令和3年度 秋学期 公開授業&ワークショップ 実施報告

1. 法政策基礎リサーチ

1. 実施日時

  1. 公開授業:令和4年1月26日(水)13:00~16:30 5クラス合同
  2. ワークショップ:令和4年 1月 26日(水)以後
    メールや科目担当者打合せ等で意見交換を実施

2. 実施場所

天地館2階・4階の教室(T205、T401、T402の3教室にて分散開催)

3. 科目名

法政策基礎リサーチ(担当教員:久保、芝田、焦、中井、朴)

4. 参加者数

  1. 公開授業:
    学生数 法政策基礎リサーチ受講1回生約130名
    SA約30名が参加
    教員 9名、職員 1名
  2. ワークショップ:メール等

5. 内容

(1)公開授業について[授業の概要]

  • 「法政策基礎リサーチ」は、2015年度に開講された科目で、法政策学科における初年次教 育であり、2018年度からは法政策学科の初年次導入科目として選択必修に位置づけを変 更されている。2回生科目の「フィールドリサーチ」に向けての準備的側面を持つ。法政策学科の初年次導入科目としての重要性から、その検証および今後の方向性を検討することも兼ねて今年度も実施することとした。
  • この授業は同一シラバスで5クラス開講がなされている。
  • 半年間のトレーニング(「アクションリサーチI」久保担当)を積んだSAがチーム(5〜9人)となって、各クラスに入っていることが大きな特徴である。
  • 授業内容については担当教員間ですりあわせをしているほか(但し、個別の内容やグループワークの形態などはクラスの規模等によって変えている)、SAも教育内容や教材づくりに積極的に関与して展開している(「アクションリサーチII」久保・芝田・焦・中井・朴担当)。
  • 「法政策基礎リサーチ」では、受講生に政策学の基礎を学ばせながら、グループワークによる政策提言を2回もしくは3回行わせることで、企画立案能力や班内で相談してまとめ、発表するコミュニケーション能力を習得させることを目的としている。
  • 公開授業の1月26日の合同ポスターセッションでは、それぞれが5クラス混成として3つ教室に分かれてポスターセッション形式で、ミニ発表と質疑応答を行った。感染対策から、教室間の移動はなく、開会式・閉会式などはオンラインで結んで放送形式で行った。

(2)ワークショップ[意見交換の内容等]

  • 学生であるSA主体での運営という点が良かった。授業などで日頃からSAが関わられていることから、そのような姿をみて、「先輩のようにやりたい」という気持ちになる受講生(1年生)も多いのではと思われる。
  • ジャッジの評価方法が、根拠に基づいて発表を構成されているかであったり、調査や研究という部分により焦点が当たっているところが印象的だった。PPTをうまく作る、発表をうまくする部分に目がいきがちになりそうになるが、このように評価基準を明確にすることで、政策の中身・内容を大事にするという授業の根幹の部分を大切にされていると感じた。
  • クラス内だけではなく、全体報告の場で全く知らない人に対して発表・説明する機会を設けるというのも、考えられていると感じた。
  • 発表者としてデータを用いながらうまく伝えているところ、聞き手側として積極的に(時に鋭い)質問をしているところ、などがあり活発な印象だった。今の状況ではこのような場は貴重で、学生も張り切って臨んでいたように見えた。
  • 報告用レジュメのデザインが、例年と比べてもますます上手に感じられた。指導の成果だと思われる。
  • 報告者が嬉しそうに発表していた、想像していたよりもはるかに楽しそうだったのが印象的だった。
  • ポスターセッションでの開催は2年ぶりとなったが、事前の「アクションリサーチ」でのSA間での打ち合わせや共有を通じて、円滑に運営できたのは良かった。
  • 担当クラスの異なるSAであっても、個人的な信頼関係があるために情報共有がうまく進んだと思われる。

2. 法教育演習Ⅰ

1. 実施日時

  1. 公開授業:令和3年12月22日(火) 12:40~14:15
  2. ワークショップ:令和3年12月22日(火) 14:20~15:00

2. 実施場所:

