ふたご座流星群の母天体・小惑星フェートンの素顔に迫る!

2018.09.03

京都産業大学・神山天文台の新中 善晴 研究員をはじめとする国際研究グループは、毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の母天体とされる小惑星フェートンの偏光観測を行い、その表面の様子が通常の小惑星と大きく異なることを明らかにしました。

小惑星フェートンは、太陽に接近する軌道を巡っている小惑星の一つで、毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の原因となる流星体(ダスト)の放出源と考えられています。しかし、どのようにして小惑星フェートンから流星体が放出されたのか?など謎も多く、宇宙航空研究機構(JAXA)等が進めている将来の宇宙機探査計画で「デスティニー・プラス(DESTINY+、2022年打ち上げ予定)」の探査候補天体にもなっています。この小惑星は地上の望遠鏡から観測しようとしても、なかなか観測条件が良くなる事は無く(小惑星が太陽に近づいて明るく観測できるタイミングで、太陽に近い方向に見えており、夜間の観測が十分に出来ないため)、これまであまり研究が進んでいませんでした。しかし、2017年12月には小惑星フェートンが地球に接近し、明るく観測できる貴重な観測機会がありました(次は2093年まで、同様な観測の好機がありません)。
京都産業大学・神山天文台の新中 善晴 研究員をはじめとする国際研究グループは、国立天文台・三鷹キャンパスの50cm公開望遠鏡で、小惑星フェートンの偏光撮像観測を集中的に実施しました。偏光というのは、波である光の振動方向の偏りを意味しており、太陽の光を小惑星フェートンが反射する際に、この光の偏りが生じます(図1)。その偏光の程度(偏光度)を調べることで、小惑星フェートンの表面がどのような状態なのか(細かい砂に覆われているのか?もっと粒の大きな小石のようなものに覆われているのか?など)を明らかにする手がかりが得られます。太陽・小惑星フェートン・地球が成す角(位相角)の広い範囲にわたって観測することが、その表面の様子を知るためには重要なため、新中 研究員らは2017年の観測機会を最大限に活かし、これまでになく広い位相角範囲での観測を実現しました。
図1:小惑星における偏光。正確には直線偏光といい、太陽からの光(無偏光)を小惑星が反射する際に直線偏光が生じます。「偏光度が100%」とは、特定の向きの振動をする光しか含まれていない状態を意味しています。偏光度は、小惑星表面の様子(表面を覆う粒のサイズや成分)、位相角などによって変化します。
新中 研究員らは、2017年に実施した観測の結果から、小惑星フェートンの表面は、他の普通の小惑星とは大きく異なっており、非常に高い偏光度を示すことを明らかにしました。このことにより、小惑星フェートンの表面は、比較的大きなダスト粒子で覆われている、あるいは他の小惑星に比べて特異な反射特性を持つ可能性があります。先行研究でも限られたデータながら2016年にこうした高い偏光度が報告されていますが、今回の緻密な観測によって、その結果をはっきりと確認することが出来ました。また、これまでに観測されていない小さい位相角での偏光度も得られており(図2)、他の研究グループによって観測された結果と合わせて、小惑星フェートンの表面に反射特性のムラがある様子を示しました。2017年12月はフェートンの観測好機だったことから、世界中で多くの観測が行われており、今後報告される結果と合わせて、更に詳細な研究が可能になると期待されています。また、こうした結果は、現在計画中の深宇宙探査技術実証機「デスティニー・プラス (DESTINY+)」を立案する上で非常に重要な基礎資料となります。デスティニー・プラスでは、小惑星フェートンのフライバイ探査が計画されており、小惑星近傍からの精密な観測によって地上観測で推定された自転軸方向や表面のアルベドの非一様性などの検証が行われると期待されます。
図2:今回の観測結果。非常に広い範囲の位相角において偏光度を精度良く測定できたことが、これまでの研究のなかで最も重要な点です。特に偏光度がほぼ0になる位相角(表面の状態を明らかにする上で重要な手がかりになると予想されている)を決定できた点が特筆されます。また、2016年と2017年の観測結果の違いから、小惑星フェートンの極方向に偏光度が低い領域が存在する可能性が示唆されます。
図3:今回の観測に用いられた偏光撮像装置PICO(水色の丸の中)と国立天文台・三鷹
キャンパスの50cm公開望遠鏡。PICOは、神山天文台の池田 客員研究員、河北 天文台
長らが、2004年に開発したもの (写真提供:PICO研究責任者・古荘 玲子 (国立天文台
特別共同利用研究員))。
この研究成果は、Shinnaka et al. “Inversion angle of phase-polarization curve of near-Earth asteroid (3200) Phaethon” として2018年9月10日 (世界時)の米国の学術専門雑誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ (The Astrophysical Journal Letters)』のオンライン版に掲載されました。
タイトル “Inversion angle of phase-polarization curve of near-Earth asteroid (3200) Phaethon”
(近地球小惑星フェートンの偏光度曲線の反転角)
著者 Yoshiharu Shinnaka, Toshihiro Kasuga, Reiko Furusho, Daniel C. Boice, Tsuyoshi Terai, Hirotomo Noda,  Noriyuki Namiki, Jun-ichi Watanabe 
雑誌 The Astrophysical Journal Letters, 864, L33(8pp)
発行年月 2018年9月
この研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 (課題番号: 15J10864、17H06459)、およびNational Science Foundation Planetary Astronomy Program (NSF, USA, Grant No. 0908529)の補助を受けて行われました。
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