FD/SD研修会【教員・職員】Q&A

 ここでは、パネルディスカッションで時間の都合上紹介することが出来なかったご質問について、パネラーとしてご登壇いただいた先生・学生より回答していただきます。カテゴリ別に掲載していますので、今後の学生支援にお役立ていただければ幸いです。

教授方法・授業運営

Q:通学できない、教室に入れない学生にはどう対応したらよいですか?

A: ある程度の配慮があっても、大学に来られない、教室に入れないという状況では、大学としてできることも限られてくると思います。大学で授業を受けるという長期的な目標を設定するのは重要ですが、現実的にはそれをすぐに達成するのは難しい場合もあります。当面の目標として、若者サポートステーションなど、社会に向けて一歩ふみだすことを支援することを目的とした専門機関を利用するなどして、少しずつ自力で外に出て行けるような現実的な短期目標を設定する必要もあるかと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:ゼミに障害が疑われる学生がいる場合、何からはじめればよいですか?

A:「ゼミ」は学部や学科毎で状況がかなり異なると思います。私が所属している総合生命科学部生命システム学科/工学部生物工学科では3年次の秋学期に研究室分属があり、3〜5名程度の学生が1教員の研究室で1年半(4年次の卒業研究を含む)学ぶ形となります。私個人にとってのゼミ活動は、この1年半の期間ということになります。そこでは3年次生と4年次生、さらには大学院生や研究室内の他のスタッフ(助教や嘱託職員など)が日常を共にするプチ社会があります。その中で障害が疑われる学生がいる(入ってきた)場合にどうアクションを起こしていくか、ということですね。このようなゼミタイプの授業体制(基本的に少人数での学び)に身をおくことで、学生が抱えている、支援を必要とする問題点がはじめて浮かび上がるケースが多いのでないかと思いますので、とても重要なポイントです。私は簡単に言うと、行動マニュアルがあったほうがいいと思っています。
 ボランティアセンターではすでに窓口を設けて随時相談を受け付けていますので、まず個人的に相談をしてみるという選択肢があります。ただ、その手前の段階(どんな状況の時に、いつ、だれが、どうやって相談を持っていくか等)をどうするかということを学部や学科単位である程度決めておく、そして実際にその状況になった時に状況を共有する、ということがあるほうがより良いのではないでしょうか?
  さらにはゼミ活動に限らず、全学年に渡って、そのような学生を把握し支援する体制を考える必要も考えていくべきでしょう。再び私の所属する総合生命科学部生命システム学科の話になりますが、当学部では初年度教育の一つとして「フレッシャーズセミナー」という演習科目を春学期に開講しています。この科目では週2回授業の計30回のうちの21回を、7グループに分けた履修生(〜8名/グループ)の研究室訪問に割いています。1グループはある2つの研究室(担当教員2名)を3回の授業で訪問し、これを7回繰り返すことですべての研究室(担当教員14名)を回ることになります。この授業により、すべての学科教員は1年次生と短期間ではあるけれどマンツーマンに近い関係を持つことができます。演習形式の授業なので、学生の学習意欲やコミュニケーション能力なども具体的に把握しやすい環境にあります。その結果、学科内で「特別な支援が必要と思われる学生」に関する情報が共有されやすい仕組みになっています。ただし、総合生命科学部生命システム学科においてもまだ、先に述べたようなマニュアル化は行われていません。初年次教育以降のゼミ活動を介するまでに至る修学期間をどう扱うかという問題も残っています。学部事務室の職員の方々とも、そして学部を越えて、これから相談していけると良いと思います。

回答:佐藤賢一先生(総合生命科学部教授)

Q:ユニバーサルデザインが非障がい者にとって冗長となる時、教員として教育サービスのレベルの維持・向上をどうすればよいでしょうか(非障がい者にとっての不利益への対処)

