アメリカ・NY州立大学ストーニーブルック校(派遣)

外国語学研究科 英米語学専攻 斎藤 明良さん

留学種別:派遣留学
留学先:アメリカ・ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校
留学時の年次:M2
留学期間:2004年8月〜2005年6月

留学体験レポート

 私は2回生の秋学期から約10ヶ月間、派遣留学を通してアメリカのニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に語学留学しました。大学の敷地内にあるそこで、日本人や韓国人、中国人、フランス人、スペイン人、イタリア人など様々な国の人々と共に英語を学びました。午前中は固定されたプログラム(リーディングやライティングなど)で午後からはセレクティブクラスといって、それぞれの用途にあった英語(TOEFL講座やビジネス英語)を学びます。生徒は入学時に受けるプレイスメント試験でクラス分けされ、そこで1セメスター間授業を受けるというシステムです。

 私にとって留学はもちろん海外に行くことすら初めての経験で、出発日が近づくにつれて期待は不安へと変わっていきました。留学を決めたきっかけは、将来の夢である英語教師になるための「語学力の向上」にあった。英語教師なのに英語が話せない、海外に行ったことがないというのは致命的だし、英語を学ぶ楽しみを生徒に伝えられないのではないかと思ったからです。

 アメリカに着いた初日は自分のふがいなさに愕然とする日でした。空港に着き、そこからリムジンバスを電話で呼んで大学の敷地にある寮へと向かうことになっていたのですが、電話のかけかたも分からず、また人に尋ねる英語すらままならない状態で、結局2時間以上も空港で立ち往生していました。なんとか助けを借りて寮に着き、ルームメイトが日本人であることを聞かされ、ホッとする自分にもすごく腹が立ちました。出発前、アメリカ人のルームメイトと楽しく英語を使ってお互いのことを話しているという理想は見事に崩れてしまったのです。学校入学前のガイダンスでは何を言っているのかさっぱり分からず、クラスメイトとの会話でも分かったふりをしている自分がだんだんと嫌になり、改めて自分の英語力のなさを実感しました。

 それからはとにかく毎日を英語漬けにしようと決心し、授業では進んで発言したり、先生が言ったフレーズで使えそうなものはすぐにメモをとったり、家に帰ってテレビを観て耳を慣らしたり、ルームメイトを変えるために引っ越しもしました。それができたのは自分の努力だけではなく、周りの環境にありました。クラスメイトが積極的に知らないアメリカ人に話しかけて会話をする姿や、夜遅くまで図書館に残って勉強する姿を目の当たりにして、自分のモチベーションが高まったからです。これはやはり、日本では経験できないことだと思います。

 英語が伸びてきていると実感したのはそれから5ヶ月ほど経ってからのことでした。何気なく見ていたテレビがおもしろいと感じたり、友達と電話で会話をしていたり、たまに見る夢で自分が英語を使っていたりすると自分の努力が評価されたようで嬉しくなりました。私の留学生活で大きく変化したのはそこからです。積極的にマンハッタンへ買い物に出かけるようになり、カリフォルニアで3週間のホームステイも経験しました。毎日がとても充実していました。自分自身に足りなかったものは英語力ではなく留学を楽しむことだったのかもしれません。英語を使うというのはあくまでも何かを達成するための手段であり、ゴールではありません。私は英語が話せるようになりたいということにとらわれ、周りが見えなくなって留学の本当の楽しさを見失っていたのです。いろいろな人との出会いや、見たこともないような景色に感動し、自分の人生を豊かにすることが留学の本当の目的であるように今は思います。

 この留学経験はあらゆる場所に生かされています。教員採用試験に向けて勉強していた時も「留学中にあれだけ頑張れたから、今回もきっとできる」と自分を鼓舞し、自信にもつながりました。試験当日の面接でも胸を張って留学で学んだことを伝えることができました。そして今、講師をしている中学校では英語の授業中に留学の話をすると、生徒は目を輝かせて自分も海外に行ってみたいと興味を持ってくれます。もちろん生徒達に英語力をつけることは重要ですが、そのように異文化に興味を持つことはさらに重要なことだと考えています。私は正直なところ、絶対に英語を学ばなければいけないとは考えていません。将来全く使わない人もいるだろうし、それ以外にもっとやりたいことがある人もいるかもしれないからです。しかし、英語の教師には英語を学ぶことの楽しさや、それを使っていろいろな文化や価値観を共有することができる素晴らしさを伝える義務があります。そういったときに私の経験した留学は、自分の授業をひと工夫、ふた工夫してくれる大きな財産となりました。人生を大きく変えてくれたこの留学を是非みなさんも経験してほしいと心から思っています。

PAGE TOP