【国際関係学部】コンソーシアム京都主催「京都から発信する政策研究交流大会」で研究発表を行った3年次 井村 安里さんを取材!

2023.12.27

2023年12月17日(日)に、公益財団法人 大学コンソーシアム京都が主催する「京都から発信する政策研究交流大会」が開催され、国際関係学部・井口 正彦ゼミの学生が発表しました。
「京都から発信する政策研究交流大会」とは?
「都市政策全般」をテーマとする政策提言の交流大会。大会の内容は、日頃の研究成果を生かして、環境・経済・社会・地域・福祉等のあらゆる都市問題を解決するための政策を発表し、専門家の方からフィードバックを受けるというもの。さらに、論文と口頭発表による審査が行われ、数ある政策提言の中から選ばれた最優秀賞は、実際に京都府の行政担当の方との意見交換の場が設けられる。さまざまな大学の研究発表と競い、刺激を受けながら研究をさらに深めることができる非常に意義のある大会となっている。

なぜ国際関係学部から政策研究交流大会に挑戦しようと思ったのですか?

私たちが日頃研究しているのは「国際関係学」であって、京都府における都市問題のような身近なこととは少しずれています。私が研究しているのも、インドネシアの森林ガバナンスです。今回、この大会に挑戦しようと思ったのは、誰もが国際関係学を学ぶ中で一度は感じたことがある「ふわふわしている」という感覚を拭いたかったからです。国際構造におけるイデオロギー対立、遠い他の国の紛争や差別の問題、開発途上国の貧困問題、グローバルな解決が必要な環境問題。スケールの大きい国際関係学を研究していくにあたって「地に足のついた研究とはどんなものだろう」と考えるようになりました。そんな時にこの研究大会の存在を知り、何か「地に足のついた国際問題の研究」につながるヒントが得られるのではないかと思い、まずは自分の研究テーマに近い身近な問題から調査を始めようと決めました。
これがコンソーシアム京都への参加を決めたきっかけです。

どのように取り組まれたのですか?

国際問題の研究に先駆けるような形で挑戦を決めたこの大会には、研究テーマが近い同じゼミの仲間を集い、5人で参加をしました。私たちが取り上げた問題は、「京都府における林業の衰退」です。国際社会では森林減少が問題として取り上げられている一方で、日本では、木材の需要不足・林業の担い手不足から多くの森林が放置されています。森林が伐採されて減っていることは環境問題として周知の事実ですが、森林を放置することも環境負荷になっています。なぜなら、人工的に植えられた木が長年放置されると、温室効果ガスの一つである二酸化炭素を吸収するという森林機能が衰え、むしろ二酸化炭素を放出してしまうようになるからです。さらに、放置された森林は、本来災害防止機能を持っているはずが、森林そのものが土砂崩れを起こしやすくなるという問題を引き起こすため、林業衰退は地域住民に直接的に関わる問題です。
地域住民に関わる問題は、もう一つあります。それは、京都府民が納税している「京都府豊かな森を育てる府民税」という森林環境税が十分に機能を果たしていないことです。府民から徴収されているにも関わらず、林業の衰退を止める十分な活用が実現されていないことも、都市問題といえます。このような問題を政策提言にて解決することを目的に、私たちは調査活動をスタートさせました。
発表を前に政策提言の論文やプレゼンを準備する様子
発表を前に模擬プレゼンを行った時の投影資料写真
京都府林業の現状を知るため、京都の伝統と呼ばれる北山林業にてフィールド調査を行ったり、府内の木材需要がどのように減少していったのかを調べるために、木造建築にこだわる京都建築専門学校の方へヒアリング調査を行ったりしました。実際に足を運び、現地の声を聞いて得た情報と、ゼミ内で日頃研究していたカーボンクレジット制度や企業の社会的責任(CSR)などの知見と掛け合わせながら、林業活性化に向けた策を練りました。そして出来上がったのが「ステークホルダー連携型林業」です。興味のある方は、コンソーシアム京都のWebサイトから論文を読んでみてください!
発表を前に模擬プレゼンを行った時の集合写真

国際関係学からアプローチする上でどんな課題に直面しましたか?

試行錯誤を繰り返しながら完成させた政策提言ですが、国際関係学部での学びとの違いから直面した課題がありました。それは、一つの問題に対する新しい解決策を提案することの難しさです。学部内では、ある国際問題を徹底的に分析し、解決に必要な要素やアクターを明らかにする、または既存の国際レジームや各国の政策を評価する研究が多いです。しかし現実では、未解決の問題に対して既存の提言では不十分なことが多く、新しい解決策を生み出す必要があります。問題の要因と解決に必要なことを分析した後、私たちはこの課題に直面しました。真に問題解決を実現するには、十分な知識に加えて、発想の転換が必要になります。頭を抱えながら出した答えが正解だったのかは、政策が実現してみなければわかりませんが、私たちの精一杯の創造力で政策提言を完成させました。この点が難しく、オリジナリティという部分で減点されるのではないかと不安に思っていたため、論文審査を通過したときはとても安心しました。
発表時の様子

本番を終えて感じたことはなんですか?

大会当日は、さまざまな大学の興味深い政策提言に刺激を受けました。問題を徹底的に分析したあと、斬新な切り口から解決策を生み出し、実際に行動に移している政策発表が多かったことが印象的です。地域活性化に向けて高校と連携した活動をすでに行っていたり、観光客の魅力発信を9年ほど続け、ある地域の里山活性化に協力していたり、行動力で研究結果を示す姿勢から学べることが沢山ありました。私たちの発表に関しては、審査員の方からおもしろいと評価をしていただくことができ、これまでの地道な調査が実ったと感じました。一方で、これからもう一段深い研究をしていくためにも、まだまだ足りない部分が多いということを実感する1日でもありました。現地からの目線を含めた多角的かつより意義のある研究をしていくためにも、今回の挑戦で得た学びをこれからの国際関係学における研究にも生かしていきたいと思います。
研究の力試しや、より実践的な問題解決を目指したい方など、都市政策と国際関係学を絡めて、この政策交流大会に参加してみるのはいかがでしょうか!
発表当日の集合写真
発表後のコーヒーブレイク
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