「租税回避」とは?経験豊富な税理士から実践的な税法を学ぶ

2021.07.12

講義を行う税理士の櫻井氏
法学部の専門教育科目「公法特殊講義(現代社会と税法)」を取材してきました。この授業は、本学と連携協定を締結した近畿税理士会による寄附講座として2021年に開講した科目で、具体的な出来事や事例を題材に、実践的な税法の学習を目的としています。経験豊富な税理士の方々がわかりやすい言葉に言い換えたり、実例を挙げたりしながら講義を進めてくださるので、イメージしやすく、初心者でも理解することができるのではないでしょうか。
                 (学生ライター 外国語学部3年次 瀬戸 うた)

2021年6月28日、第11回目の講義となるテーマは「租税回避」です。まず、櫻井氏の自己紹介と税理士として働くことについての話から講義がスタートしました。櫻井氏は現在、兵庫県神戸市に自身の事務所を構え、主に法人向けの仕事をされておられます。税理士として25年以上になる櫻井氏は「税理士の仕事では、コミュニケーション能力が大事。どれだけ相手の立場になって考えられるかが重要である」と話されました。多くの仕事を得る税理士は、お客様との付き合いが上手い人が多いそうです。

続いて、税理士の将来性について話されました。スマートフォン1つで何でも調べられる世の中になり、あらゆるもののデジタル化が進んでいる現代社会。会計業務のほとんどが、デジタルへと変化しているそうです。もちろん簿記などの知識は必要ですが、会計業務に従事する人は減少し、これまで人が行っていた業務を、これからはAIが担うようになっていくことになるのだそうです。しかし櫻井氏は「お客様からのあらゆる相談に対して柔軟に対応することが求められる税理士の仕事は、デジタル化が進んでも、人の力が求められると思う」と話されました。

次に、今回の講義のテーマである「租税回避」について解説されました。租税回避とは一般的に、異常な取引により租税を免れることをいいます。脱税と節税の間にあるもので、適法だが不当なものであり、違法にはならないそうです。櫻井氏は受講生に分かりやすいように、脱税や節税についても解説されました。

まず脱税について、脱税とは違法であり、申告書に虚偽の内容を記載することや取引等の隠ぺいを行うことを意味する逋脱犯(ほだつはん)と、申告書を提出せずに租税を逃れる秩序犯の2種類の行為があります。税理士は脱税を防ぐために、お客様に納税の義務について理解してもらえるよう納得のできる説明をする必要があるそうです。
次に節税とは、合法的に租税を安くすることを指します。社会政策的配慮によって法人税が安くなることが認められる支出を行うことが例として挙げられます。

租税回避は、法律で明確に定められてはいないため、違法ではないのだそうです。しかし「いくら法律で定められていないからといって、何でもやっていいわけではない。モラルが必要となる」と、租税回避は良いことだとは言えないと話されました。

講義の最後には、学生に向けて、今回の講義が税理士を目指すきっかけとなれば嬉しいと話され、授業を締めくくりました。

講義を受ける前は、科目名からとても難しい内容を想像していましたが、わかりやすく解説していただき、普段から法律に触れる機会が少ない外国語学部の私でも理解することができました。今回のテーマ「租税回避」は、私には関係のない話だと思っていましたが、実際はとても身近にあるものだということがわかり、講義を通してより一層、税と税理士という仕事に対する理解が深まりました。  
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