藤田麻希(ドイツ)

パッサウ大学留学体験記

ドイツへの出発

 2005年8月30日私はドイツへ向けて出発しました。一人での空港移動など初めてで本当に不安でした。しかし幸運にもパッサウへ着くまで周りの人に助けてもらうことができました。
 まず飛行機で乗り換え地までは隣になったスペイン人の旦那さんと日本人の奥さんの夫婦に何かと助けてもらうことができました。飛行機の中でも楽しく話しをすることができ、乗り換え便の搭乗口まで連れて行ってもらいました。乗り換え地からミュンヘン空港へは日本人夫妻の方と一緒になり搭乗するまで少し話をしていたのでそこまではまだ本当の一人ではありませでした。
 遂にドイツ到着。ミュンヘン空港へ着いた時は既に夜8時ごろで、その日は近くのホテルで1泊しました。実はタクシーでこのホテルに着いたときからがドイツ文化とドイツ語との戦いでした。例えば、日本みたいにホテル周りにコンビニがあったりお店がずっと開いていないということをすっかり忘れていて、飲み物を持っていなかったのでしょうがなくホテルのバーで買ってきたり、買ったその水がその時はまだ慣れない炭酸入りだったりと・・・。翌日空港から出ているFreising駅までのバスに乗るために再び空港へ向かいました。わたしはどこからバスが出ているのかも知らなかったのでとにかくホテルのバスの運転手さんに聞いてみると、親切にもそこまで送ってくれました(乗客が私一人でしたし)バスに乗り無事Freising駅に着いたのもつかの間パッサウへの電車の到着ホームが2番か3番ホームだったので重い荷物をもちながらの移動をしなければなりませんでした。周りには誰もいなくて、実はホーム移動のエレベーターがあることにも気づかず一人で階段を荷物とともに上り下りしました。翌日脚にアザができていたのがいい思い出です・・・。しかしFreisingからPassauまでの電車の中はわくわくしていました。着いた時パッサウに住んでおられる日本人の方が迎えにきてくださっていて、この日泊まるホテルまで連れて行ってもらったりしました。実は寮の入居日や鍵受け取りについて少し勘違いをしていてこの日はホテルに泊まりました。翌日、その時パッサウにいなかったチューターが友達に頼んで、わたしがこれから参加するサマーコースに連れて行ってくれるという約束をしてくれていたので予定通りホテルからサマーコースの行われる大学まで連れて行ってもらったのですが、なんとサマーコースのテストが始まる直前で訳も分からないまま初級コースではなく中級コースのテストへ参加し、そのままそのメンバーで大学散策をしました。正直みんなが何を言っているのか分からなくて真っ白でした。夕方まで一旦自由になったので荷物を預かってもらっていた大学内の事務所に行くと、このサマーコースに参加していた日本人の女の子二人に出会いました。無事中級から初級への手続きの間違いを直して荷物を置くためにも寮の手続きをしに行きました。私はサマーコース管轄の部屋ではない大学直属の寮に入居するので早速その事務所へ行ってみると、この日は休みになっていて困っているとたまたま事務所前の廊下を通りかかった方に事情を話すとその方が代わりに手続きを手伝ってくれ無事鍵をもらうことができました。
 そこから寮(Leonhard-Paminger Strasse)までの行き方を聞いて行ってみたのですが、その事務所から病院までバスに乗ったのはいいのですがそこから歩いて急な坂を重たいスーツケースとリュックサックを押しながら特にこの暑い日に上ったのはつらかったです。
 今思えば別のバス停のバスに乗ればすぐに着くことが出来たのにと思いますが・・・それも日本人の友達に助けてもらいながらなんとか着くことができました。
 わたしのこの留学の中で一番緊張して不安だったのは日本出発から寮到着まででした。
 それからは、確かに大変なこともありましたがパッサウに着いてしまえば周りの人や友達に助けてもらいながら乗り越えることが出来ました。

サマーコースについて

 大学での授業が始まる前に9月から1ヶ月間は午前中はサマーコースの授業、午後はサマーコース主催の企画に参加したり週末もそういった企画に参加しました。企画の中には例えばバイエリッシャーバルト、ザルツブルク、映画を見たり、ドナウ川のクルージング、オクトーバーフェストへ行ったりなど本当にたくさんの企画がありました。またサマーコースで友達になった仲間とオーストリアへ国境を越えてのサイクリングをしにいったり他の友達はサッカーをしたり、友達の家にお邪魔してみんなでパーティーをしたり、パッサウ版ミニミニオクトーバーフェスト(dult)が1週間ほど開催されていたので行ってみたり・・・。毎日が新しいことの連続でした。
 この期間は夏休み期間中ということもあり大学は全体的に閉まっている状態で学生も実家に帰っていたのでその時は友達というとサマーコースの同じドイツ語を習う外国人だけでした。みんなの会話では英語も必要になる時がありドイツ語もしゃべれない、英語もできないという状況に落ち込むこともありましたが最後にはみんなと楽しく間違っていても会話できていたと思います。

サイクリング

船上


オクトーバーフェスト(昼)

