法学部専門教育科目「公法特殊講義(テロ対策と法)」公開シンポジウム

2009.12.05

 12月5日(土)、本学にて、法学部専門教育科目「公法特殊講義(テロ対策と法)」の公開シンポジウムが行われた。

 この科目は、慶應義塾大学と警察大学校が共同で設置している「市民生活の自由と安全」研究会の協力のもと開講されたもので、安全・安心な社会の実現にとって重要な課題の一つである「テロリズム対策」を多角的に学ぶリレー講義である。これまでの講義では、アメリカなど諸外国のかかえる問題を、主として憲法学の視点から検討してきた。今回のシンポジウムは、日本におけるテロ対策に焦点をあて、欧米と比較して考えるという趣旨で企画された。
 
 はじめに、警察大学校警察政策研究センター所長の金山 泰介警視監が、「日本のテロ法制」と題する基調講演を行った。金山氏は、爆発物取締罰則から最近の出入国管理法改正まで、日本で現在適用されているテロリズム対策の諸法令について、その沿革をたどり、それらの立法が行われる背景となった日本のテロ犯罪を写真などを用いて分かりやすく説明した。

 ついで、「市民生活の自由と安全」研究会の代表でもある慶応義塾大学法学部・法科大学院の大沢 秀介教授と小山 剛教授からコメントがあった。大沢教授はアメリカ憲法学で論じられている問題にそくして、(1)テロ対策の事前予防的性格が国家権力の抑制をもとめる自由主義的国家観に重大な挑戦となっている。(2)国家がテロ対策に取り組むことが正当であるとしても、安全と自由との最適なバランスを考える必要がある。(3)そのようなバランスを取るために裁判所による合憲性審査の役割が重要であるが、違憲審査のあり方に困難な問題が横たわっている。(4)テロ対策のためのデータ蓄積に対して、裁判的統制・民主的統制のほかに行政内部での統制が必要である。などを指摘。小山教授は、テロ対策のための規制を4つのタイプに分類した上で、憲法上の限界をドイツの憲法判例を参照に検討し、テロ対策のための情報収集・分析について、日本法におけるルールが不明確であるという問題点を指摘した。

 パネルディスカッションは、本学学生を中心とする聴講者から寄せられた多くの質問に答える形で進行され、警察と他の機関との連携、日本と米・独とのテロ対策法制の相違点、情報収集作用の統制、工作員対策、オバマ政権のテロ対策の行方など、多岐にわたる議論が行われた。
パネルディスカッションの様子
金山氏の基調講演
コメントする大沢教授
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