2024.10.30
特集<後編>大学と社会を結ぶキャリア形成支援教育科目「O/OCF-PBL2」とは

前回紹介した京都鉄道博物館の蒸気機関車「C51形239号機」と彌榮自動車株式会社(以下、彌榮自動車)所有のハイヤー「センチュリー」の展示。きっかけとなった本学のキャリア形成支援教育科目「O/OCF-PBL(オーシフピービーエル)2」の授業について、教員、課題提供機関、受講生の皆さんにお話を伺いました。




京都鉄道博物館 総務企画課 主任調査係学芸員 廣田 琢也(ひろた・たくや)さん

彌榮自動車株式会社 人事部人事課 課長補佐 江畑 明宏(えばた・あきひろ)さん
実社会で学ぶO/OCF-PBL2。毎年約10の課題提供機関とともに課題解決をする実践型授業
松尾 本学のキャリア形成支援教育科目「O/OCF-PBL(オーシフ ピービーエル)」は、大学(On Campus)と実社会(Off Campus)での学びを融合(Fusion)させた課題解決型学習(PBL: Project Based Learning)です。
この授業では、1年次のO/OCF-PBL1でチームワーキングの基礎的なスキルや問題解決に必要な知識を学び、2年次のO/OCF-PBL2で課題提供機関からいただいた課題にチームで取り組みます。学生の社会人基礎力、人と関わる力、問題解決力を養うプログラムです。
2007年の開講時から「迂回教育」というキーワードのもと、効率を最優先して最短距離で課題解決を進めることよりも、受講生全員が参加し、それぞれに成長できることを重要視しています。
渡辺 私は「彌榮自動車株式会社クラス」で、「京都の街のコンシェルジュ☆21世紀の【ヤサカ】を共につくる若者の募集戦略を立案」をテーマにチーム6人で取り組んでいます。
鎌田 私は「京都鉄道博物館クラス」で、7人のチームで「京都鉄道博物館に『Z世代』を誘致せよ!」のテーマに挑戦しています。
この授業では、1年次のO/OCF-PBL1でチームワーキングの基礎的なスキルや問題解決に必要な知識を学び、2年次のO/OCF-PBL2で課題提供機関からいただいた課題にチームで取り組みます。学生の社会人基礎力、人と関わる力、問題解決力を養うプログラムです。
2007年の開講時から「迂回教育」というキーワードのもと、効率を最優先して最短距離で課題解決を進めることよりも、受講生全員が参加し、それぞれに成長できることを重要視しています。
渡辺 私は「彌榮自動車株式会社クラス」で、「京都の街のコンシェルジュ☆21世紀の【ヤサカ】を共につくる若者の募集戦略を立案」をテーマにチーム6人で取り組んでいます。
鎌田 私は「京都鉄道博物館クラス」で、7人のチームで「京都鉄道博物館に『Z世代』を誘致せよ!」のテーマに挑戦しています。

渡辺 最初は、企業さん宛てのメールを松尾先生に添削してもらうところから始まりました。メール一通を送ることがこれほど大変だとは思いませんでした。
鎌田 企業さん相手に直接メールをするのは私たちには初体験。企業訪問をして直接お話を伺うことも、最初はとても緊張しました。
渡辺 でも江畑さんが優しく、真剣に話を聞いてくださるので、私たちもありのままの意見を出せるようになりました。
江畑 学生の皆さんが根拠なく意見を言うのではなく、学生間できちんと議論し、そこから生まれた考察を話してくれます。内容も面白いですし、何より真剣に取り組まれている様子が伝わってくるので、同じ課題に対して一緒に走る仲間として意見を聞いています。
廣田 恐らく他の企業さんもそうだと思いますが、学生さんたちにお出ししている課題は実際に私たちが直面しているリアルなテーマです。解決することが難しいのは重々承知しておりますが、毎年学生さんたちが悩んで考え出した解決策は充実した内容になっているので、今年も楽しみにしています。
松尾 リアルな課題に真剣に取り組むことで、自分の考えを言語化する力や意見の対立(コンフリクト)を乗り越える力も身に付きますね。
鎌田 企業さん相手に直接メールをするのは私たちには初体験。企業訪問をして直接お話を伺うことも、最初はとても緊張しました。
渡辺 でも江畑さんが優しく、真剣に話を聞いてくださるので、私たちもありのままの意見を出せるようになりました。
江畑 学生の皆さんが根拠なく意見を言うのではなく、学生間できちんと議論し、そこから生まれた考察を話してくれます。内容も面白いですし、何より真剣に取り組まれている様子が伝わってくるので、同じ課題に対して一緒に走る仲間として意見を聞いています。
廣田 恐らく他の企業さんもそうだと思いますが、学生さんたちにお出ししている課題は実際に私たちが直面しているリアルなテーマです。解決することが難しいのは重々承知しておりますが、毎年学生さんたちが悩んで考え出した解決策は充実した内容になっているので、今年も楽しみにしています。
松尾 リアルな課題に真剣に取り組むことで、自分の考えを言語化する力や意見の対立(コンフリクト)を乗り越える力も身に付きますね。
他者と協働で課題解決をする難しさと、その面白さを学ぶ

鎌田 課題を考えるにあたり、そもそも自分たちが「Z世代」だという認識があまりなかったので、そこから勉強になりました。また、私のチームは秋田、岡山、広島など地方出身者が多いので、地元で乗っていた鉄道の色も形も違うんです。最初はみんなをまとめるのに苦心しました。
廣田 でも当館を訪れるうちに、変化があったんですよね。
廣田 でも当館を訪れるうちに、変化があったんですよね。

