経営学部 卒業生インタビュー
有限責任監査法人トーマツ 監査事業本部 関西事業部 パートナー(公認会計士) 奥村 孝司さん(1994年卒)

今回私たちが企業インタビューに伺った有限責任監査法人トーマツは、日本で最大級のビジネスプロフェッショナルファームであるデロイト トーマツ グループの主要ビジネス法人です。デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームであるデロイト トーマツ合同会社およびそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社を含む)の総称です。
各法人はそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しており、国内約40都市に約11,000名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。 有限責任監査法人トーマツの設立は昭和43年5月で、総従業員数は6,696名 (2017年3月末日現在)、上記のうち公認会計士数は3,300名、公認会計士試験合格者等(会計士補を含む)1,235名で、パートナー数は579名です。
今回は、その中で多くの企業の監査業務の責任者であるパートナーの一人として活躍している奥村孝司さんに、インタビューを試みました。四条烏丸の近くにある京都事務所は綺麗で明るく、とても雰囲気のいい法人でした。

インタビュアー

経営学部 行待ゼミ:板垣 智裕さん、宮竹 暁之さん、涌嶋 悠花さん、易 芬さん


OB、OGの勧めで会計職の道へ

奥村さんは大学時代の四年間は主にサークル活動(テニスサークル)を頑張っていました。また、アルバイトもよくされていたそうです。自宅から大学まで片道2時間かかる中で、アルバイトで稼いだお金で車を買ってドライブをしたり、旅行代を稼ぐために日雇いで運送会社でも働き、夜はコンビニで夜勤のバイトをするといったタフな生活を送られていたそうです。
現在の仕事に就きたいと思ったきっかけは、体育会系の厳しいサークル活動と平行して土曜日の会計職講座を受けて、簿記を学んだことでした。その授業で出会ったOBの税理士、会計士の先生がとても楽しそうに授業をしていて、その授業を聞いているうちに、簿記を面白く感じるようになったということでした。
OBの先生方と毎週毎週会って話をしたこと、会計職講座のコースが段階を踏んで進めるようなコースになっており、そこで会計士の仕事を理解することができたことは大きかったと奥村さんはおっしゃってました。また、公認会計士のコースになると、奥村さんと同じゼミ生の2名で授業を受けることとなり、非常に贅沢な授業だったそうです。例えば原価計算の授業になると先生と1対1で様々なことを話したり、飲みに連れて行ってもらったり、講座の授業よりもむしろそちらのほうが影響をうけているかも、と笑いながら話してくださいました。
会計職講座に行く中で日商簿記検定の3級、2級そして1級が取得できたので、自分が会計士に向いているのではないかと思い、4回生の時に公認会計士試験に挑戦することを思い立ったそうです。試験勉強を始めてから2回目の挑戦で公認会計士に合格しましたが、当時は就職が厳しかったということもあり、簿記の専門学校の講師を2年した後に、有限責任監査法人トーマツに入社しました。

トーマツの「部屋制の無いフリーさ」に魅力を感じて

なぜトーマツを選んだのかという私たちの質問に対して奥村さんは、きっちりしているイメージがあった一方で、自由度も高いという印象を受けた事、それが自分の肌にあったのだと答えてくれました。 また、他の監査法人の場合、部屋制とよばれる「1人のパートナーをトップとして監査業務を行うチーム制」で監査業務を行っていた法人もあると当時聞いていましたが、トーマツにはそれがなく比較的フリーに仕事ができるということにも魅力を感じたとのことでした。
さらに、トーマツはIPO(企業の株式公開)に強いという定評があり、将来的にアドバイザリーとして指導的役割も業務として担えるのではないかと考えたともおっしゃっていました。