  1. 天地館303教室
  2. 天地館305教室

3. 科目名

法教育演習Ⅰ

4. 参加者数

  1. 公開授業:
    学生(受講者)34名(3限語学の早退を含む)
    担当教員4名、SSA 2名、参観教員2名、教育支援事務室の方1名
  2. ワークショップ:
    教員5名、教育支援事務室の方1名

5. 内容

(1)公開授業について[授業の概要]

  • 「法教育演習Ⅰ」は、「プレップセミナー」に配属されるSA(Student Assistant)を育成することを主な目的とした演習科目である。そのため、「プレップセミナー」について担当教員との協働の在り方、科目内容と受講生との関わり方などが当該科目の重要なテーマであり、あるべき「プレップセミナー」のかたちを考える課題解決型学習という側面を持つ。
    なお、上記参加者数のところにある「SSA(Super Student Assistant)(旧AB,AS)」とは、「法教育演習Ⅳ」の受講生のことを指す。「法教育演習Ⅳ」とは、「プレップセミナー」のSA経験者が「法教育演習Ⅰ」のSAを務め、「法教育演習Ⅰ」の受講生の学修を支援し、授業運営を助ける演習科目であり、同様の課題解決型学習という側面を持つ。「プレップセミナー」のSAと区別するためにSSAと呼称しているが、法教育演習Ⅰの公開授業は、実質的には法教育演習Ⅳの公開授業にもなっているといえる。
    これらの科目は法学部におけるユニークな(SA育成、課題解決型)授業であること、SA候補の受講生、SA経験者、そして法学部教員がより良い授業について考える機会となること等が本科目を公開授業に選定した理由である。
  • 「法教育演習Ⅰ」は2クラス設けられており、公開授業は両クラスの合同授業であった。
    初めに、進行を務めるSSAと担当教員が両クラスの受講生に対して簡単な自己紹介をした後、両クラスが一堂に会するのは初めてであることから、アイスブレイクからスタートした。しかも、単にアイスブレイクをするのではなく、受講生の授業への参画意識を涵養すべく、両クラスの企画したアイスブレイク案の対抗戦という趣向が凝られた。具体的には、各クラスがアイスブレイク案を1つ考案し、各クラスの代表が内容をプレゼンした後に実践し、最後にいずれのクラスが考えてきたアイスブレイクがよかったか、採点シートに従って採点し、投票するという形で実践された。採点シートに記載された採点の観点は、①目的に関して(目的を考えられているか、目的が受講生に理解されたか、目的が実現されているアイスブレイクであるか)、②進行に関して(事前準備が念入りに行われているか、進行がスムーズであるか、オンライン受講生にも留意したアイスブレイクであるか)、③人権(多様性等)に配慮された内容となっているか、誰しもが楽しめる内容となっているかの3項目であり、それぞれについてa、b、cの3段階で評価するというものであった。
    金曜日クラスの提案したアイスブレイクは、論拠を考えるゲームであり、例えば、「今日は水曜日だ」という事実から、「映画を見る」という主張につなげる間の論拠を考えるというものであった。火曜日クラスの提案したアイスブレイクは、想像力、一体感、全員話し合う機会を作ることを目的にしたものであり、連想ゲームと伝言ゲームを足したようなゲームであった。
    投票後、各アイスブレイクに対する担当教員からの講評を経て、メインテーマであった「躓きと克服についてのまとめ」の共同作業がなされた。受講生を大きく2つに分け、一方は、「躓き」と「克服」について、内容の整理・まとめをし、もう一方は、新入生に向けた冊子を作る際には、どんなレイアウトが良いのかを検討し、最後に発表がなされた。発表では、「大学・法学部の授業では『答え』『ゴール』がいろいろあることについてギャップを感じ、それが躓きの原因だと考える」、そして「答えがないことからレポート課題が難しい」との意見が出され、友達と相談することや励まし合う関係を作ることが大切だとの提案がなされた。また、相談することができるように履修相談室を知ってもらうことの重要性が指摘されたり、選択必修などの仕組みを理解させることで留年を避けることができるのではないか等の提案もなされた。冊子のレイアウトについては、履修要項の見づらさが指摘され、もっとコンパクトで学年ごとに分類されたものの方がわかりやすいとの意見が出された。また、新入生向け冊子では、教室の場所がわからないのでマップを貼り付けることも提案された。そして、私生活や学業などのテーマに分け、各項目について先輩からの助言やアンケートを写真付きで掲載することなどが提案された。
    最後に、担当教員からの全体講評、そして、「今日の授業の中で『良いな』と感じた他人の言動」と題して受講生同士が振り返り、発表がなされた。さらに、法教育演習Ⅰでは授業終了後に振り返りシートを提出させているが、今回はSSAが振り返りシートのテーマを考え、「本講義にて新たに学んだこと・気づいたこと」、「今日見た他人の言動で良いと思ったこと」、「本講義を通して、自分の長所などが活かされていると感じた場面」という3項目について受講生は振り返り提出するようアナウンスがなされた。
  • 法教育演習ⅠのそれぞれのクラスにSSAが配属されていたこと、そして彼女たちが自ら公開授業の内容を企画したいと申し出たことから、法教育演習Ⅳの一環として、今年度の公開授業の内容をSSA両名に企画してもらうこととした。SSA両名は、それぞれのクラスの雰囲気や特徴について意見交換をした上で、担当教員4名と協議しながら、授業内容について構想を練り、当日の運営も基本的にSSAが担当した。これまでも「法教育演習Ⅰ」の公開授業を行ってきたが、SSAが企画運営の主体を担ったのは今回が初めてであり、一つの挑戦であったといえよう。
 両クラスの合同授業は初めてであったことから、初顔合わせ同士でもメインテーマについて活発な意見交換ができるようにアイスブレイクからスタートすることとしたが、授業の雰囲気そして授業後の振り返りを見ても、これは功を奏したように思われる。
そして、SSAの呼びかけでSA経験者・旧AB経験者の有志も参加してくれた。司会進行のSSAと共に受講生のサポートをすると共に、授業後に主体的に座談会を開き、後輩たちの相談にのってくれたことを付言しておく。

