グッド・トライ賞

経営学部 経営学科 4年次生 宇津木 健

作品概要

100キロの軌跡

○挑戦 24時間100キロハイクに再び挑む!

 本学のローバースカウト部が10月に主催する「24時間100キロハイク」はご存知だろうか。私は去年初参加して、23時間36分で完歩した。しかし、ゴールした後は靴を脱ぐことすら出来ず、さらには、その翌三日は痛みで部屋から出ることすら出来なかった。人生で初めて精神が肉体を超えた経験だった。一度やり遂げれば十分だろう、そう思い今年は参加する気はなかった。ところが、あるご縁で私は旅行会社に山岳ガイドとして就職することになった。これから歩く仕事に就くんだ!という覚悟が参加を決意させた。

○失敗 ペースを見失いリタイアしたこと

 中間地点(47.4km)まで単独一位をキープしていた。夏に山を多く歩いていたからだろう、その確かな成果が表れていた。しかし中間地点で後続に追いつかれ、2位の超おばちゃんと呼ばれる人と共に再び歩き始めた。62歳のその女性は私のことを「孫みたいなもんやから」と言う。孫世代の意地を見せたいのと一位を譲りたくないので、必死で逃げた。その無理したペースは自分の足を壊すことになった。後続に抜かれながらも歩いていたが、大量の汗と豪雨の影響だろう、いきなり震えが止まらなくなった。67.3kmのチェックポイントで私はリタイアを宣言せざるを得なかった。

 リタイア後は近くのテントで仮眠をとり、朝、ゴールである大学ピロティにスタッフの車で運んでもらった。完歩した後輩たちに拍手を送る一方で、自分がすごく惨めに感じた。このまま終わりたくない!私はゴールである京都産業大学からリタイアした地点まで逆歩することにした。足は筋肉が固まって1時間で3キロのペースが限界だった。主催者が用意してくれるチェックポイントも共に歩く人もいない。ただの自己満足だった。真夜中のゴールに辿り着いた時、涙が溢れた。嬉し涙なのか分からない、この100キロの過程にあった出来事や思ったこと全部がフィードバックしてきて溢れ出たようだった。男泣き、イベント開始から35時間半が経っていた。

○学んだこと 自分の力を決して過信しないこと

 私は、今まで幾度となく「なんとかなる」という考えで実際なんとかしてきた。今回もどこかでそう思っていた。が、どうにも出来なかった。私はこれから山を仕事の場とすることになるが、山では何かが起これば命に関わる。自分の力量を把握し、決して楽観的な行動を起こさない。そう強く刻み込まれた経験となった。同時に、私の夢のためにも必要な経験であった。私の夢はエベレスト登頂だから。

 当たり前だけど、歩かなければ前に進めない。つくづく実感した。ゴールは逃げない、諦めるのはいつも自分だってこと。歩くことがよく人生に例えられるのは、つまりそういうことなのだろう。時間に軸を置いたらきっと人生は勝手に流れていくけれど、やりたいことを実現していくためには自分の足は自分で進めるしかない。夢に向かって自分の足で歩いていく、私はそんな人生にしていきたい。

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