オクトーバーフェストで


パッサウ大学について

 パッサウ大学は新しい大学で、敷地も広くイン川沿いに建っています。私のいた寮から大学までの道のりは二通りあり、主にドイツ語コースの日は中心部に向かう道を行けば自然に大学のSprachzentrumに着きます。Innstrasseを渡った建物では主にメンザ・スポーツセンターがあるのでそちらへは寮から下り病院のある通りから行っていました。ここも徒歩20分くらいでした。大学にはいくつものカフェや自販機があるので一日中いても友達と話したり図書館へ行けば退屈しませんでした。芝生では暖かくなるとみんな日光浴をしたり読書をしたりスポーツをしたりしていました。メンザは確か11時半から2時くらいまで開いていました。とても広くそこで色々な友達にあったり、地域の人もここで食事をすることができるのでたまに知らない人と話したりということもありました。食事の後は時間があると決まってメンザの二階にあるカフェやその近くの芝生にいました。用が無くてもそこにいればいろいろな人との交流が出来ます。みんな講義などが無い時間は芝生やいたるところにあるベンチなどで休憩をしたり勉強したりしていました。また大学のスポーツセンターではほとんどのスポーツが無料でできました。わたしは夏学期フィットネスに通っていましたが、特に規制がなく行きたいときにいけばいいもので楽しかったです。友達は乗馬に挑戦していてこれは少しお金がかかるものだったみたいですが車に乗せてもらい乗馬のできるところで練習していたようです。スポーツだけでなく合唱のクラブもあったので冬学期参加していました。周りはほとんどドイツ人ばかりで慣れない頃は緊張していましたが、実際にミサに参加して歌うことができたのですごくいい経験になりました。
 大学では講義を受けるだけでなく講義・スポーツ・メンザ・カフェなどを通しての新しい友達との出会いがあります。

10月のイン川

3月のイン川


パッサウ大学

パッサウ大学


授業について

 私の授業の中心となるのはもちろんドイツ語コースでした。これは自分のレベルに合わせて好きなコースを選ぶことが出来ます。わたしは冬学期1つしかとっていなかったので、もっと選んでおけばよかったと少し後悔しました。先生はみんなやさしく色々相談にも乗ってくれます。学期の終わりには先生とも大学からすぐのカフェへ行ったりして、クラス全体がとてもいい雰囲気でした。ドイツ語に慣れれば講義も受けました。さすがに授業のすべてを理解すると言うのは難しいことでしたが内容も含めドイツの授業の雰囲気を味わう絶好の機会だと思います。講義によっては事前に登録しないといけないものもありましたがそうでないものばかりに私は通い、時間が空けば友達ともぐりをしていました。

友達

カフェ


メンザ


パッサウでの生活

 パッサウに着いて生活する上でまずしたことは外国人局での必要書類の提出です。サマーコース中時間があるうちに滞在許可取得のために何が必要かまずは質問してからそこで転入届の用紙と滞在許可の用紙をもらいました。滞在許可のためには銀行での口座開設が必要だと聞いたり、しかし事前に調べた情報では口座開設には滞在許可や大学の入学証明が必要だったりと情報が混乱してよくわからないままでしたが、滞在許可の用紙をもらった後日友達が銀行に行くのに付き合った時ついでに聞いてみたところ幸運にも入学証明などなくても係りの人の計らいで開設することができました。サマーコース後大学では外国人留学生のために大学入学許可の手伝いや滞在許可の用紙記入を手伝ってくれるところがあったのでそこですべて解決することが出来ましたし、それまでにも健康保険に加入していたりしたのでスムーズに手続きを進めることができました。心配性から質問したり先に手続きにいってみたりしましたがそれが反対によかったのかなと思います。そして何よりも、銀行・健康保険・外国人局の係りの人が親切だったのが一番だと思います。
 買い物についてですが、寮の位置によって行くスーパーは多少変わりますがみんなほぼ同じ所を利用していたと思います。寮から徒歩5分のところにスーパーがありそこには靴屋、服屋、郵便局やパン屋があったのでとても便利でした。また大学からの帰り道にもスーパーがあったのでそこも利用していました。寮の位置によっては徒歩でとても大きなスーパーにも行けますが、わたしの寮からは少し遠かったので行きたい時は友達に車で連れて行ってもらっていました。
町にはいくつかの映画館もあり、ちょうど帰り道に二つ映画館があったので授業終わりにいったりしていました。去年できた大きなプール施設もあります。またわたしがいた頃はまだ工事中でしたが大学前にある大きなバスターミナルのところに新しくビルが建つようです。聞いたところではデパートらしいです。 また中心部だけでなく、観光客でにぎやかな旧市街も歩いて行けますし日本にはない町並みを味わえます。クリスマス前にはドーム前でクリスマス市が開かれますしたくさんのカフェやお店があってかわいいところです。


