ヒューマン・マシン・データ共生科学研究センターについて

近年の情報機器の目覚ましい発展により、どのような場所、状況であっても瞬時に膨大な量の情報にアクセスすることが可能となりました。この情報環境により、我々は判断・行動のための適切な情報を得ることが出来るメリットの一方、常に膨大な量の情報の処理に追われ、より有用な情報を検索する作業の継続のために大きなストレスを受けています。急速な情報化社会の発展は、我々の生活様式の適応的変化の速度をはるかに上回っているため、特に社会的に未成熟な若年層にとっては自己と情報環境との適切な関係・距離を築くことが出来ず、ネット依存症などの社会問題に発展しています。一方、深層学習の成功によりその発展が社会的に注目されている人工知能(AI)は、労働環境を始めとする社会環境を大きく変革する可能性があり、インターネットの出現以上に我々の生活様式に影響をもたらすと考えられています。内閣府の科学技術政策では、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会として、IoT(Internet of Things)、AI、データサイエンス、クラウドサービスなどを基盤としたSociety 5.0を我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱しています。

このような変革期においては、人間(ヒューマン)、情報機器(マシン)とデータとの調和的な共生環境のデザインの検討が求められていると考えます。従来の製品開発においては効率性および実装上・商業上のメーカー側の事情を優先して情報機器の変更が行われており、その変化にユーザが適応することが求められてきました(例えば新しいWindows OSへの適応など)。近年は、ユーザである人間(個人)の特性を配慮した「ヒトに優しい」情報機器の開発に関心が向けられています。人間とより良く共生する情報環境のデザインのためには、第一に人間の行動および知的活動に関する科学的分析が必要であり、それは知的活動を担う脳活動を始めとする多様な生体信号の計測を通じて、ユーザが現在置かれている環境、体調や感情などの文脈性の抽出が前提となります。本研究センターでは、神経科学、データサイエンス、スポーツ生理学をそれぞれ専門分野として研究を行っている研究者の連携により、多様な研究対象において生体信号データの計測および解析を行い、人間と情報環境との調和的な共生の実現に向けた多角的な基盤研究を実施します。

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