A:ユニバーサルデザインは「誰にとっても利用しやすい」という考え方です。それが、障害の有無に関わらず「不利益=バリアが出来る」状況が生じるのは、ユニバーサルデザインの目指すところと大きく食い違うことになります。
 大講義の授業では、障がい学生をはじめ、学力に遅れのある学生、理解が追い付かない学生など、どうしても困り感をもつ学生が出てきます。そこで、障がい学生にはサポートを付けたり、単位がうまく取れない学生には修学指導や補習等を行いますが、これは、あくまでバリアフリーであって、「今在るバリアをどのように取り除くか」が前提となっています。 ユニバーサルデザインでは、「最初からバリアがないこと」が前提となっています。つまり、困り感を持つ学生のためにする手立てを最初からすべての学生に同じように行えば、すべての学生にとっても分かりやすくなるということです。例えば、「レジュメの配布」「指示をスモールステップで行う(細かい指示出し)」「板書の構造化(単語の羅列ではなく、つながりが分かるよう構造的に書く)」「パワーポイントの活用」等が挙げられます。
 ポイントは、授業内容のレベルを下げるのではなく、むしろ教え方の工夫が必要になるということです。障がい学生が受講しているために、評価基準の変更や進行を敢えて遅らせる必要はありません。「どうすれば、多様化している学生にとって分かりやすい授業になるのか」ということに主眼を置いて、授業方法を考える必要があります。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:障害のある学生への配慮が、障害のない学生への不利益となりうる状況ではどうすればよいですか?

A:一般的には、障害の有無にかかわらず、多くの学生にとってプラスとなる配慮の仕方、支援方法をみつけるよう、支援スタッフ、教員、学生がアイディアを出し合うことが必要かと思います。その学生にとって、助けになるのは明らかだが、確実に他の学生にとっては明らかにマイナスの影響がある、教員にとって過度な負担となる、といった場合は、「合理的な」配慮とは言えなくなります。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:重要なポイントを板書するのは有効ですが、自身で重要なポイントを判別するためにはどのような努力が必要ですか?

A:自身で重要なポイントを判別するということは、ただ単に重要かなと思ったところをがむしゃらにノートに書くだけです。しかし重要かなと思ったところも、実は先生の余談だったりします。やはりテイカーさんは先生のおっしゃっていることを文章にして私たちに伝えているので、言いたいことが伝わらないところもあります。ですから極力先生も話を急に変えたりしないように、そして板書の際はポイントを書くなどの工夫をしていただいた方がありがたいです。もちろん話すスピードもゆっくりめに。テイカーさんが聞き逃してしまう時もあるし、追いついていけませんから。

回答:北野美樹さん(法学部2年次・聴覚障害)

Q:法学部だと「英語のコミュニケーション科目」を履修しなければならないと思いますが、聴覚障害のある学生は、コミュニケーション科目をどのように受講していますか?また、受ける上で困っている点はありますか?

A:英語などの語学の授業はノートサポートテイクを受けています。隣にサポーターさんがついてくれ、英会話を英語で書いてくれます。困っていることではないけれど、不便なところは、グループワークなどで話をするとき、私は読唇できるのですが、やはり英語は難しいです。テイカーさんがテイクをしてくれるのですが、テイカーさんも全員の英語や普通の会話でもテイクをしなければならず、他の人たちよりも行動が遅くなってしまうのが特徴です。しかし、それは仕方のないことであり、それを周りの人たちが理解しようという気持ちが大切なのです。

回答:北野美樹さん(法学部2年次・聴覚障害)

試験

Q:試験時間の延長は、障害の程度によって決めていますか?

A:障害の程度というよりは、本人の困り具合や医師・専門機関の診断書等から、総合的に判断しています。特に、論述や読字・書字に困難がある場合は、本人の状況を聴き取り、ニーズがあれば、試験時間延長を検討します。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

成績評価

Q:申請のない学生は発達障害の疑いがあってもそのまま評価してよいのですか?

A:本人の申し出がなければ、特別な配慮は行えないと思います。配慮がないために単位が取れないという経験は、現状をなんとかしなければならないという「気づき」のきっかけになると思います。ただし、単位を落とすことを繰り返しながら支援も求めないと、大学に来ること自体が難しくなるケースもあると思います。そのような場合は、身近な教職員から、「相談しに来ないか」と声をかけることはあってもよいと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

窓口対応

Q:窓口での発達障がい学生の対応方法はどのようにすればよいですか?

A:一般論として、具体的な指示、あいまいでない指示の仕方に留意すること、当たり前と思われることでも、必要であれば説明することなどがあげられると思います。
 特別な対応は原則として本人(場合によっては支援者)の要請があったときと決めます。ただし、その要請に対してすべて対応できるかどうかは、本人、支援者の話を聴きながら部署内で判断する必要もあるでしょう。特別な対応をすると決めたら、部署内で一貫した対応ができるよう、情報共有することが必要になります。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

 窓口対応をしていると、「あの学生は発達障害ではないか?」と思われる方も多くいらっしゃるかと思います。その学生に発達障害があってもなくても、まずは本人のニーズや言い分を聞くことは前提です。具体的な対応方法は下記の通りです。

