【法学部】ゲストスピーカー講義「元ワル社長 魂のこもった授業を届ける」

2024.04.11

中溝観光開発社長 中溝 茂寿氏

11月17日の1、2限目の法学部「矯正社会学Ⅱ」授業と、3限目の服部ゼミにおいて、有限会社 中溝観光開発の社長である中溝 茂寿さんをゲストスピーカーにお招きし、講義をしていただきました。当日はとても寒い日でしたが、寒さを吹き飛ばすぐらいの熱い講義でした。

(学生ライター 法学部 3年次 大吉 舞)

1限目

中溝社長は、福岡県中州にある(有)中溝観光開発で協力雇用主として出所者を雇用し、出所者の社会復帰支援の手助けをされています。

1限目の講義では、主に社会復帰支援の在り方や、社長が行っている支援について紹介していただきました。受刑者が出所して社会復帰をしていくためには、まず「就労支援」が必要である、とお話しされました。
「矯正社会学Ⅱ」講義の様子
その後で社長から、御自身で創刊された『REBORN』という社会復帰応援求人誌を受講者全員に配布されました。その場にいたほとんど全員が、今まで目にしたことがないだろうこの求人誌を興味津々に見ていたのが、筆者は印象的でした。出所した人向けのこの求人誌は、出所後の働き先を紹介しており、全国の刑務所で配布されています。
また「なぜ社会が出所者を受け入れないか」ということを議題に挙げられ、これについて社長は「仕事が続かず逃げてしまう人がいる、ということが原因だ」とおっしゃっていました。「しかしだからといって誰も出所者を受け入れなければ、彼らが社会に戻った時に住居も仕事もなく、路頭に迷い再犯をしてしまう可能性がある。そこから彼らを救うためにこの求人誌を作った」と創刊の経緯を教えてくださいました。

次に、社長は罪を犯した人を更生させるにあたって、「彼らとの向き合い方」についてお話しされました。罪を犯したからといって偏見の目で見るのではなく、彼ら一人一人の目線に合わせて接すること、そして信頼関係を築いていくことが、更生させる側の役目だとおっしゃっていました。
社会復帰応援求人誌『REBORN』

2限目

2限目は、主に受講者からの質問に社長が答えてくださいました。良い質問が多く出ましたので、一部を紹介します。

Q.従業員が再犯の誘惑に乗ってしまわないために、どのようなことをしているのか。
A.会社に入社した時に、過去に付き合っていた人たちと半年から1年間は連絡をとらないように、とお願いをしている。自分の生活の基盤を先に作るように言っている。生活基盤ができたら過去の生活には戻ることはない。

Q.従業員に労働の大切さをどのように教えているのか。
A.従業員1人1人に給料明細と共に、その人に合わせた形で、手書きで1カ月の働きぶりを書いて渡している。

講義の最後に社長は、再犯しないための心持ちや、従業員の方に対する思いをお話しされました。

まず再犯しないようにするには、

  1. 失いたくないもの(家族や友人等)があるかどうかを考える
  2. 犯罪をしても何も得るものがない、ということに気付くこと

この2つを考えられるようになることが大切だ、とおっしゃいました。
そして従業員の方に対しては、「会社が素の自分が出せる居場所となるように、相手を無条件で支援する。そして失敗した人には手を差し伸べる、頑張っている人は見守る」とお話しされ、2時間の講義が締めくくられました。

3限目

服部ゼミでの講義の様子

3限目は服部ゼミでの講義で、主にゼミ生からの質問に答えていただきました。

協力雇用主になると決めた時の周りの反応や、実名報道についての話題などさまざまな質問が出てきて、とても有意義な時間となりました。
ゼミ生が協力雇用主としての将来像を尋ねたところ、社長は「民間の刑務所を作りたい」とおっしゃいました。「ワンルームマンションを買い取り、しっかりと仕事をするということを条件に就労してもらい、ずっと生活できるような環境を作りたい」と語られ、社長の今とこれからの想いを知ることができ良い時間となりました。

最後に

私たちは一度罪を犯した人に対して、批判的な目で見ることが多いと思います。そのような目で見ることは、むしろ普通のことかもしれません。しかし頑張って立ち直り、社会復帰しようとしている人も多くいます。
更生することは、私たちが思っている以上に難しいことだと思います。更生は一人ではできません。誰かの助けが必要です。直接手を差し伸べることは難しいかもしれませんが、社会復帰について少しでも知ることで、更生しようとしている人たちを支えることができるのではないか、と考えます。
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