令和3年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

春学期調査では、全科目を対象としつつ、1年次配当の「プレップセミナー」およびその他の「AL科目」を重点科目に指定し調査を行った。今年度の実施率は「プレップセミナー」では92.31%であったものの、全体では69.88%とコロナ禍以前に比べると大幅に減少した。もっとも、今学期は、一部の講義科目も対面授業としてスタートしたが、4月の緊急事態宣言によりオンライン授業となったこと、調査がオンラインアンケート形式となり、担当の全科目で個別にアンケートページへのリンクを設定しなければならないこと等を考慮すると昨年度とほぼ同程度の実施率を維持できたことは本調査に対する各教員の意識が高まっていると評価できる。
ただ、回答率が全体では前回の40%弱から14.82%と大きく低下した。オンライン授業ではオンデマンド型が推奨されたが、オンデマンド型の場合、アンケートへの協力が得られにくい傾向が強い。対面とオンラインの併用型やリアルタイムオンラインの科目では授業中にアンケートへの回答のための時間をつくることで回答率を確保しやすい。「プレップセミナー」や「AL科目」では回答率が比較的高かったのはそのためであろう。
調査を実施した全ての科目において、出席率は80%以上出席した者が90%を超えており、「この科目で主体的に学習した」(強くそう思う+そう思う)と回答した者が、「プレップセミナー」および(プレップセミナーを除く)「AL科目」の両方において、80%を超えており、オンライン授業であることで、通学時間がかからず、出席率が高く、課題が増えたことで必然的に主体的に学習したと実感する学生が増えたと思われる。全体と80%以上の出席者とで差はほとんど見られなかった。
「その他」を除く調査において、「この科目で学びの面白さを感じた」(強くそう思う+そう思う)と回答した者は80%を超え、「この科目の学習を通じて、知識を得たり、スキルを伸ばしたりするなど、自らの成長を実感することができた」(強くそう思う+そう思う)と回答する者が70%を超える(プレップ、ALでは80%を超える)など、例年に比べて大幅に増加した。
今学期は、オンライン授業であったことから、例年のデータとの単純な比較はできないが、法学部で近年おこなってきたActive Learning重視のカリキュラム改革が目的としてきた主体的な学習態度の形成が定着しつつあると評価できるのではないか。
「プレップセミナー」において、「学びの面白さを感じた」「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」「総合的に満足している」「法学部の学びについてイメージをもつことができた」「自分の将来について考える機会をもつことができた」の各項目について、「(強く)そう思う」とする回答者の割合は、昨年度に比べてわずかではあるが増加した。初年次教育(導入教育)として主体的な学習態度の形成を促すこの科目の役割が定着してきたとも評価できるが、割合の増加は、オンライン授業への対応について関係教員が協力して取り組んだ成果であるといえよう。1回あたりの準備学習が1時間を超えていると回答した者は、例年50%台であったが、今年度は昨年度と同様70%以上に上昇した。オンラインの反転授業形態となったことが大きな要因であると思われるので、今後も継続的に観測していく必要があろう。
また、「コース制」についての理解を問う設問について、「(強く)そう思う」とする回答者が全体では80%を超えた。1年次生が履修する「プレップセミナー」では70%とやや低いが、実際にコース科目を履修する2年次になるまでには制度の趣旨が理解できているものと思われる。今後もプレップセミナーでの指導等を通じて周知させる施策を継続する必要がある。
「AL科目」においては、「主体的に学習した」「自らの成長を実感することができた」の項目で「(強く)そう思う」とする回答者の割合が80%を超えており、総合的な満足度も90%を超えている。引き続き、主体的に学習することができるようにAL科目の内容をさらに充実させていくべきであろう。
秋学期調査では「講義科目」を中心に調査を行った。秋学期も受講者数の多い講義科目ではオンライン授業が続き、オンデマンド型授業では、調査への回答を促進することが困難であったと思われる。そのため、実施率は全体で65.04%(昨年度55.56%)、回答率では11.82%(昨年度17.5%)と実施率が改善する一方で回答率は低下した。重点科目に指定した講義科目では実施率は76.79%と高いものの、回答率は9.87%にとどまった。実施率については、moodleにリンクを掲示しても受講生が一人も回答しなかった科目もあったため実施にカウントされなかった科目も多かったのではないかと推察される。
ただし、回答してくれた受講生に関しては、シラバスを確認したという回答が97%(昨年度98%)、1回の授業あたりの準備学習等に1時間以上費やしたという回答が60%以上であり、例年並みであった。「学びの面白さを感じた」という項目について「強くそう思う」+「そう思う」と回答した受講生が90%弱(昨年度80%弱)と昨年度からさらに増加した。出席率80%以上では80%にそれぞれ昨年度より大幅に増加した。いずれも、出席率による差は認められなかった。主体的に学習したか、自らの成長を実感することができたかといった項目の数値は、いずれも面白さを感じたという項目より5~10ポイント低いものの、例年に比べると学びの面白さが主体的な学習や成長の実感にも結びついているように見受けられる。もっとも、上述のように回答率が低く、出席率80%以上と全体との比較でほぼ差が見られないことからも、回答した学生は、主体的に学習する意欲の高い学生が多かったと思われるため、学生の全体的な動向であるとは言いきれないのも事実である。今後も継続的に観測していきたい。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業について