  • あいまいな表現の理解が難しいためそのような表現を避ける
    (例)「またあとで来てね」→「5分後に来てね」
  • 比喩や冗談を理解するのが難しい
    (例)体育の授業で、「試合に敗れた方が頭を丸坊主にすること」という、教員の冗談を真に受けて焦ってしまう。
  • 指導的な話し方ではなく、対話形式の話し方をこころがける(なかなか、話し出せない学生もいるが、学生が自分の言葉で話せるまで、話を遮る、話を止めるようなことをしない)

 コミュニケーションが取りにくい、信頼関係が築きにくい学生もいるかと思いますが、時間をかけて話をすることがまず必要になると思います。障害の特性上、自分の思いや考えを、上手く伝えることができない学生もいます。そういった学生のために、カウンターではなく、座ってゆっくり話すことができる場を用意し、時間をかけて、本人のニーズや話を聞きとることが重要です。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

A:本人が困っている様子(理解が追い付かない、コミュニケーションが苦手)があれば、それを丁寧に聞き取ります。その際に「君は発達障害があるんじゃないか?」というような言い方をすると、場合によっては、本人が「自分は障がい者じゃない!」と激しく抵抗を示す場合があります。そのような場合、先生はもちろん、支援担当部署とつながることも難しくなるでしょう。「障害」という言葉は使わず、「大学生活を送る上で、協力をしてくれる人がいるけど、一緒に相談に行かないか?」というように促すと、学生もまだハードルは低く感じると思います。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:支援を求める学生への窓口はどうしたらよいですか?

A:障害のある学生や家族にとってわかりやすい窓口を設置することは重要です。実際には、大学入学までは診断を受けたことがない学生、入学前から診断があっても大学ではとりあえずそのことを開示せずにやっていきたいと考える学生もいます。そのような学生にとっては、うまくいかなくなってはじめて相談する窓口は、学習支援の窓口だったり、就職相談の窓口だったりします。このような学生への相談対応の窓口のスタッフが、つねに障がい学生支援のスタッフともつながっていることが重要だと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q.:窓口では様々なスタッフが対応しますが、情報共有ができていなかったが故にトラブルになるケースもあるのではないですか?

A:特別のサポートを必要としている学生については、学内のどこでもそのサポートを受けられるよう、どの学生に対してどのようなサポートを行っているのかという情報を関係者で共有することが必要だろうと思います。例えば、ノートテイクをしていたら、隣の学生と私語をしているように見えて教員から怒られたなどといったことがないように、授業担当教員に伝える必要があるでしょう。その際、すべての情報を学部の教職員全員に伝えるという方法ではなく、必要な範囲の教職員に必要な情報を伝える(逆に言えばどの情報がどこまでの範囲に伝わっているかを該当学生に伝えられる)ことが大切かと思います。
 それ以外の場合については、私は情報共有についての過度の期待はするべきではないと思います。「何か変な学生」が授業を受けている、あるいは窓口にやってきたというときには、その場その場での対応を行うしかないのではないでしょうか。「〇〇障害を持った××さんだからこういう対応をしよう」というのではなく、話をする中である種の情報伝達方法が苦手そうだと感じたら、他の方法に切り替えてあげられるよう、教職員の側で、対応の引き出しを増やしておくという形で対応するのがよいのではないかと思います。

回答:吉永一行先生(本学法学部准教授)

進路

Q:卒業後の進路で、職場適応困難や、明らかに不利な状況が予測される場合にどうアドバイスしたらよいですか?

A:継続的に相談にのっていて、ある程度関係ができているのであれば、予測される状況を率直に伝えることがあっても良いと思います。学生から相談されていないが、教職員の立場から見て明らかに無理そうだ、という状況の時は、伝えようとしても伝わらないことの方が多いと思います。うまく行かない可能性が高いということを、感覚的に理解できるかどうかが一つのポイントになります。そのために、アルバイト、インターンシップなどを通して、うまくいくかどうかを体験してみることも有効でしょう。大学生活の中での失敗体験を、卒業後に予測される困難と結びつけて伝えることもよいと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:企業も厳しい競争の中にあります。企業が「雇いたい」と考えるようなスキルをどう身につけさせればよいでしょうか?