 バス停にいたり、町で歩いていると色々な人と話す機会がありました。残念ながら特にお年寄りの方はバイエリッシュがきつく何を話されているのか全くわかりませんでしたがそこからバイエリッシュを単語程度ですが習ったりすることができました。ドイツ語とはまた全く別の言語だと思いました。ミュンヘンでもそうですが、反対にバイエリッシュを知ることも楽しみの一つでした。ミュンヘンと言えば、パッサウから電車で2時間ほどです。パッサウは小さな町なので退屈したときにはミュンヘンはもってこいです!バーンカード50(通常料金の半額になる)を使ったり、バイエルンチケットを利用すれば一番安くて一人5ユーロでミュンヘンへも行けます。これは25ユーロのチケットで最高5人までの人数でバイエルン内一日利用できます(少し規制もあるみたいですが)なので特に週末のパッサウ駅内は「あなたもミュンヘンまで行きますか?」という声が飛び交っています。わたしは夏学期の週末となると、ミュンヘンに知り合いの方を尋ねて観光、買い物をしました。オペラ・バレエを見たりビアガーデンにいったり湖に泳ぎにいったりしました。私にとってミュンヘンはパッサウの次に親しみのある都市です。普段はゆっくりと大学生活を送り、息抜き程度にミュンヘンへすぐに行けるというのもパッサウの魅力だと思います。
 またザルツブルクへも確か車で1時間半ほどでいけます。友達の車でザルツブルクへちょっと行ったりチェコにも行きました。寮の友達はチェコの方が物価が安いのでちょっとチェコのスーパーで買い物をしてくるから何かいるものはないか?といっていました。国境の町とは聞いていましたが他の国へ歩いてもいけるのには驚きました。

パン屋さん

スーパー


ドーム

歩行者天国


 

寮について

 私はLeonhard-Paminger Strasseの寮にいました。ここには寮が連なっていて建物は可愛い5階建ての家と言った感じでそれがいくつも並んで建っていました。わたしの階には私を含め8人が住んでいて、みんなで共同の台所を使っていました。一人一部屋でそこにはトイレとシャワー・洗面台がついています。 共同の台所では冷蔵庫も共同で、ドイツ人学生の食生活なんかも見れたりします。ラッキーだと誰かがご馳走してくれたり反対に日本食を作ってみたり、そのままずっと台所で話していたりしていました。ほぼ毎日みんなに会うのでここが一番のドイツ語の練習場でした。 部屋のドアの向こうにはすぐみんながいて、一緒に部屋で映画を見たり、理解できない場面について説明してもらったり、誰かの誕生パーティーをしたり、射撃場やプールにいったりスペアリブを食べに行ったり・・・。ここには本当に多くの思い出が詰まっています。 また他の棟の友達のところへ遊びにいったりものを取りに行ったりできるくらい寮が集まっていて楽しい場所だったので、知らない人とも挨拶するくらいでした。
 わたしの寮には管理人さんの事務所があり、他の棟の人とも共同の洗濯機があったり、パーティールームがあったりと何かと便利な場所でした。毎週火曜日にはパーティールームでパーティーがあり、時間があればちょっと行くことでさらに友達の輪が増えます。サルサパーティー、グリルパーティー、カクテルパーティー、キッカーパーティーなど。
ワールドカップの際は大学に大型スクリーンが設置されたのでみんなで試合を見たり、一方この寮にもスクリーンが設置されたのでみんなで見ました。勝った試合の後は予想通りパーティーでした。
掃除などについては、掃除機は各階に一台掃除機がありましたし、台所のごみの分別は学生の仕事でした。毎週当番が決まっていて、その当番の週は台所のベランダに集めておいたビン、空き缶、プラスティックや生ごみを寮の前に設置されている大きなゴミ箱に分別をしにいきます。寮なので一般の家庭ほど厳しくはなかったですが、それでもビンは色別だったり紙も燃えるごみとはまた別に分別するのはドイツだなぁと感じました。


 帰国に近づいてくると、荷物を日本に送ったり、転出届を出したりと色々忙しくてなのかはわかりませんが、この留学生活が当たり前になっていたのでみんなと別れるという実感があまりありませんでした。それでも寮を出る前日のパーティーでは寂しくなっていました。それまで特に寮のみんなは私にとってお兄さんお姉さん,時にはお母さんみたいだったり、一緒に生活をしてけんかも時にはしたりとずっと一緒だったので、離れてしまうということが不思議でした。


 ここに書いた以外にも本当にたくさんの思い出や面白い話がありますが、やはりそれはパッサウで実際に自分で体験しないとわからないことばかりです。ドイツ人の友達や日本では絶対に知り合えない世界中の友達によって今までの考え方、世界の見方が変わったりもしましたし、何よりも彼らに出会えたことが本当に幸せです。
始めは一人だという不安ばかりでしたが、反対に一人でもなんでもできるようにということを目標に毎日の生活を楽しみました。実際には周りの方に助けてもらってばかりでしたが、それでも留学する前よりは色々な面で勇気を持つことが出来たと思います。
 パッサウに留学することができ、親や先生方、ドイツで知り合った方々に感謝しています。

寮

台所


みんなと

みんなと


外国語学部ドイツ語学科
藤田麻希

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