総合生命科学部 バイオフォーラム2013 開催報告(2013.07.19)

  2013年7月19日、15号館15102セミナー室においてバイオフォーラム2013が開催された。

 講師に現在研究者として活躍されている本学卒業生の2人、浅野 弘嗣 総合生命科学部 生命システム学科 特約講師(平成17年工学部生物工学科卒業)と藤本 崇宏 京都府立医科大学大学院 医学研究科 分子病態病理学 講師(平成12年工学研究科修士課程生物工学専攻修了)を招き、バイオフォーラムを開催した。第1部では、浅野 弘嗣 特約講師による「マウス大脳皮質発達過程における自閉症関連分子Shank3のバリアント発現解析」の講演、第2部では藤本 崇宏 講師による「肥満・糖尿病・癌標的分子でありかつCa2+シグナル制御分子であるKRAP」の講演がおこなわれた。

「マウス大脳皮質発達過程における自閉症関連分子Shank3のバリアント発現解析」

浅野 弘嗣氏

 近年のゲノム解析の結果、自閉症や精神遅滞の患者からSHANK3遺伝子の変異が報告され、自閉症スペクトラム障害の原因遺伝子と考えられている。SHANK3タンパク質は、シナプス関連タンパク質と相互作用する足場タンパク質で、SHANK3の変異によりシナプス形成・機能異常が引き起こされる。講演者らが発見したマウスShank3遺伝子の新規バリアントは、C末端の機能ドメインが欠損しているため樹状突起スパインに局在することが出来ないこと、発達期の大脳皮質における遺伝子発現にDNAメチル化状態が関与していることを発表した。さらに、精神疾患の一つであるRett症候群の原因遺伝子産物MeCP2がその領域に結合することを紹介した。

「肥満・糖尿病・癌標的分子であり且つCa2+シグナル制御分子であるKRAP」

藤本 崇宏氏

 我々は癌細胞において活性化KRAS依存的に発現上昇する遺伝子として機能未知のKRAPを同定した。その後の同遺伝子欠損マウスの表現型解析により、同遺伝子が生理的な全身性のエネルギー恒常性制御に関わることを明らかにし、同遺伝子の機能調節が肥満・糖尿病など代謝関連疾患の創薬標的になり得ることを示唆した。さらに、KRAP蛋白と相互作用するものとしてイノシトール3リン酸受容体(IP3R)を同定したが、分子・細胞・組織レベルでの同分子間相互作用機序の詳細や機能的意義について述べ、細胞極性とその極性に基づいたCa2+シグナリング制御の重要性を紹介した。

 
PAGE TOP