令和4年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

今年度より「学習成果実感調査システム」が導入され、調査URLを科目ごとに学生に通知する必要がなくなり、回答率の向上が期待された。調査対象科目は全科目であるが、春学期は、そのうち1年次配当の「プレップセミナー」およびその他の「AL科目」を重点科目に指定し調査を行った。今年度の実施率は法学部全体で87.2%とコロナ禍前の水準近くまで改善された。なお「プレップセミナー」では100%の実施率であった。アセスメント・プランの一環としての本調査の意義が各教員に浸透していると評価できる。今学期は、受講者数の多い科目ではオンライン授業も以前残ったものの、対面授業がかなり復活したことや、システム変更の効果もあってか、回答率が全体では前回の14.82%から28.2%まで改善した。もっとも、「プレップセミナー」では回答率が56.7%と高いが全体でも30%を超えるくらいまでは高めていく必要がある。
調査を実施した全ての科目において、出席率は80%以上出席した者が80%を超えており、出席率80%以上の者では、「この科目で主体的に学習した」(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、80%を超えており、法学部全体でも70%を超えている。昨年度に比べて対面授業が増加したことで、出席率80%を超える割合がやや低下したものの、リアルタイムオンラインとの併用や講義の録画のオンデマンド配信などコロナ禍前にはできなかったICT活用が可能となったことで、主体的に学習したと実感する学生が増えたと思われる。
「この科目で学びの面白さを感じた」(強くそう思う+そう思う)、「この科目の学習を通じて、知識を得たり、スキルを伸ばしたりするなど、自らの成長を実感することができた」(強くそう思う+そう思う)と回答した者は70~80%で昨年度と大きな変化は見られず高い水準が維持できている。
基本的に対面で実施する「プレップセミナー」や「AL科目」で学びの面白さ、成長を実感する者が多いことは、法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革が目的としてきた主体的な学習態度の形成が定着しつつあると評価できる。
1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者は、昨年度は70%以上に上昇したが、今年度は60%半ば~70%とわずかではあるが減少した。オンライン授業では課題が多くなる傾向があるが、対面授業の回復により課題の量に変化が見られたのかもしれない。もっとも、それほど大きな差ではないので、今後も継続的に観測していく必要があろう。学習成果の可視化や単位の実質化を見据えて、授業時間以外の学習時間を適切に確保し、各科目の到達目標への到達度を学習者が実感できるよう適切な事前・事後課題を与えることも今後のFDの課題である。
なお、今学期の調査から導入された「授業の到達目標への到達度」を問う設問に対しては、「AL科目」では80%以上到達できたと回答した者が50%を上回ったが、法学部全体、「プレップセミナー」では、40~50%にとどまり、60~80%程度到達できたと回答した者と合わせるといずれの調査でも90%を超える結果となった。本調査に協力してくれる学生は比較的出席率も良く、主体的に学ぶ姿勢が身についている者が多いと思われるが、実際の成績評価との比較や今後の調査結果の傾向も継続的に観測していきたい。
「AL科目」においては、「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」の項目で「(強く)そう思う」とする回答者の割合および総合的な満足度ともに80%前後を維持できている。引き続き、主体的に学習することができるようにAL科目の内容をさらに充実させていくべきであろう。
秋学期調査では各教員が担当する「講義科目」から1科目を重点科目に選定し調査を行った。秋学期も受講者数の多い講義科目ではオンライン授業が続き、オンデマンド型授業では、調査への回答を促進することが困難であったと思われるものの、実施率は全体で84.4%(昨年度65.04%)と春学期同様コロナ禍前の水準となった。しかし、回答率では18.1%(昨年度11.82%)にとどまり春学期に比べると低下した。重点科目に指定した講義科目では実施率は100%であったが、回答率は14.6%にとどまった。春学期同様、回答システムの変更により回答率は昨年度に比べると改善傾向にあるが、全学的に学習成果実感調査に対する学生の意識改革も必要ではないかと思われる。次年度はさらに調査システムが改善され、設問の統合、実施時期の見直しなどが予定されているため、その効果を検証したい。
回答してくれた受講生に関しては、シラバスを確認したという回答が97%(昨年度97%)、1回の授業あたりの準備学習等に1時間以上費やしたという回答が60%以上であり、例年並みであった。「学びの面白さを感じた」という項目について「強くそう思う」+「そう思う」と回答した受講生が81%(昨年度90%弱)と昨年度からやや減少したものの概ね例年並みと言える。主体的に学習したか、自らの成長を実感することができたかといった項目の数値は、いずれも面白さを感じたという項目よりわずかに低いものの、例年に比べると学びの面白さが主体的な学習や成長の実感にも結びついているように見受けられる。
「シラバスで示された授業の到達目標にどの程度到達できたか」を問う設問に対しては、「80%以上」と回答した学生が全体で52%(出席率80%以上では58%)であった。「60%以上」を含めると全体で95%が到達目標に達していると感じている。回答したほとんどの学生がシラバスを確認し、学びの面白さを感じながら到達目標への到達を実感できているという結果を見ると、カリキュラム編成および授業の実施に大きな問題はないように思われる。もっとも、上述のように回答率が低く、出席率80%以上と全体との比較でほぼ差が見られないことからも、回答した学生は、主体的に学習する意欲の高い学生が多かったと思われるため、学生の全体的な動向であるとは言いきれないのも事実である。今後も継続的に観測していきたい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業とワークショップ

