2021.10.27
特集誰もが気になる心理学。筆跡だけで内面までお見通し?!【前編】

京都産業大学の卒業生に「筆跡心理士」というあまり聞き覚えのない職業をされている方がおられます。いったいどんな職業なのでしょうか。筆跡からその人の心理状態が分かるのでしょうか?今回、筆跡心理士の前原弘昌さんに、インタビューしました!
前編となる本記事は、前原さんが筆跡心理士となる前の波乱万丈の前半生について話を聞きました。
卒業前後は教師を目指していた

1952年、岡山県生まれの69歳。名刺の肩書は「筆跡心理士&バイク冒険旅行家」とあります。バイク冒険旅行家とはなんでしょうか?
「今までにオーストラリア大陸、北米大陸、ヨーロッパ、モロッコなどをバイクで一周し、その体験日記を『自由じかん』というシリーズの本にしてるんです」とのこと。2019年3月には関西テレビの「となりの人間国宝」で筆跡心理士の仕事と、バイク旅で世界各地の大陸横断をした話も紹介されました。どうも、なかなか型破りな話が聞けそうです。
「私は1975年の京都産業大学経済学部卒業生です。学生時代はESS(京都産業大学英語研究会)に入っていましたが、実は小学生の頃、ある出来事がきっかけで対人恐怖症になり、人前で話すのが苦手。そんなこともあって、新聞(のちに雑誌)を作るセクションで活動していました」と話す前原さん。現在の流暢な語り口調からは想像もつかない話です。
「学生時代は将来の職業についてもあまり考えていませんでしたね。3年次生の頃、たまたま叔父さんが警察官をしていたので、警察官になろうかなと言ったら、アンタは無鉄砲だから命がいくつあっても足りない、と母親に反対されてあきらめました」と笑う前原さん、次に目指したのは教員だったそうです。「ところがその時すでに4年次生、そこから教職の単位を取るのは大変なんですよ。それでも必要な単位はすべて取りました」。あと残すは教育実習のみとなったのですが、なんと卒業に必要な単位をすべて取得してしまっていたので、大学を卒業することになってしまったそうです。そこで卒業後はバイトをしながら、他大学の通信教育で教育実習の履修を目指すことになります。
入社先で役員にまでなるが、次第に理想が失われる
そのときにはすでに結婚し子どもも一人いて、高収入で生活は安定していたそうです。
「だから辞めるのには勇気がいりました。でも、自分の生活のために人を泣かせるような仕事を続けていてよいのか?それは違うだろうと思いました」と前原さんは語ります。
仕事がみつからないまま、バイクで日本一周の旅へ
そして、「俺は今まで何をやってきたんだ?何のために生きているんだ?何のために仕事しているんだ?という気持ちになったんです」。心理学的に考えると、このような状態に陥るのは、自分の生き方に目覚めて自己改革をするか、うつ病になる予兆なのだそう。「しかし、そこで思ったんですよ。ナナハンで日本一周できたらなぁと」。そんな思いがどんどん募っていった前原さん。
「その日から“行きたいなぁ、でもなぁ”という考えが頭から離れなくなった。“でもなぁ”の後ろに続くのは、必ず否定語や、できない理由でした。金がない、時間がない、妻子がいる・・・。ところがやりたい気持ちがどんどん膨らんで、その気持ちの方が大きくなったとき、考え方が全く変わってしまうことに気付きました。
今までは、“でもなぁ”だったのが、“どうしたら”という、できる理由を考えるようになりました。マイナスのことは同時にプラスでもあるのだと気づいたのです。金が無いは、借りて返せばいい。時間が無いは、今は失業中なのでラッキー。妻子は、しばらく実家にいてもらうことに。すると、両親の手伝いにもなるし、おじいちゃん、おばあちゃんも娘や孫と暮らせて喜んでくれる。それは親孝行だ!と。ちなみにこの時、私は心理学などまだ知らなかったのですが、これがうつになりかけていた自分を脱出させるきっかけとなり、32歳の初夏に『バイクで日本一周』の夢を実現できたのです。その後38歳でオーストラリア一周、43歳で北米大陸一周、49歳でヨーロッパ・モロッコ一周、56歳で南米ペルーを走破し、現在最後のアジア大陸走破を目論んでいます。」
※ナナハン……排気量750ccの大型バイク。当時の若者のあこがれの存在だった。
心理学に興味をもち、心理学方面の仕事へ
「苦しまぎれの心理状態のとき、自分の気持ちを、本当にやりたいことに向け、実現させていく」。この経験は、前原さんがこのあと心理学の仕事をしていくことに結びついていったそうです。
バイクの旅から帰り、心理学にはまったきっかけは昔の仲間が連れて行ってくれた心理学のセミナーでした。行ってみたら面白くてはまり、その後いろいろ学んでカウンセリングの協会を立ち上げるなど、心理学方面の仕事をしていくことになります。そして20年前に筆跡診断と出会い、13年前に1級筆跡心理士の資格を取り、指導的立場で仕事をするようになりました。20年前というと、前原さんが49歳の頃です。人生、何歳になっても新たな学びや転換点があることを教えてくれています。
後編では、「筆跡心理士」のお仕事についてお聞きし、実際に学生広報スタッフも筆跡診断をしてもらいました!