詳細は、「「学部による公開授業&ワークショップ」実施報告2021」を参照。

(2)その他研修会等

スタッフセミナー
第1回
・実施日時:2021年9月15日(水)教授会終了後
・場所:真理館1階会議室(オンライン併用)
・実施内容:進路・就職支援センターから担当者を招き、公務員試験の合格状況を中心に4年次生の就職状況の分析を中心に報告を受けるとともに、授業改善に向けた示唆を得るための議論を行った。

第2回
・実施日時:2022年3月17日教授会終了後
・場所:真理館1階会議室
・実施内容:進路・就職支援センターから担当者を招き、4年次生の就職状況の分析を中心に報  告を受けるとともに、授業改善に向けた示唆を得るための議論を行った。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

長期化するコロナ禍におけるオンライン授業と対面授業の併用という緊急事態の対応が続く中で、組織的な情報共有にも重点をおいて活動をおこなった。今年度は、昨年度の経験を活かして単なる非常時のオンライン授業ではなく、オンラインと対面それぞれの利点を活かす工夫が多くの授業で行われたことが、学習成果実感調査における「学びの面白さ」等学生の満足度に現れた。本学部では、初年次・少人数科目である「プレップセミナー」をはじめとしたAL科目を充実させることを通じて、学生が主体的な学習のしかたを身につけ、より主体的・意欲的に法学部の科目に取り組むことができるようにすることを目指してきた。学生をSAとして育成し、そのSAが下級生向け授業に参画する授業形態についても、主体的な学習に向けた好循環をもたらしているものと評価できる。
SAによる自発的な新入生のためのSAセミナーが実施されるなど、教員と学生がこれまで以上に協働してオンライン授業を成功させることができたと言える。
学習成果実感調査等においても、回答率は低かったものの、回答があった限りでは、学生の主体的な学習態度が定着してきていると評価できる。また、スタッフセミナーにおいては、公務員を志す学生のサポートを充実させた成果が出ていることが確認できるとともに、法学部における各科目の学習内容を積み上げていくことが公務員を目指す学生にとっても有益であることが、合格者の大幅増という成果として確認できた。引き続き、自ら主体的に学習する態度の形成に重点を置いて法学部での教育を充実させていく。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

将来に就く職業(キャリア)との関係での現在の学習内容の主体的選択などについて、学生の間に能力・関心のギャップがあり、多様な学生にどのように効果的に各種情報を届けていくのか、特にオンライン授業となり教員・学生のコミュニケーションがとりづらい状況において、個々の学生のニーズにマッチした情報提供は困難であった。オンラインであっても自ら積極的に動く学生と、自ら情報収集をしない、できない学生との二極化が見られる。後者の学生をできるだけ早く把握し、進路・就職支援センターなどにつなぐこと、さらに、通常の授業を通じて社会問題への関心を持たせる工夫も必要である。
また「プレップセミナー」などの初年次教育において多様な学生が共通して修得すべき基礎的能力はどのようなものであるのかが、検討すべき課題であることが確認された。

4. 次年度に向けての取り組み

2018年度にスタートしたALL科目重点化の方向を進めてコース制を採用した新カリキュラムが完成年度を迎え、学生の科目選択の選択肢も増えて、新カリキュラムで学んだ学生が初めて卒業した。留年率がやや低下したこととカリキュラム改革の成果に相関関係があると言えるかは、今年度の結果だけでは判断できないかも知れないが、次年度も、引き続き、AL科目についてその教育効果を継続的に把握していくとともに、コース制が卒業生の進路決定にどう影響しているか等を注視し、新カリキュラムの成果と課題を確認する。
具体的には、春学期には「プレップセミナー」を中心に、秋学期には(主体的な学習ができるようになっているかについて知るために)「講義科目」を中心に、調査を行って基礎的なデータの収集をしていく。また、上記課題などについて、引き続き、組織的な情報共有と意見交換の機会を設けるべく検討していきたい。
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