(2)ワークショップについて[意見交換の内容等]

ワークショップ参加教員間での意見交換における主要な点を論点ごとに列挙しておく。
  • アイスブレイク案対抗戦では、一方はアイスブレイクを通じて考えさせることを意図した内容のもの、もう一方はグループワークを楽しませることを意図した内容のものであった。法教育演習Ⅰの授業で既に両クラスの受講生ともアイスブレイクの企画・運営を経験済であったが、これらの意図や趣の異なるアイスブレイクを体験して、アイスブレイクを企画する際には何を目指すためになされるのかということを意識することが重要であること、そして一言でアイスブレイクと言ってもいろいろなバリエーションがあることを実感したのではないだろうか。そして、担当教員からの講評で、トゥールミンモデルの実践力が弱いことも自覚できたのではないかと思われる。
    なお、上述のように各クラスでアイスブレイクを企画して持ち寄る対抗戦という形が取られたのであるが、これにあたりSSA自らSSA企画を担当教員に提案し、同企画の一環としてアイスブレイクの企画の仕方やプレゼンの方法を受講生にアドバイスするという授業時間外の活動がなされた(ちなみに、他のSSA企画として、SSAがSAの経験について話す座談会が行われた)。これは、SSAと将来SAになることを考えている受講生が学生同士で交流できる有益な機会となった様子である。
  • 参観された教育支援事務室の方から「学生が主導している部分の多さに驚き、感動した。学生主体のカリキュラムになっていると感じた。」との発言があり、本科目の趣旨・意義が実践されているのではないかと思われる。
  • 担当教員から、今日のアイスブレイクの実践を見て、「論拠」の部分がまだまだ伝わっていないことがわかり、授業内容の改善について気が付くところがあったとの発言があった。
  • 担当教員から、今日の司会進行をしたSSAそして有志のSA経験者達を見ていて、学生の成長を実感できたとの発言があった。そして、教員が言うよりも先輩が言う方が伝達効果があるということがわかってきたので今後も続ける必要があるとも述べられ、この先輩学生からの影響力の大きさはプレップセミナー担当教員からも賛同があった。
  • その一方で、今日集まった先輩たちは経験豊富であり、「自分たちもあのようにやれるのだろうか」と不安に思う受講生が出る可能性も指摘された。法教育演習Ⅰの受講生でSAになることに不安を抱く学生がいるのも事実である。急にできるようになるわけではなく、「やってみて学ぶ」ことの重要性を伝えることが大事であり、「失敗してもいいんだよ」というメッセージは重要だと思うとの意見が複数挙がった。
    ゼミ等の学生を見ていて、失敗して詰まってしまうことを嫌がる傾向があることが指摘され、それは他の学生の目を気にするからか、自己評価が高いからか、高校までの教育で「成功」「完成」を求められてきたからか、その理由が模索された。「改善」のためのコメントを「否定された(ダメ出しされた)」と感じる学生が多いので、そこから説明する必要があるとの意見が挙がった。
  • 躓きについて、大学では答えがない問題があることがその理由であると受講生が指摘していたことを受け、「答えはない」が「答えに至るまでの型」はあるはずであり、型をまなぶための時間と、型に沿って答えを出していくということを分ける必要があることが指摘された。そして、「答えがないから何を言っても良い」ではなく、その点、プレップセミナーでは「型にそって」いくことを教えているとの認識が参加教員間で共有された。
