事後学習に平均3時間以上かけ(設問3)、予備知識が不十分だったと感じる学生が25%程度いた(設問7)。これから判断する限り、特別研究には労力が必要なようである。しかしそれにもかかわらず、設問6(授業の目的の理解を問う設問)、設問8(学びの面白さを感じたかを尋ねる設問)、設問9(自らの成長を実感したかを尋ねる設問)の肯定的解答がいずれも100%近かった。ただ興味深いことに、特別研究に関しては、授業形態については対面希望に限られていなかった。理論系、実験系や学科による違いもあるかもしれないので慎重に考える必要があるが、今後の授業形態についても学生と相談してより良い学びを構築する必要性を示唆していると思える。

5)終わりに

繰り返しになるが、出席率の高い学生でのデータであるから、以上はそれが前提である。令和4年度からの実感調査は学生により答えやすい形になるようである。これを機に回答率のアップに期待したい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業とワークショップ

①公開授業:

  • 科目:物理学演習I
  • 担当教員:岩下靖孝准教授
  • 実施日時/場所:令和3年11月19日 10時45分から T401教室にて
  • 参加人数:8名

②ワークショップ:

  • 実施日時/場所:令和3年11月19日 12時15分から T401教室にて
  • 参加人数:教員6名、学生4名

(2)ワークショップでの意見交換内容

学生からは「課題として、授業や課題での疑問点を書くように求められる。これがとても有効です」や「課題返却時の教員のコメントが役に立っています」と言った意見が出された。参加した教職員からは、授業録画に関する質問や、ベクトル解析の演習での物理との繋げ方の質問があった。また、「わからないところを書きましょう」という課題の出し方を自分も取り入れたいという意見があった。また、スライドやビデオを用いた前回の復習場面などICTの利用にも注目が集まった。

(3)その他研修会等

1.

  • テーマ:発達障害のある学生への修学支援
  • 概要:京都大学大学生支援センターの田村准教授にお越しいただいて、「配慮が必要な学生」への対応に関して講演をお願いし、その後で質疑応答を行なった。障害と一言で言っても、障害者と社会的障壁がある。合理的配慮というのは、社会的障壁への除去のことを指すことを学んだ。高等教育機関としては、結果を保証するのではなく、プロセスを保証すべきだと学んだ。また、ADHDなど、障害を持つ学生の特徴や彼らへの対応も知った。特に我々がよく口にする、「困ったら言いにきてね」と言われても、どのように言いにきたらいいかを教わっていないからハードルが高い、と言った点は目からウロコであった。
  • 実施日:令和3年7月21日
  • 参加人数:30名(うち理学部事務長1名)

2.

  • テーマ:2021年度入学生への入学前教育プログラムの実施報告会
  • 概要:昨年度の入学前教育の成績と記述アンケートの結果から分かったことを、駿台グループ「エスエスティーティー株式会社」所属の川邊忍氏より話を聞いた。英語、数学、物理の3科目について総合的に判断すると、ほぼ横ばいである。新型コロナウイルス感染症拡大の最中であることを考えると、横ばいということはよく頑張っていると受け取って良い。そのほか、附属高出身者が頑張りを見せている。
  • 実施日:令和3年10月20日
  • 参加人数:31名(うち理学部事務長1名)

3.

  • テーマ:カリキュラムマップの策定について1
  • 概要:学部長から、理学部教学マネジメント委員会メンバーを中心とし、理学部のカリキュラムマップの策定を進めており、今回の理学部FD研修会にて、現時点での内容を共有し、広く意見交換を行い、今後のカリキュラムマップの策定を進めていきたい旨、説明があった。学部長の指示により、各学科教務委員から第1回ワークショップを基に各学科で作成した、カリキュラムマップ「DPと資質・能力の関連付け表」「資質・能力の定義」について配付資料を基に説明が行われ、内容の共有及び意見交換が行われた。
  • 実施日:令和3年10月27日
  • 参加人数:27名(うち理学部事務長1名)

4.

  • テーマ:カリキュラムマップの策定について2
  • 概要:学部長から、理学部教学マネジメント委員会メンバーを中心とし、理学部のカリキュラムマップ案を策定したので、今回の理学部FD研修会で、内容共有及び意見交換を行いたい旨、説明された。学部長の指示により、各学科教務委員からカリキュラムマップ「DPと資質・能力の関連付け表」「資質・能力の定義」について配付資料を基に説明が行われ、意見交換が行われた。学部長から、今回のカリキュラムマップ案を、主管部署である教育支援研究開発センターに提出することが報告された。
  • 実施日:令和3年12月15日
  • 参加人数:29名(うち理学部事務長1名)

5.

  • テーマ:ハラスメント研修
  • 概要:理学部の人権研修会として行われた研修。FDとも関係する内容であるので、ここに書いておく。叱責のつもりでも、「出来ていないのは君だけですよ」などと言うのは良くない。オンライン授業の際には、そこにいることを確認する意味で、「画面をオフにしたら欠席ですよ」と言ってしまいそうだが、このような説明に恐怖を感じる学生もいる。こちらから学生に期待を伝えているつもりでも、過度な期待になっていてプレッシャーを感じている場合もある。教員としては悪意もない言葉であっても、注意すべき点があることを確認できた研修であった。
  • 実施日:令和3年12月15日
  • 参加人数:28名

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

受講に際しては苦労が伴っているものの、「特別研究」への満足度が高い。
オンライン、対面にかかわらず、多くの教員が工夫をしていて、学生の学びをサポートしている。また、学生もそれをわかり好意的に受け止め、支持している。

(2)1と2において確認された改善すべき点

「この授業ならオンラインでいいと思った」という記述も散見される点。

4.次年度に向けての取り組み

公開授業&ワークショップを今年度はオンラインを併用して行ったが、参加者が少なかった。しかし、オンライン参加の教員も存在したので、来年度も引き続きこの方法を用いたい。
オンライン授業の長所・短所に学生も教員も気づいている。対面で授業を行う以上、オンラインではできないことを授業にとり入れていく必要があるし、その逆も然りである。引き続き、授業形態についての議論を重ねたい。
今後、実態調査がカリキュラムマップや、アセスメントポリシーと結びつくにあたり、到達目標や評価の方法の検討が必要であろう。
PAGE TOP