留学体験記が届きました
(徳村 拓也さん ハイデルベルク大学)

私は2017年10月から2018年8月までドイツのハイデルベルク大学に認定留学していました。ハイデルベルク大学はドイツで最も長い歴史を持つ名門大学です。ここで学びたいと思う学生は非常に多く、ドイツ国内だけではなく、世界中から学生が集まります。そのため、ハイデルベルクは学生町としてだけではなく、国際色豊かな町としても有名です。僕はそんなハイデルベルクという町でドイツの大学に入学したいと思う学生たちが集まる大学付属の語学学校に留学しました。
ドイツでの生活は想像以上に大変でした。本来なら住む場所を確保してからドイツへ渡航するのですが、私の場合は寮が確保できずに住居が決まらないままドイツへ渡航しました。最初の1週間はそのせいでホテルで生活しながら住居を探しました。幸運にも1週間ほどで見つかり、なんとか学校が始まる前に生活環境を整えることができました。その後、ドイツ語のクラスを決める大事なテストを迎えたのですが、いままで受けたことのない形式に困惑し、大した手応えもなく終えてしまいました。これで半年間またA2を受ける事になるのかと落胆していたのですが、意外にも結果はB1。まわりの結果もあまり良くなかったらしく、偶然にもレベルの高いクラスに入る事になりました。ですが、先ほど述べたように、まわりも良くなかったので、本来ならC1のレベルにも入れるような学生が沢山いる奇妙なB1のクラスになりました。クラスメイトは国際色豊かで中国、韓国、タイ、イラン、ブルガリア、ジョージア、コロンビア、シリア、アフガニスタンなど様々な国と地域から来ていました。そのうちの何人かは、学期後に行われるドイツ語の試験に合格し、大学で勉強し始めている人もいました。そんなクラスに入り、客観的に見ても私のドイツ語のレベルは最も低く、今まで大学で何を勉強していたのだろうと思いました。明らかに彼らの方がドイツ語の語彙があって、話せて、聞くことができていました。そんな劣等感の中、始めはほとんど理解できずにいました。そんな不完全燃焼の午前中でしたが、午後はまた違いました。私は午前中にしか授業がなく、午後は自由でした。そこで私がしていたのはタンデムでした。タンデムとは、私のようにドイツ語を学びたい外国人と外国語を学びたいドイツ人がお互いの言語を教え合うシステムのことです。ハイデルベルク大学には日本語学科があり、パートナーを探すのは比較的簡単でした。そうして知り合ったドイツ人たちと多い時には1日4時間も話していました。パートナーもドイツ語しか話せない学生からすでに留学しており日本語が話せる学生もいました。基本的にはドイツ語で話し、ディスカッションや日本語の説明などをしていました。そうして毎日のようにドイツ語に触れていくうちに、どんどんドイツ語が聞け、理解できるようになり、それと同時に話すこともできるようになっていきました。

そうして周りとのレベルの差も埋めていけた中で、私は自分が周りよりも出来ると自信を持てるものを見つけることができました。それは文法です。大学で基礎的な文法をすべて一度学んでいたことが功を奏し、大体の文法がどのように機能するかが理解でき、B1ではそれの応用や少し発展させたものが多く、困ることはありませんでした。それはドイツ語が好きになるきっかけであり、最も興味が湧きドイツでさらに勉強したいと思わせるものになりました。
次の学期にはさらにレベルの高いB2のクラスに入りました。そこでもドイツ語への興味が薄れることはなく、勉学に励みました。このクラスで行ったプレゼンでは日本語とドイツ語を文法的に分析し、どのような言語かということを発表しました。先生からも評価が高く、クラスメイトにも日本語に興味を持ってもらえました。それほどドイツ語に魅せられ、もっと勉強したいと思うようになり、卒業後は修士課程に進む予定です。

ここまでは勉強のことについてでしたが、ここからプライベートについて書いていきます。 上記に書いた通り、ハイデルベルク大学には日本語学科があります。そこで私はたくさんの個性豊かな友人たちに出会いました。彼らとは毎週のように週末にパーティーをし、お酒を飲んだり、ゲームしたり、世間話をしたりなど交流を深めていました。特に仲の良かった友人たちとは休みの日にアウトレットへ行ったり、町の郊外にある施設でトランポリンなどをしたりして楽しみました。彼らとはたった1年でしたが本当に仲が良くなり、今では家族とも呼べるような大切な友人たちになりました。それ以外にも、日本語学科の人たちが交流の場をたくさん作ってくれて、例えば映画の鑑賞会や、ゲーム大会などを企画していて、現地の学生と交流できる場は非常に多かったです。今でも連絡を取り合う友人もいますし、日本に現在留学している人もいます。
彼らはとても個性豊かでした。日本では見たことが無いようなキャラクターを持ち、本当に興味深かったです。彼らからは非常に多くの人間的な部分を学びました。特に個性の尊重です。日本で私は海外で会う日本人は個性があるとよく耳にします。私もそのうちの一人でしょう。よく個性が強いと言われます。しかし、ドイツでは全く言われたことがありません。これはあくまで私の推測ですが、ドイツでは個性があって当然であり、それは尊重されなければならないと、社会的に理解されているのです。そのため、個性の表現に抵抗はなく、オープンでいられるのです。これが私には驚きでした。個性が強いために日本ではよく周りに必要以上に気を使い、自ら生きにくくしていたのかとはっきり気付きました。それに対し彼らといるときは常に自然でいられ、非常に楽でした。そうしたこともあり、彼らに対しオープンでいることができ、彼らも私に対しオープンになり、それが積み重なって良い関係を築くことができたと思います。 まわりの日本人たちを見ても、私ほどドイツ人の友人に恵まれた人はいないと思います。それほど彼らには感謝していますし、彼らと出会い仲良くなれたことは今回の留学で得たうちの一つだと思います。
最後に、もし今留学するか迷っているのなら、私はいくべきだと思います。理由として、私が留学で非常に良い経験をしたからなのですが、正直に言うと留学が成功するかどうかは自分次第です。何をもって成功とするかにもよりますが、結局は自分次第です。勉強するのも、旅行するのも、私のように友人と過ごすのも全て自分次第だと思います。留学は自分を鑑みるいい機会だと思います。思いがけないことや、想像通りいかないこともたくさんあります。しかし、そのような時にどう対処するか、どう行動するかで自分自身がよくわかると思います。言語以外の部分の方が得られるものが多いです。自分自身をより理解し、可能性を広げて行ってください。
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