【経済学部】地域づくり人特別講義「“今”の滋賀、感じてみませんか」
2023.03.08

経済学部の専門教育科目「地域づくり人特別講義」は、受講生が“地域づくり”について多面的に考察する能力を身に付けることを目的に開講している科目です。地域づくりのキーパーソンを講師として招聘し、その地域が抱える課題、取組みの経緯・苦労・成果など、そして地域づくりの現場から見た日本社会について、それぞれの視点からお話しいただきます。
今回の授業では、公益社団法人びわこビジターズビューローで、会長をされている川戸 良幸氏をお招きし、滋賀県の観光振興についてお話を伺いました。
(学生ライター 経済学部4年次 木下 真菜)
川戸氏は、1975年に琵琶湖汽船株式会社に入社されました。琵琶湖汽船では、取締役、代表取締役社長、顧問を経て2021年に退任されました。同年6月には公益社団法人びわこビジターズビューローの会長に就任され、現在も従事されています。また他に、数社の取締役、コンサルタント、NPO等で理事などを兼任されています。
滋賀県は、琵琶湖をはじめとする、豊かな自然と歴史に恵まれた魅力あふれるところです。また、コロナ禍でも密を避け、安心して楽しめるアウトドアやスポーツ、神社仏閣の静謐な空間が多数あり、観光資源に富んでいます。そんな滋賀県ですが、現在、観光産業は厳しい状況にあると語る川戸氏。加えて、“困難に直面されている事業者の方々への支援とともに、今こそコロナ後も見据え、滋賀の観光・物産が力強く回復できるよう、しっかりと備え、取り組んでいく必要がある”とも述べられました。

- 滋賀・びわ湖観光情報(公益社団法人びわこビジターズビューローホームページより)
コロナ禍以前から川戸氏は、歴史から読み取る地域づくりを実施されています。その中で、過去20年、200年の歴史だけで今の、そしてこれからのツーリズムをつくっていいのかと疑問に思ったことがあるそうです。そこで、1800年の歴史を使い、滋賀県を盛り上げることを決められます。そこまで時代を遡るのには、近辺のみならず全体から、観光を見ることが重要だと考える川戸氏の思いが込められています。過去には、百人一首で有名な蟬丸を活動の元として、関蝉丸神社で芸能祭を企画・実施されました。また、同神社のお話を、小さな子でも理解ができるようアニメや絵本として作製されています。日本ができて1500年、滋賀県ができて150年。西洋からも文化は入ってきましたが、それよりも昔の文化がつくってきた日本をどう見るか、どう活用していくかを、今こそ考えるべきなのではないかというメッセージを感じました。実際に滋賀県は、伊勢・東海文化、東山・奥州文化、北陸文化、畿内文化、近江文化の5つの文化が入り混じっています。それらをうまくまとめて、今ある滋賀県を盛り上げられないか考え、行動されている姿が講義全体を通して見受けられました。
市場経済については、「消費型社会との共存」、「主格から与格へ」、「対価交換から健全な贈与へ」の3点についてお話しされました。市場経済の象徴である、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」の間に何か入れることはできないか。言葉ひとつ、言い方ひとつで心に届くだろう。ならば、主格(利己的・強制的)にならないように、感動や感情に訴えかけるために与格(利他的・贈与的)を使おう。見返り(商品⇔お金)を求めるのではなく、健全な贈与を。観光では、消費的なものから与格的なものに。今まで当たり前とされてきたものをアイディアひとつで、「今」に適用させる。その思考力を駆使して成功してきた秘訣を語られました。