トーマツの主な仕事

最初の説明にもありますが、有限責任監査法人トーマツでは監査・保証業務をベースにグローバルサービス、金融関連業務、株式公開支援、アドバイザリーサービス、IFRS関連業務、パブリックセクター関連業務、リスクアドバイザリーなど多角的な業務を行っています。
簡単にいうと監査はさまざまな規模、多岐にわたる業種の国内外の企業の経営状況をあらわす財務諸表をチェックしてその財務諸表の信頼性を保証するために実施しており、この監査が公認会計士の主たる仕事になります。
監査の具体的な仕事内容についてですが、従来は紙媒体で監査調書を作成していましたが、今はインターネットクラウドを利用してデータ管理を行っているため、職場だけでなく、家でも仕事ができる方式になったそうです。
ただしパソコン上での作業だけではなく、実際に会社の財務諸表を確認して、それが正しいかを現地に行って確認する業務も行っています。例えば会社の在庫が実際に存在するかどうかを確かめるために会社の実地棚卸に立ち会ったり、会社が保有している現金や有価証券の実査をしたりもします。 銀行預金や借入金、債務保証がある場合には監査法人から金融機関に問いあわせる確認手続を実施したり、取引先に債務の詳細を確認することも行っています。また、貸付金や売掛金が回収できる見込みがあるか判断する場合には、相手先の状況を確認したりもしているということでした。海外子会社などがある場合は、出張で訪れて相手とコミュニケーションをとる場合もあります。こういった業務をする中でその会社の全貌を理解しておかなければならないので、非常に多くの企業知識が必要になります。
奥村さんはパートナー(社員)として監査報告書にサインをする立場にあります。監査の結果に基づき、監査意見を表明する報告書が監査報告書です。「株主・債権者や投資家の保護」を目的として、会社法や金融商品取引法の規定により、監査は必ず受けなければならない会社においては、監査報告書を利用する株主・債権者や投資家は多数存在します。そのため、間違った監査報告書を提出して、利用者が損害を被った場合には裁判にもなることもあり、その意味では非常に責任は重い仕事である、と話してくださいました。

大切なのはコミュニケーション能力

監査法人で仕事をする上で、最も必要とされる能力は何ですかとの私たちの質問については、当然に基本的な会計や監査の知識は重要ですが、一番重要なのは「コミュニケーション能力」と奥村さんは話してくださいました。
会計は、「きちんとしていて当然」というところがあり、会計不祥事が発生したとき(監査の問題が発覚したとき)に注目されるので、普段から隠された情報を見つけなければならず、会社の異常性を察知するためにもコミュニケーションを行い、「Audit(聴くこと)」が重要になってくるそうです。
また、有限責任監査法人トーマツには多くの公認会計士が在籍していますが、その中には主にアドバイザリーのみを実施していて、監査は行っていない会計士もいるそうです。その理由については、会社の社長と直接話をする機会も多いので、監査を一通り経験したら会社の方と話したりする中で指導的な役割を果たしたいと考える人もいること、また、最終的に監査法人を退職して独立をする人も多いので、将来的なことを考えてアドバイザリー業務のみを行う人もいるとのことでした。
そういったアドバイザリー業務をする上では、会社の内部事情まで理解し、社長と同じ目線で話をすることができなければいけないので、その企業については企業の方よりも深く会社について理解していないと仕事ができないということでした。
時には60、70歳の社長と直接話をする場合もあるので社内の十分な知識を持っていないと一蹴される、あるいは怒る人もいるそうです。また、逆にこちらのほうから社長に厳しいことを言わなければならない局面もあるそうです。そういった意味では面白いけれど、大変な部分もありますとも奥村さんはおっしゃっていました。

興味を持ったことにはなんでもチャレンジ

最後に、在校生へ向けて一言メッセージをという私たちの問いかけに対して奥村さんはこう話してくださいました。
「大学ではやりたいことをやる。皆さんはやりたいことをやるために大学にきていると思うので、今若いうちに興味を持ったことになんでも挑戦していくことが大事だと思います。ちょっと違うと思えば変更もできますし、そこでやりたいことが見つかるかもしれない。動いてみることが重要だと思います。僕も京産に来ていなかったら会計の道に進んでいなかっただろうし、OBの皆さんの話を聞いてみることもいいと思います。」

インタビューを終えて

私たちはこのインタビューを通して会計士の仕事を深く知ることができ、仕事の大変さや、その中での面白さを感じました。また、奥村さんの言葉から、遊ぶときと勉強するときのメリハリをつけた生活を心がけるとともに、何事にも尻込みせずに挑戦していきたいと思いました。
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