2024.01.12

特集

創部以来51年待ち望んだ瞬間。昨年王者を下し、京都産業大学体育会サッカー部初関西制覇!!

第101回 関西学生サッカーリーグ(後期)第11節 関西学院大学戦(2023年11月12日)

ついに今季リーグ最終戦。最後の最後まで優勝が決まらない関西1部リーグ、京都産業大学と関西大学に優勝候補が絞られる中、京都産業大学が2連覇の王者・関西学院大学を破り初優勝の栄冠をつかみ取りました。
関西学生サッカーリーグ前節の関西大学戦、残り時間30秒でつかみかけた優勝トロフィーが手からこぼれ落ちました。勝てば優勝が決まる大一番を迎えた京都産業大学は、前半29分、コーナーキックの混戦から西村 翔 選手が得点をもぎ取り、1-0で試合を折り返しました。後半は終始相手の猛攻を受け続ける時間が続く中、隙を1ミリも見せず守備陣を中心にボールを跳ね返し続けます。しかし、後半のアディショナルタイム。時計は目安の5分頃、浮き玉をゴール前に送られるとゴールキーパーと逆方向に撃ち込まれて失点してしまい、1-1に追いつかれ試合終了を迎えました。優勝が途絶えたわけではありませんが、あとわずかに迫った優勝がまた少し遠ざかり、チームは悔しさに包まれていました。泣いても笑っても次節で全てが決まる。相手は昨年、一昨年王者の関西学院大学です。直近4年間の1部所属チームで、本学が唯一白星を挙げていない相手です。初優勝をするために一つ一つパズルのピースを埋めるように勝利を重ねてきた今季、ラストピースを埋めるべく最終戦を迎えました。
舞台は舞洲。海が近く時折風が吹き、冷たい雨が降るコンディションです。気候とは裏腹に熱くアップを行うチーム。今節はゴール裏に用意された応援席からも選手を鼓舞する応援歌が飛び交います。これから戦う90分の試合で、最高のパフォーマンスを発揮するために、選手は真剣に準備を重ねます。
アップを終え、スターティングメンバー(以下スタメン)11人がユニフォームに着替えてピッチに再び現れました。「顔つきも変化してきた」と古井 裕之 総監督は言います。前期最終節から一度も順位を落とすことなく首位に居続けた京都産業大学。ピッチに向かう表情はりりしく、自信にあふれる戦士の目つき。ここまでの数字や成績が自信となり、漂う風格に結びついています。
今季最後のリーグ戦、関西での試合。スタメンはゴールキーパー山本 透衣 選手、ディフェンダー大串 昇平 選手・横窪 皇太 選手・西村 翔 選手・西矢 慎平 選手、ミッドフィルダー川上 陽星 選手・伊藤 翼 選手・福井 和樹 選手・食野 壮磨 選手・夏川 大和 選手、フォワード中田 樹音 選手と今季多くの試合でスタメン出場をしてきた経験豊富なメンバーが並びました。その中でも4年次生がスタメンに7人、ベンチにも2人名前を連ねました。「この先の京都産業大学に残るものを創り出す」と意識しピッチ内外でチームを引っ張り続けた4年次生。31年ぶりインカレ出場の歓喜、コロナでサッカーができない苦しさ。喜び、悔しさ、さまざまな感情を味わい続けました。ここまで78試合、この関西リーグで成長を続けてきた4年間。関西の集大成を見せるべく試合に挑みます。
試合開始直前。いつの間にか、雨もやみました。会場には学生リーグ所属大学、両チームを応援する方々や家族が応援に駆け付け、いつもよりも多い視線がピッチに降り注ぎます。優勝するのは京都産業大学か、関西大学か。101回関西学生サッカーリーグの結末を決める試合がキックオフ!最初は慎重な立ち上がりで、常にボールを保持できなくとも冷静に得点の機会を伺います。しかし、前を向き仕掛けようとしても相手の中盤に刈り取られ、福井選手・夏川選手の両サイドからの仕掛けが思うように通用しない場面が多々見られました。難しい状況でピッチ内で指揮するのは食野選手でした。一つのパスで相手の守備を突破し攻撃の形を描きます。関西1部の選手たちからもどよめきが起こりました。食野選手を中心に右サイドの大串選手・福井選手のガンバユーストリオが阿吽(あうん)の呼吸で守備をかき回します。3人で細かくつなぐと最後は福井選手がシュートまで持ち込みます。枠は捉えられなくても相手に通用する一つの形を作り出しました。
 