鎌田 はい、京都鉄道博物館で廣田さんのお話を伺いながら学んでいくうちに、チームメンバーの熱量や鉄道への愛がどんどん大きくなっていきました。またチームの団結力も高まっていきました。
松尾 学生さんたち自身がZ世代なので、自分たちに響くか、という基準で考えられるのは大学で開講するプロジェクト科目の強みですね。
鎌田 Z世代に鉄道博物館の展示の貴重さをPRし、来館に繋げるイベントを作りたいと思っています。
松尾 学生さんたち自身がZ世代なので、自分たちに響くか、という基準で考えられるのは大学で開講するプロジェクト科目の強みですね。
鎌田 Z世代に鉄道博物館の展示の貴重さをPRし、来館に繋げるイベントを作りたいと思っています。
京都の大学生700人以上にアンケートを実施
江畑 学生さんのパワーは本当に計り知れないですね。渡辺さんたちが行った大規模なアンケートも驚かされました。
渡辺 課題を進めるにあたって、まず大学生にとってタクシーとはどういうものか、が気になりました。京都は交通網が発達しているので、タクシーを使う学生はあまり多くないのではないか。大学生のタクシーの利用経験と、ヤサカタクシーや彌榮自動車さんの知名度も含めて大学生にアンケートしてみよう、と考えました。
本学のゼミなどはもちろん、松尾先生にご紹介いただいた他大学の授業にも直接足を運んで呼びかけ、最終的には計718人から回答をもらいました。
渡辺 課題を進めるにあたって、まず大学生にとってタクシーとはどういうものか、が気になりました。京都は交通網が発達しているので、タクシーを使う学生はあまり多くないのではないか。大学生のタクシーの利用経験と、ヤサカタクシーや彌榮自動車さんの知名度も含めて大学生にアンケートしてみよう、と考えました。
本学のゼミなどはもちろん、松尾先生にご紹介いただいた他大学の授業にも直接足を運んで呼びかけ、最終的には計718人から回答をもらいました。

松尾 私は他大学の先生方を紹介し、後は「自分たちでアポイントをとって行ってね」と皆を信頼して任せましたね。
渡辺 最初、他の大学の200人近い学生の前で話すのは緊張しましたが、最終的には「よっしゃ、行ったろ!」という気持ちで挑めるまでに成長しました。
江畑 社内でアンケートの話をしたら、皆驚いていました。学生さんたちが私たちの会社のために真剣に動いてくれていることが伝わったからです。
廣田 私もすごいと思います。アンケートは案外難しく、われわれ大人が実施しても300件がせいぜい。こうしたオフキャンパスの広がり方が素晴らしいですね。
渡辺 最初、他の大学の200人近い学生の前で話すのは緊張しましたが、最終的には「よっしゃ、行ったろ!」という気持ちで挑めるまでに成長しました。
江畑 社内でアンケートの話をしたら、皆驚いていました。学生さんたちが私たちの会社のために真剣に動いてくれていることが伝わったからです。
廣田 私もすごいと思います。アンケートは案外難しく、われわれ大人が実施しても300件がせいぜい。こうしたオフキャンパスの広がり方が素晴らしいですね。
授業で視野が広がり、自分もチームも変わった
渡辺 授業で全体を通してよかったことは、何より社会人基礎力を学べたことです。また、授業を通して自分が変わった、と思えたのは、人の意見が聞けるようになったこと。これまで自分は皆の話を聞く前に引っ張っていくタイプでしたが、皆でプロジェクトを進めるためには、それだけではダメだと気付きました。
江畑 それは大切ですね。仕事は周りとの協働が欠かせません。その気付きがあれば、社会人になっても困らないはずです。
鎌田 この授業は文理を超えた学生が集まるので、考え方が違う人の視点が分かり、深く考えられるようになりました。いま、チーム一丸となって成果報告会に向けたまとめをしていますが、最初の「鉄道って何?」の状態から、いまや「鉄道のこと、何でも聞いて」といえるくらいに皆が自信をつけてきています。
松尾 課題提供機関にご協力いただいた課題解決型の実践授業によって、学生たちは悩みながらも実社会で必要とされる心構えや主体性を身に付けて、この半年で大きく成長したと思います。企業さんの多大なご協力に深く感謝しています。
江畑 それぞれのチームの成果報告会がどんなものになるのか、今から期待しています!
※取材日2024年8月21日時点の内容です。
江畑 それは大切ですね。仕事は周りとの協働が欠かせません。その気付きがあれば、社会人になっても困らないはずです。
鎌田 この授業は文理を超えた学生が集まるので、考え方が違う人の視点が分かり、深く考えられるようになりました。いま、チーム一丸となって成果報告会に向けたまとめをしていますが、最初の「鉄道って何?」の状態から、いまや「鉄道のこと、何でも聞いて」といえるくらいに皆が自信をつけてきています。
松尾 課題提供機関にご協力いただいた課題解決型の実践授業によって、学生たちは悩みながらも実社会で必要とされる心構えや主体性を身に付けて、この半年で大きく成長したと思います。企業さんの多大なご協力に深く感謝しています。
江畑 それぞれのチームの成果報告会がどんなものになるのか、今から期待しています!
※取材日2024年8月21日時点の内容です。
「むすんで、うみだす。」を実体験できるO/OCF-PBL2の授業。受講生のお二人が授業について、いきいきとお話しされている姿が印象に残りました。課題提供機関の方々やチームの仲間と活動することによって、自己の成長や達成感を得ていると感じました。