  • SAは後輩に背中を見せる先輩という重要な役割を果たしていることが再確認された。SSAは経験豊富で能力が高く、後輩のあこがれの対象・ロールモデルになることができ、法教育演習Ⅰ~Ⅳの全体の仕組みはうまく回っているのではないか、SAやSSAの数を増やしていけば、学部全体に与える影響も大きくなるのではないかとの意見が述べられた。
    今日の企画運営を担当したSSA両名は、4回生であり、一人は法政策基礎リサーチのSAも経験している経験豊富な学生、もう一人は縦のつながりを意識した運営がなされているゼミに所属している学生であった。今後、経験豊富な4回生に学内のいろいろな機会で活躍してもらい、その姿を後輩たちに見てもらうことが有益ではないかとの指摘がなされた。
  • ワークショップではSAの果たす役割、その重要性が認識されたが、今年のSAは対面授業の経験が少ない中でSAになり、経験不足であったことから特に難しかったであろうことが推察された。
    そこから、「オンライン授業におけるSA」、さらに、SAに限らず、対面授業の経験が少ない学生達の状況に話題は移った。そこでは、大学・授業への関与の仕方が大きく違ってきているのではないかという点が指摘され、自由に授業や時間の使い方の組み立てができるという利点がある一方、試験で「答案を書く」ことができるのかという点について1~2回生で不安が募っているのではないか、(来年度も定期試験を経験しない形がほぼ続くが)オンライン授業下でいわゆる「コツコツ型」に有利な状況から「一発勝負」の定期試験となると混乱が起きるのではないかなどの意見が挙がった。もっとも、レポート課題と定期試験は、限られた時間内に完全に独力で作成するという点に違いはあるが、自分の頭で「考えて書く」という点では共通していることから、プレップセミナーで「書く」機会をたくさん提供してトレーニングをする必要性が指摘された。コロナ禍以降、急なオンライン化で、プレップセミナーでガイダンス的な情報提供の比重が増え、レポートを書かせる課題が減少傾向にあり、法教育演習Ⅰでのレポートの出来が昨年あまり良くなかったのはこの表れかもしれないとの分析もなされた。今後、プレップセミナーの内容において「書く」機会の提供は重要であるというのが一致した意見であったといえよう。

3.まとめ

[活動の効果を高めるための今後の方策など]

  • 公開授業の対象科目は例年通りの選定であった。法政策基礎リサーチでは、対面とオンラインを併用し、複数教室でもスムーズに進行できており、アフターコロナに向けた学生主体の授業の萌芽が見られた。今回の公開授業およびその後のワークショップでの議論を踏まえて、次年度の公開授業の内容の充実につなげたい。
  • 教員間での情報共有は重要であるので、公開授業やワークショップ等には多くの教員に来ていただきたい。今年度はセンター試験のガイダンスや各種の委員会の開催日と重なったこともあり、授業担当者以外の教員の参加は例年に比べて増加したとは言えなかった。教授会等で開催日時を告知し参加を促すとともに、学部内の各種会議などの機会をとらえて、ワークショップでの議論を紹介するなどの形で、少しずつでも授業改善の試みを情報共有し、意見交換を重ねることが必要であろう。

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