前半も残り時間が少なくなってきました。一進一退の攻防が続き、スコアレスで折り返すと思われましたが、相手の速いカウンターを受けます。左から右へと大きく揺さぶられると最後はゴールキーパーと逆方向に仕留められ痛恨の失点。今季、先制点を許した試合で勝利を挙げることができたのは1試合のみです。「先制点が大事になる」と川上選手も話していたように、京都産業大学の勝利の方程式は先制点を奪うこと。しかし、新たな王者になるには新たな方程式が必要です。1-0をひっくり返すために残りの45分を迎えました。
後半の立ち上がりはリズミカルに攻撃を組み立て、相手ゴールに襲いかかります。まずは1点を追いつき試合を振り出しに戻しました。起死回生の同点弾を生んだのは、やはり10番食野選手でした。相手がクリアしたボールは主将の前に転がります。ここぞという時、チームに勢いをもたらす得点を決め続けてきた食野選手。自他共に認める努力家が右足を振り抜くとボールがゴールネットに突き刺さりました。後半の立ち上がりに追いつく、値千金の同点弾。食野選手は真っ先にベンチに向かいハグを交わします。本学の優勝条件は引き分け以上。追いついたことにより、優勝が近づきました。しかし、目指すのは白星のみ。勝利を掴むための追加点を奪うために気持ちを切り替えて、残りの時間に挑みます。
後半は守備陣の活躍が目立ちました。センターバックの西村選手、横窪選手が体を張って空中戦を制し、相手のクロスボールを対処しシュートを打たせません。最後尾に立つ山本選手は好セーブを連発。「少しのミスで失点してしまうのが悔しい」と今季クリーンシートに抑えたのは5試合。悔しさを抱えながら、もがいて鍛錬を重ねてきた守護神がこれまでの悔しさを晴らすかのように、鮮やかなセーブで会場を魅了しました。パンチング、キャッチ、長い腕を存分に伸ばしてセーブ。観客席から感嘆の声が山本選手に降り注ぎます。「自分が失点しなかったらこのチームは勝てる」(山本選手)。これ以上の失点は俺が許さない、あとは前線の選手に勝利を託すと言わんばかりのプレーを披露しました。ピッチ内に好プレーの波は伝染します。守備陣が好プレーを見せると、次は攻撃陣へ。それぞれの立場から勝利をつかむためのプレーを選択し相手を揺さぶり続けます。
後半36分に食野選手・中田選手と交代で、城水 晃太 選手と中野 歩 選手が投入されました。前線にフレッシュな選手を入れ、活性化させます。キャプテンマークを引き継いだのは川上選手。誰よりも勝利へ熱い思いを持つ主将の想いはピッチに残ったままです。「全員で優勝を」時間も残り少なくなってきました。後半43分、劇的な瞬間が訪れます。

