2023.12.30

特集

実は知らない出身地域の歴史。地域文化を学ぶ「民俗学」が面白い!文化学部・村上 忠喜 先生インタビュー

インタビューに応じる村上 忠喜先生

本学に在籍されている先生方の研究分野は多岐に渡ります。幅広い分野の第一人者である本学の先生方に、ご自身の専門分野について詳しく教えてもらうシリーズ。今回は、文化学部長の村上 忠喜先生にお話を伺いました。村上先生は民俗学がご専門で、衹園祭の保護活動に深く携わっておられます。村上先生の実体験を交えながら民俗学の面白さに迫ります。

これまでのご経歴を教えてください。

同志社大学文学部を卒業し、佛教大学文学研究科博士後期を満期退学しました。専攻は民俗学です。その後、日本たばこ産業株式会社(JT)の「たばこと塩の博物館」で在外研究員として、中米のグアテマラ共和国で働いていました。帰国後、知人に誘われ京都市へ専門職として入職し、20年間勤めました。主に、文化財保護行政の現場で民俗文化財担当として衹園祭の保護に携わりました。現在は京都産業大学の教授になり6年目です。
マヤの女性たちに料理教室を開く村上先生(後方扉前)(グアテマラ共和国ソロラ県コンセプシオン村 1992年)

「民俗学」とは何ですか。先生はどのような研究をされていますか。

民俗学は、庶民の生活・文化における発展の歴史を研究する学問です。
中でも、私は日本の祭礼文化、住居、民俗文化遺産が主な専門で、それを生かし、京都市勤務時代に、衹園祭のユネスコ無形文化遺産の登録申請の準備を行いました。また、衹園祭の山鉾(やまぼこ)の一種である大船鉾(おおふねほこ)と鷹山の復原、後祭の復興、宵山の成立などに尽力しました。
現在は、100周年を迎えた衹園祭の山鉾連合会の組織的な変化について研究しています。過去100年どのように課題を乗り越えてきたかを調査することで、未来100年の課題に対処できるような都市の大規模祭礼を保護する制度が考えられるのです。
山鉾連合会の過去について振り返る村上先生

そもそも民俗学に興味を持ったきっかけを教えてください。

私は京都府京田辺市の、代々続く旧家の生まれでした。今思えば、伝統的で結束力が強い環境で育ったことから、村落社会や地域の伝統などに興味があったんだと思います。
大学時代、1年次の夏休みに民俗学研究会で先輩たちに連れられ、滋賀県長浜市で村落調査を行いました。それが初めて調査という形で地域社会に関わった経験で、以来、民俗学に興味を持つようになりました。

村上先生のゼミの学生は、どのように民俗学を学んでいくのですか。

ゼミでは、1・2年次でまず自分の出身地の歴史について調べます。これは、みんな意外と知りません。歴史を知ることで、地域の文化に歴史的な背景があることが分かります。
他には、ゼミの学生全員で小豆島を訪れ、現地の方に直接お話を聞くフィールドワークも行っています。現地の食やお祭り、農業・漁業など、ヒアリングを重ねていくと、自然環境や社会組織、家族関係などが、背景に見えてきます。小さなコミュニティを調査することで、さまざまな要因の関わり合いが見えやすく、勉強になります。
夜念仏に同行し、参与観察調査※を行う村上先生(手前中央)とゼミのメンバー(小豆島・伊喜末地区 2023年)
 ※参与観察調査:社会調査の方法の一つ。調査者自身が調査対象である社会や集団に加わり、長期にわたって生活を共にしながら観察し、資料を収集する方法。

その後は、学生各自でテーマを決めて、そのテーマの歴史を調査します。現在ゼミに在籍している学生のテーマは、京菓子、喫茶店、サウナ、お墓、笑いの文化など多岐にわたります。私は、これまでの調査の経験から、学生一人一人のテーマに合わせた調査方法などをアドバイスしています。
 
先に地域についてのフィールドワークを経験することで、自分のテーマに取り組んでいる際にも地域の自然環境や社会など、背景にすぐ目がいくようになります。
「今のサウナのはやりは分かりませんが、岩風呂や古代のサウナなら分かるので教えています」と村上先生。

例えば、私の出身地である大阪府島本町は、昔はどんな地域だったのでしょうか。(新谷)

島本町は、農民が多い地域だったといえるでしょう。ちょうど京都と大阪の真ん中に位置し、都市に野菜を中心とした農作物を届ける近郊農村でした。江戸時代の頃からハウス栽培が盛んで、促成栽培といって、ハウス内で炭をたき室内の気温を上げることで、通常よりも早い時期に収穫を行う農法を用いていました。そうして生産した農作物を、淀川や宇治川、山陽道を通じて、京都や大阪に出荷していました。現在は、住宅地が多くベッドタウンとなっていますね。

私の出身である大阪府泉大津市についても教えてください。(西出)

泉大津市というと、大阪府の南西部・泉州地域に含まれます。泉州は、江戸時代には牛の仲買(なかがい)が多い地域でした。和泉山脈が近いため川が短く土が軽い泉州には、子牛でも耕せる畑が多くありました。そのため、今でいう兵庫県で生まれた子牛を受け入れ、泉州で農耕に用い、大きくなった牛を耕牛として京に近い地域に高値で売っていました。
近畿地方はフィールドワークを重ねているため大体分かります、とおっしゃっていました。

地域の歴史についてあまり目を向けたことがなかったため、とても興味深かったです。最後に、村上先生から学生へメッセージをお願いします!

学生さんには、「疑う事」を身に付けてほしいです。世の中にある情報をそのまま受け入れるのではなく、一度疑問を持ち、物事の背景にある人々の営みや歴史に目を向けてみてください。背景を知ると、ものの見え方が変わり、より深く理解できるようになります。多角的な視点で物事を捉える力は、社会に出て仕事をする上でも役立つと思います。
学生広報スタッフにとっても学びになる時間でした。


私は1年次生ですが、「物事の背景には何があるのか」を念頭に、これから大学で学んでいきたいと思いました。日常生活の中でも、食べ物を食べておいしいと思うだけではなく「誰がどこでそれを作ったのか?」などの疑問を持って調べてみるのも面白そうです。

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