別紙「学部による公開授業&ワークショップ」実施報告2022」を参照。

(2)その他研修会等

スタッフセミナー
実施日時:2023年2月24日教授会終了後

  • 場所:真理館1階会議室+オンライン
  • 実施内容:進路・就職支援センターから担当者を招き、4年次生の就職状況の分析を中心に報告を受けるとともに、授業改善に向けた示唆を得るための議論を行った。
  • 参加人数:32名(内職員3名)

3. 総括

(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

今年度もオンライン授業と対面授業の併用というコロナ禍での対応が続く中で、組織的な情報共有にも重点をおいて活動をおこなった。今年度も、昨年度に引き続き非常時のオンライン授業ではなく、オンラインと対面それぞれの利点を活かす工夫が多くの授業で行われたことが、学習成果実感調査における「学びの面白さ」等学生の満足度に現れた。本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。
学習成果実感調査等においても、回答率は低かったものの、回答があった限りでは、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、公務員を志す学生のサポートを充実させた成果が出ていることが確認できるとともに、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、一定数の合格者の定着という成果として確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1.と2.において確認された改善すべき点

将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、特にオンライン授業となり教員・学生のコミュニケーションがとりづらい状況において、個々の学生のニーズにマッチした情報提供は4年次演習履修者が少ないこともあり、困難であった。オンラインであっても自ら積極的に動く学生と、自ら情報収集をしない、できない学生との二極化が見られる。後者の学生をできるだけ早く把握し、進路・就職支援センターなどにつなぐこと、さらに、通常の授業を通じて社会問題への関心を持たせる工夫も必要である。引き続き4年次演習の積極的履修を促す努力が必要だと思われる。
「学習成果実感調査」の回答率が一昨年度よりは回復したものの、低水準にとどまっている。意欲的に学習している学生が多く回答していると思われるので、到達目標の達成度は高い水準を示しているものの、引き続き回答率の向上に努めるとともに、結果の分析を今後のカリキュラム改革につなげたい。

4. 次年度に向けての取り組み

2018年度にスタートしたAL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムにより、学生の科目選択の選択肢が増え、将来の進路志望に関連づけた系統的履修が可能になった。カリキュラム改革の成果は、2019年度からのコロナ禍の影響もあるため、次年度も、引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していくとともに、コース制が卒業生の進路決定にどう影響しているか等を注視し、新カリキュラムの成果と課題を確認する。
次年度は、認証評価を受審するため、外部の評価も踏まえてカリキュラム改革の検討材料としたい。
具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。また、上記課題などについて、引き続き、組織的な情報共有と意見交換の機会を設けるべく検討していきたい。
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