京都産業大学 ミツバチ産業科学研究センター

本学が培ってきた動植物の育種研究とバイオテクノロジー技術を活用し、ミツバチに関する研究を推進。

ミツバチとハチミツの研究を通じて養蜂産業の活性化に貢献

 人の暮らしに密接しているにも関わらず、注目されることが少なかったミツバチ。しかし、近年のミツバチ不足の問題や自然環境保護のシンボルとして、その重要性が見直されるようになってきました。ミツバチ産業科学研究センターはこのような社会背景を踏まえ、ミツバチの品種改良、ハチミツの効能の解明などを通して、養蜂産業の活性化やさまざまな分野への貢献を目標に活動しています。

ミツバチはハチミツの生産だけではなく、私たちの食生活で欠かせない存在

セイヨウミツバチの女王蜂と
それを取り囲む働き蜂
(ローヤルコートと呼ばれる)

 ミツバチ産業科学研究センターは、総合生命科学部やその前身である工学部生物工学科が培ってきた動植物の育種研究やバイオテクノロジー技術を基盤とした、ミツバチとハチミツの研究によって養蜂産業の活性化をはじめ、さまざまな分野に貢献することを目的に、平成24年6月に開設されました。

 ミツバチと人との関わりは古く、エジプトやヨーロッパでは約5,000年前から養蜂が行われています。日本での本格的な養蜂業は明治初期にはじまり、これまで食糧生産など農業分野において大きな貢献をし、現在も農作物の約70%がミツバチによって受粉されています。このように養蜂産業は重要な役割を果たしていながら、他の畜産業に比べて支援体制が確立されておらず衰退しているのが実情です。さらに、後継者不足、原因不明のミツバチ減少の問題なども抱えており、このような養蜂産業の問題を解決することも大きな目的の一つとしてセンターは開設されました。

 そして近年、深刻化するミツバチ不足や、自然環境保護のシンボルとしてミツバチが注目され、国が養蜂産業の支援に取り組みだすとともに、企業もさまざまなプロジェクトをスタートさせています。当センターはこれらの動きと連動するために、センター内の研究にとどまることなく、国や自治体、養蜂産業関係者、企業などと積極的に連携していきたいと考えています。

ミツバチ、ハチミツの両面から実用的な研究をする貴重な施設

 センターの特長は、養蜂産業の活性化につながる実用的な研究を行っていることであり、ミツバチを対象にした研究とハチミツを対象にした研究の二つを研究の柱としています。一つの研究施設でミツバチとハチミツの研究を並行して行う研究機関は国内にはほとんどなく、そういった面においてもセンターの活動が注目されています。

 ミツバチを対象にした研究では、ミツバチの品種改良に取り組んでいます。ミツバチは女王バチが不特定多数の雄バチと交尾をするため、交配をコントロールすることが難しく、今まで「品種」が作られたことはありません。この研究を成功させるために、目的に合った遺伝子を持つ個体を選び出し、それらの間で交配を行う選抜育種と、DNAレベルでの育種を進めることが必要で、非常にチャレンジングな研究課題といえます。

 また、ハチミツを対象とする研究では、ハチミツの免疫機能に関する効果の検証と、ハチミツを利用した糖尿病への薬物効果の検証を行っています。

 これらの研究ではセンターに所属する研究者が自由に協力し合える体制になっており、センターで育てたミツバチから採れたハチミツの成分分析や、ある特定の成分を含むハチミツを作り出すミツバチの品種開発など、幅広く連携することが可能です。

センターの機能をより活用できるよう外部との連携・協働も積極的に

 このようなメインとなる研究の他にも、センターおよびセンターを含んで組織されるミツバチプロジェクトにおいては、以下のような活動にも取り組んでいく予定です。

(1)京都産業大学産ハチミツの開発

 本学が管理する養蜂場で採れたハチミツなどミツバチ由来のものを利用し、化粧品や治療薬など食品だけに留まらず、研究成果を活かした新商品開発を行いたいと考えています。また、企業等との共同研究にも積極的に取り組み、社会貢献を果たします。

(2)養蜂関係者等との連携・協働

 国内のミツバチ不足解決に向けた、安定したミツバチ生産システムの確立や、低農薬化による環境保全型養蜂様式の実用化などを、養蜂関係者や関連機関と協力しながら進めます。

(3)国産ハチミツの指標基準の策定

 国産ハチミツの指標基準を策定し、品質の安定化や安全性の向上、偽装問題の解決に貢献します。

(4)教育・普及活動

 養蜂に関連した機関、企業、学校などに、ミツバチ管理技術の提供をはじめ、ミツバチや養蜂産業への理解を深めてもらうことを目的とした普及活動、意見・情報交換会などを実施します。さらに学内・学外問わず、次世代の人材育成にも取り組みます。

 この取り組みの一つとして、「ミツバチ産業科学研究会」を設立。ミツバチ産業に関する最新情報を紹介する季刊誌『ミツバチ産業科学』の発行および研究大会(年2回)を開催します。

(5)自治体、企業との連携

 地方自治体や関連機関と連携し、ミツバチ、ハチミツを利用した過疎地域の活性化を図ります。

 また、さまざまな分野の企業と連携して、新しい商品や技術の開発を行います。

研究体制

センター長 野村 哲郎教授(総合生命科学部 生命資源環境学科)
センター員 竹内 実教授(総合生命科学部 動物生命医科学科)
松夲 耕三教授(総合生命科学部 動物生命医科学科)
高橋 純一准教授(総合生命科学部 生命資源環境学科)
研究内容 [ミツバチに関する研究]
◎新品種ミツバチの作出に関する選抜育種モデルの開発(野村教授)
◎DNA育種による新品種ミツバチの作出(高橋准教授)

[ハチミツに関する研究]
◎ハチミツの免疫機能に関する効果の検証(竹内教授)
◎ハチミツを利用した糖尿病への効果の検証(松夲教授)
施設・設備 センターの施設は新たに設置せず、総合生命科学部の実験室を中心に研究を行っています。また、大学敷地内にある国内の研究施設においては最大規模の養蜂場で、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチの飼育をします。

用語集

ミツバチ

キンリョウヘン(蜜蜂蘭)に
訪花するニホンミツバチの雄蜂

 一般的にミツバチ科ミツバチ属に属するハナバチの総称で、世界で9種が知られている。欧州からアフリカに1種、アジアに8種が自然分布しているが、世界的に養蜂種として利用されているのは欧州原産のセイヨウミツバチApis melliferaである。日本には、在来種のニホンミツバチA. cerana japonicaと養蜂種として明治時代にアメリカ経由で持ち込まれたセイヨウミツバチが生息している。

養蜂様式

 日本では、地域の特性に合わせて確立された2種類の養蜂様式が存在する。花の開花に合わせて移動し、万邦に冠たるとまで言われた転飼養蜂と、一ケ所にとどまって行う定置養蜂である。また都市部や商業地域のビルなどの屋上に巣箱を置く都市型養蜂も各地で見られるようになってきている。

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