A:発達障害のある学生の多くは「できることとできないことの差が激しい」という特徴を持っています。その学生の「できること」、「得意なこと」は何かを在学中に見つけていくことが重要かと思います。また、せっかく「得意なこと」があっても、それを台無しにしてしまうような行動が頻繁に見られると、就職後もうまくいかない可能性が高くなります。その「台無しにする行動」をどうしたら減らせるかの工夫を考えることも、在学中の課題になるかと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:専門家の数が限られているとき、どのような学外の機関と連携したらよいでしょうか?

A:就職に関して、特に障害枠での就職を目指す場合は、障がい者就労支援の専門機関が利用できます。障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク(障害のある方の就職に関する専門官がいます)などが公的機関としてあげられます。発達障害者支援センターも地域の専門機関の情報を多く持っています。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

学内理解

Q:学生が発達障害について理解を深めるために何ができますか?

A:在学生全体が大学という環境を構成する要素になります。障害のある学生がピアサポート、インフォーマルなちょっとしたサポートを受けられやすくするために、多くの学生が発達障害について理解を深めることは意義があります、また、障害のある学生への配慮は、「特別扱い」ではないという理解を得るためも役立つでしょう(不公平だと訴える学生がいるかもしれないので)。
 理解を深める方法として、必修の授業として話を聞いても、積極的にそれを理解し役立てようとはならないかもしれません。その点、ボランティアで活躍する学生達の取り組みを積極的にアピールすることは意味があると思います。同じ専攻の仲間が、何か熱心にやっているぞ、ということに関心を持つ学生も多いでしょう。もちろん、学生向けの講演会なども効果があると思います。その際、ボランティア学生や、(可能であれば)障害のある学生自身の話などがあると、説得力が増すと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:どのように教職員全体で理解を深めていけばよいでしょうか?

A:FD、SDの研修会を積極的に企画していくことは重要だと思います。ただし、自由参加の研修会だけでは、なかなか全教職員が共通理解を持って、という状態にはならないと思います。教員が全員集まる会議の場で、短時間でも情報共有の場を持つことは有効かと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:情報共有のあり方は?

A:情報共有はその学生の意向を尊重することが原則になります。どの情報を、どの範囲まで開示するか、中心的に関わっている支援者と学生が相談して決めていきます。その際、どのような開示の仕方があるか、どこまで開示すればどのような支援が得られるのか、といった想定される具体的状況を伝えながら考えます。
 情報を伝えることで、多くの支援者が得られる一方、一部、誤解があったり、いやな思いをしたりする場面がないとはいいきれません。そのような可能性があることも現実として受け止めつつ、プラスの変化を大切にしながら前を向いて進んでいけるとよいなと思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

 現時点では、ボランティアセンターと教学センター、学生相談室、入学センター間での情報共有は頻繁に行われています。今後、理想の形としては、「委員会」や「チーム」という形でなくとも、少し気になる学生がいた時に、放置をするのではなく、ボランティアセンターや学生相談室に相談ができる体制を敷いていきたいと考えています。
 また、「どこの範囲まで共有をすべきか」ということが問題としてありますが、職員全員が知っている必要はないと思います。ただし、障がい学生がよく訪れる窓口に関しては、部内で統一した対応が取れるように、部内での情報共有、対応方法の統一は必須であると思います。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

本学の現状

Q:個別事例からノウハウの抽出は可能ですか?また、過去の事例の蓄積はしているのですか?

A:発達障害のある学生の場合、他の障害と違い、支援の方法が十分に確立されておらず、個々人の障害特性に合わせて支援を行う必要があります。本学でも、障がい学生の増加、とりわけ、発達障害のある学生の顕在化により、対応事例は増加していますので、過去の事例と共に、対応方法にも幅が広がるかと思います。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:本学の障がい学生支援で一番欠けている部分はどこでしょうか?

A:本学でも、障がい学生に対して支援を行っていますが、視覚障害、とりわけ全盲の学生に対する支援体制がまだ構築されていません。対応実績がなく、点字ブロック等の視覚障がい者に対するバリアフリーの環境もまだ十分とはいえません。全盲の学生の在籍や入学の有無に関わらず、大学は公共機関である以上、どの障害にも対応ができるキャンパスづくりを進める必要があると思います。また、立地条件等の問題で、重度の肢体不自由学生の移動に関しては、移動ルートに制限があります。
 他の課題としては、教職員への理解啓蒙が挙げられます。ここ数年、大きく改善されてきましたが、障がい学生支援の必要性を継続的に訴える必要があります。
 上記の課題に併せて、大学全体として、障がい学生支援の方向性が定まっていないことも大きな課題です。他大学を見ると、大学憲章で障がい学生支援の必要性について謳っている大学もあります。本学の支援体制は、十分な支援方針や理解啓蒙がなされていない状態で、障がい学生支援を行っているのが現状です。今後、このような根本的な課題にも取り組んでいかなければならないと考えています。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:本学の発達障がい学生はどのような障害を持っていますか?また教員に何を求めていますか?

