■人権講演会「きこえない世界ときこえる世界」

2004.12.03

  人権委員会主催の16年度第2回人権研修会が
12月3日、図書館ホールで開かれ、教職員・学生約
60人が参加した。 「きこえない世界ときこえる世
界」〜聾・難聴・中途失聴−差異と平等〜と題して上
農正剛(うえのう せいごう)九州保健福祉大学社会
福祉学部専任講師が視聴覚障害児教育の諸問題につい
て講演。聾と難聴は違う。聾の場合はスムーズにコミ
ュニケートできるのに難聴の場合は容易ではない。難
聴は、決してきちんとは「聞こえていない」のに健常
者からは「聞こえているはず」と思われがち。それば
かりか難聴者同士とも通じ合うことが難しい。意思の
疎通がはかれない、言語を獲得できないという苦しさ
が孤立感をも伴いやすい。 
  なぜこうなるのか。‘難聴’と診断されて通常の
学校に行く生徒は、医学的治療として医者からも親か
らも音声による言語コミュニケーションの習得を強要
されて取り組んでいく。しかし、立場に立てば、医療
的側面に頼ってばかりでは問題解決にはならない。例
えば、英語を母国語としない人がnative(ネーティ
ヴ)と会話して十分に通じ合わない場面などを想定す
れば理解できるはず。文化的視点から解く必要もある
と説く。
  最後に、難聴者に有効な手話を紹介したうえで
「マイノリティがもっとも必要とする言語に理解を」
と強調した。

上農正剛(ウエノウ・セイゴウ)さん
九州保健福祉大学社会福祉学部専任講師
1954年熊本市生まれ
早稲田大学文学部卒業後、聞こえない子供の個人指導
に(学習・言語指導)に17年間従事する。その間、聴
覚障害児を持つ親を対象にした「難聴児学習問題研究
会」を主宰。
 ろう・難聴教育研究会(旧トータルコミュニケーシ
ョン研究会)運営委員。近年は障害認識ならびにリテ
ラシー論に関する講演多数。
 1999年から2003年まで九州保健福祉大学保健科学部
言語聴覚療法学科専任講師。2004年より現職。担当講
義「哲学」「生命倫理学」「障害児教育」等。
著書2003年『たったひとりのクレオール』(ポット出
版)、論文2003「医療の論理、言語の論理」現代思想
11月号他


「聞こえない」のに「聞こえているはず」という視線の中で、生きていかざるを得ない子どもたちの苦しみを紹介する上農さん
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