左サイドの夏川選手が送ったクロスボール、一瞬の静寂の後に聞こえてきたのは歓喜の声。クロスボールが相手のオウンゴールを誘発し、試合終盤の劇的な逆転ゴールを生みました。もみくちゃになり喜びを爆発させるチーム。大きな大きな追加点、あとは守り抜くだけです。前節の悔しい引き分けを経験したチームに隙はありません。リーグ終盤で身体もボロボロの状況で気持ちを全面に出してゴールを守り続ける11人。アディショナルタイムも目安の時間を過ぎるころ、ベンチでは祈るように試合を見つめる食野選手の姿がありました。相手のクロスボールがゴールラインを割りました。運命の時が近づきます。ボールをセットし数歩後ろに下がり、助走をつけて山本選手が大きくボールを蹴った瞬間、長く待ちわびた体育会サッカー部創部初優勝を告げる笛がピッチに大きく響き渡りました。
優勝が決まった瞬間、チーム全員の目は涙で光っていました。スタッフ陣も一緒になり、喜びをかみ締める中、食野選手は立ち上がることができず腕で目を覆います。吉川 拓也 監督に起こされた後のその目には涙がありました。「食野選手は優勝するために京都産業大学に入学してきた」と東京ヴェルディ内定会見で古井総監督が話した通り、1年次生から試合に出続け、本学の看板選手として主力となり戦ってきた4年間。初めて見せた食野選手の涙には思いがこもっていました。
試合直後に閉会式が開催され、賞状、盾、トロフィーを主将陣が受け取りました。その後に続いて優秀指導者賞を発表。吉川監督の名前が呼ばれると誇らしげな拍手がチームから送られます。京都産業大学を卒業後はカターレ富山などでプレーし、育成年代のコーチも務めた経験豊富な吉川監督。昨年度、京都産業大学に12年ぶりにコーチとして帰ってくると、今季から監督に就任しました。開幕前に話したことは「京都産業大学のエンブレムに価値を持たせたい」ということでした。強豪校のエンブレムを見れば「〇〇大のサッカー部」と分かるように、京都産業大学のサッカー部のエンブレムを多くの人に知ってもらう。そして、在籍した部員、卒業した部員がサッカー部に誇りを持てるようにと躍進し続けた結果、就任1年目でリーグ優勝という偉業を成し遂げました。試合終了直後、古井総監督と吉川監督が抱き合っていました。在学当時は監督と選手の関係性でしたが、今は2人ともチームのかじ取りをする立場です。しかし、目に涙を溜めて抱き合う姿は、教え子と監督の姿に見えました。選手だけでなく、コーチ陣にとっても悲願の優勝だったのです。
表彰式を終え、トロフィーなどを手に抱えて主将陣が戻ってくるとトロフィーリフトが行われました。食野選手、佐藤 幸生 選手、古井総監督がトロフィーを掲げる中、石原 央羅 選手が掲げると周囲は恒例(?)の無反応をみせ全員が爆笑する一面も。その後に選手らは続々とコーチ陣の元へ駆け寄り胴上げ。古井総監督と吉川監督、時久 省吾 ヘッドコーチが歓喜のウォーターシャワーと共に3回宙に舞いました。
チームは続々と最高です!とコメントを残しました。ここまでたどり着くために無駄だったものは一つもありません。京都選手権、関西選手権の敗戦、歓喜の7連勝、残りワンプレーの悲劇。全てはこの日を迎えるために必要だった試練だったのです。流した涙は地面に染み込むだけでなく、自身を再び奮い立たせるパワーになっていました。とっぷり夜に染まった舞洲の空にカンピオーネの歌声が響きます。新たに手にした関西1位の称号と共に京都へと戻ります。さあ行こうぜどこまでも 走り出せ 走り出せ 輝く俺たちの誇り京都産業大学。次に目指すは日本一です。信頼する仲間たちと共にその瞬間が来るまで彼らは足を止めません。
「ゴール裏から 番外編」
筆者が初めて京都産業大学のサッカーを見たのは2020年10月18日の関西学院大学戦です。そして初めて取材をしたのは食野選手でした。今季リーグの優勝を決める大一番、食野選手が復活の同点弾を決めて初優勝に輝きました。私にとって巡り合わせを感じる一日でした。振り返れば、リーグ59試合を取材。毎週末試合に足を運んで、平日は写真整理と執筆に追われました。「もっと遊んだらいいのに」と言われることもありましたが、何よりも彼らの軌跡を記録することが楽しかったです。シーズン中はパソコンとにらめっこする日々が幸せで、いつか優勝することを夢見てがむしゃらに活動してきました。悔しくて涙があふれた試合も、嬉しくて帰り道スキップしちゃうような試合も、全てはこの日のためだと心底感じる一日でした。2023年11月12日、日本で一番幸せな学生記者だったんじゃないかなと思います。2023年12月24日、もう一度トロフィーを掲げるその時まで、担当記者を務めさせてください。初優勝、おめでとうございます! 
 
【試合後のコメント】
 
主将 食野 壮磨選手
最高です。ラストワンプレーぐらいから急に涙が込み上げてきて、グッときた感じ。入学してほんまにいろいろ苦しいこととかきついことが多かった中で4年目の最後で優勝っていう最高な結果でした。
 
副将 川上 陽星選手
みんなの力で勝てて嬉しいです。プレッシャーもあったんですけど、それに打ち勝てる実力が僕たちにはあったので、それをこのピッチで体現できたことが優勝につながったかと思います。取り組みが実った優勝かなと思います。
 
副将 佐藤 幸生選手
最高ですね。とりあえず願うことしかできなかった。途中で試合に出ないってなってからは願うことしかできなかったので、ずっと願ってました。ここまで結果が出たのも1月から始まったきつい練習とかがあったおかげやし、きつい時もみんなでポジティブにやれたっていうのがいちばんの要因やと思います。サッカーが上手いとか下手とかじゃなくて、ポジティブにどんなきつい練習も取り組めたっていうのが優勝につながったかなって思います。

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