A:現在、ボランティアセンターで支援している発達障がい学生の具体的な障害名は、広汎性発達障害、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、学習障害に分けられます。特徴は、個人によってばらつきはありますが、「読み書き等の同時並行作業が困難」「自分の思いや考えを理論立てて上手く述べることが苦手」「自分の話ばかりしてしまう」「こだわりが強い」「他者との関わりが苦手」「想いをうまく表現できない」など、一般的な発達障害の特徴と似ている学生がほとんどです。
 教員に「知っておいてほしい」というだけの学生もいれば、試験時に別室受験や時間延長が必要となる学生もおります。その際は、先生に障害の特性と併せて、配慮の必要性をご理解いただく必要があります。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:入学が許可される障害の程度には、本学として何か基準がありますか?

A:「入学が許可される障害の程度、種別」といった基準はありません。むしろ、定めることについては、人権的な側面からも問題があると思われます。現状としては、支援ができる大学とできない大学によって、受験者側が受験を諦めるか否かによるのが現状です。因みに、2012年度入試までの現状としては、全盲の受験生の場合、筆記試験を伴う入試では、点字試験を行っていないため、受験ができない状況です。
 本学でも、選択する学部によっては、対応がどこまでできるか本人や保護者と相談が必要なケースもございます。その際は、出願前に一度大学にお越しいただき、本人や保護者、入学センター、ボランティアセンター、学部教員と顔合わせを兼ねて、本学の入試制度やカリキュラム、支援制度について、説明をする機会を設けるようにしております。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:サポーターの募集・育成はどのように行ってますか?

A:ボランティアセンターでは、学期始めに情報保障サポーターの募集、説明会、養成講座、研修会を行っています。本学でも、障がい学生の数が年々増えていることを受け、サポーターの数も年々増加しています。実際にサポートに入る前に、以下のプロセスがあります。
(1)養成講座受講
  ↓
(2)トレーニング
(実際の講義で先輩サポーターと一緒にサポートを行い、自己評価、先輩評価を行う。3回ほど実施。)
  ↓↑
(3)トレーニングで書いたテイクの添削
(これの出来次第で、サポーターとしての採用を見送ることもあります。)
  ↓
(4)3回終えた時点でデビュー(一人でサポートに入れるかどうか)可否の見極め
  ↓
(5)デビュー(担当科目orピンチヒッター)
 サポートスキルも重要ですが、それ以上に障害理解を大切にしています。募集説明会の際、「アルバイト感覚」で来る学生はお断りをしております。夏季休暇中の研修会でも、スキルアップとあわせ、障害理解の講義、グループワークを取り入れています。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:本学の障がい学生支援に関する情報共有の現状は?

A:まず、前提として、ボランティアセンターですべての障がい学生を把握しているわけではございません。学生相談室や教学センターで、カミングアウトをする学生もおります。その場合、本人の了解を得た上で、情報共有を行う場合もありますが、本人がそれを拒否した場合、共有をしないこともあります。
 先生方への連絡に関しては、原則、何か特別な配慮や支援を必要としている学生に関しては、その学生が受講をしている授業やサポートを付けている授業の教員へ書面等でお伝えはしております。また、1,2年次は順調に単位を取得できていても、専門科目が増え、理解が追い付かないといったケースもあります。その場合は、3年次の時点でサポートを付けるといったこともあります。
 基本は、学生のニーズをベースに支援を組み立てており、学生が他の教職員への情報共有に抵抗を示す場合、必要最低限の関係者内での情報共有にとどめ、先生方へ連絡が行き届かないこともあります。
 情報共有の方法に関しては、学生によって方法が異なりますので、気になる学生がいる場合は、一度ご連絡を頂ければ、ご相談に応じさせていただきます。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

Q:本学の支援体制への満足度は100点満点中何点ですか?

A:支援体制への満足度は80点です。

  • 良い点は、ボランティアセンターがいろいろテイカーを募集して授業をサポートしてくれる点です。ほかにも他部署の職員さんたちが、例えば健康診断などの時なども私たちに説明文を渡してくれたり、テストの開始・終了時は、紙に文章を書いたり渡してくれたりして、英語の時は別室受験など色々な対策をしてくださります。その点は本当に感謝しています。
  • 改善してほしいことは、まず大学の中にどんな障がいをもつ学生がいるかを把握することが必要ではないかと思います。特に学生はほとんどどんな障害者がいるかを知りませんので授業の時にテイクをしているのを見て、「どうしてパソコンを使っているの?」など疑問に思っている人が多いと思います。ですから、こういう障がい者が大学にもいるということを知ってもらい、協力してもらうことが必要だと思います。

回答:北野美樹さん(法学部2年次・聴覚障がい)

他大学の現状

Q:進んでいる大学、進んでいない大学の事例はありますか?

A:あくまで私見ですが、進んでいる大学というのは、教職員や学生に、障がい学生が在籍していることが周知されていて、障がい学生が普通に大学生活を送っている大学であると思っています。本学では、現在17名の障がい学生に対し支援を行っていますが、他大学を見ると、100人ほど在籍している大学もあります。やはりこういった大学をみてみると、「障がい学生=特別扱い」という感覚があまりなく、教職員、学生共に「配慮することが当たり前」といった意識が浸透しているように感じます。
 また、大学によっては、専門部署に障がい者支援に精通した教員を配置して、支援方法の開発を行っているところもあります。
 これらは、もちろん、大学の歴史、風土、学部編成等に大きく影響されるので、一概に上記の形がすべていいとは思いません。本学の状況に合った形の支援体制を構築していく必要があると思います。

回答:井上友裕さん(ボランティア活動事務室職員)

発達障害に関する知識

Q:自閉症スペクトラム障害、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害はそれぞれどう違うのですか?

A:精神科医が用いる診断マニュアルで、自閉症とアスペルガー症候群を含む上位カテゴリーが広汎性発達障害です。自閉症とアスペルガー症候群の違いは、言語発達の遅れがあるかないかの違いです。ただ、これらを明確に分けて診断する必要があるかどうかについてはさまざまな意見があります。そのため、最近はこうした自閉症関連の障害をまとめて自閉症スペクトラム障害と呼ぶようになってきました。まもなく出版される新しい診断マニュアルでは、この「自閉症スペクトラム障害」が正式な診断名になる予定です。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

Q:総合的に物事を考える力をつけるにはどうすれば良いでしょうか?

A:特性として、多くの情報を総合的に理解し、考えることが難しい場合もあります。授業としての到達目標は維持しつつ、少しでもそういった力を伸ばせるような対応ができればそれに越したことはありません。たとえば、情報を統合する枠組みを提示する、関連のある情報を結びつけてまとまりが見えやすくする、とりあえず、情報の量をしぼって総合的に考える練習をする、といった対応があるでしょう。ただし、力をどこまで伸ばせるか、と考えると、限界もあるかもしれませんし、時間もかかるでしょう。工夫してもどうしても合格点を与える水準に達しないときは、単位が取れないこともやむを得ないという場面も出てくると思います。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

その他

Q:疑いがあるが、発達障害の診断がありません。本人、家族の理解(自覚)がないケースはどうすれば良いでしょうか?

A:まずは、本人が困っているかどうかを、関わりのある教職員が確認します。

1.本人が困っている場合

 困っているようであれば、その困っていることについて話をききます。話を聞いた上で、よりよい対応のために力になってくれる人がいるけど、一緒に相談しないかと提案します。
 「君は発達障害があるんじゃないの?○○に相談に行きなさい」といった対応は学生にとっても納得できないと思います。最初に声をかける人は、まず、話を聞くということが重要です。障害の専門知識があるかどうかではなく、困っていることについて親身に話を聞くということが重要です。

2.困るべき状況なのに、本人が困っていない場合

 本人が困るべき状況で困っていない場合は、今の状態を続けると、この先どうなるかについて具体的に伝えます。単位が取れない、留年する、卒業できない、といった具体的な見通しが持てていない場合もあります。それとともに、「心配している、どう思うか聞かせてほしい」、といった形で声をかけ、1.の状態につなげます。

3.本人が困っていなくて周囲が困っている場合

 不適切な行動等により周囲が困っている場合は、その不適切さと周囲の人がどう感じているかを率直に伝える必要があるでしょう。なぜ、不適切なのか、どのような行動が適切かを事実として伝えます。また、その不適切な行動によって、単位が取れない、思い通りに周囲が動いてくれないなど、結局は本人が困るという状況になることも必要かと思います。本人が困る状況になれば2.の状態につながります。

回答:高橋知音先生(信州大学教育学部教授)

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