2021.10.26

特集

私たちの判断で将来の「年金」が決まる⁉「年金」について福井唯嗣教授に聞いてみた!

年金にまつわる本を手に、福井唯嗣先生の研究室にて。※撮影時のみマスクを外しています。

私たちの将来に関わる社会保障制度。特によく話題になる年金について、皆さんはどこまで知っていますか?今回の記事では、社会保障制度の一つである年金について詳しく知るため、経済学部の福井唯嗣先生に聞いてきました。
本文に入る前に、まずは「年金クイズ」をやってみてください!答えがわからない場合は、この記事の続きを読めばわかるようになっていますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。よく知っている人も、福井先生による詳しい解説はとても勉強になるので必読です!

やってみよう!年金クイズ

① 社会保障制度には現金給付と現物給付があります。「年金」はどちらに当てはまるでしょうか?
A:現金給付 B:現物給付

② 国民の年金に対する信頼を確保することを目的とした法改正が行われた年はいつでしょうか?
A:2004年 B:2007年 C:2010年

③ 現行制度は、平均的な勤め人世帯が働いていた時の給料の何%を年金として受け取ることを約束しているのでしょうか?
A:30%  B:40%  C:50%

(クイズの答えは記事の最後にあります。)

日本の社会保障制度はどんな仕組みなのでしょうか?

社会保障制度とはさまざまな制度の集まりをまとめた言い方で、何か困ったときに国や自治体が私たちのサポートをしてくれる仕組みです。例えば健康保険制度の場合、病院で本来1万円支払うところ、皆さんの年齢では3,000円しか払わなくていいため、安く治療を受けられます。
社会保障制度には、現金給付と現物給付の2種類があります。まず現金給付とは、困ったときにお金がもらえる仕組みのことです。例えば生活困窮者には、生活の保障と自立支援のための生活保護制度があります。「年金」も現金給付の一つです。
次に、現物給付とは困ったときに無料、または安価でモノやサービスがもらえる仕組みです。例えば医療保険の場合、普段私たちが医療代を払っているのは、医療サービスを安く買っているともいえますね。
社会保障制度について研究されている福井先生

では、次に「年金」について教えてください。

年金とは困ったときにお金がもらえる仕組みです。よくイメージされるのは「老齢年金」ですが、ほかに「障害年金」「遺族年金」もあります。老齢や障害、生計を維持していた人の死などの困りごとに対して現金給付をする制度です。
公的年金は終身年金といって、死ぬまで給付を受けられます。日本に年金制度がなかった場合、高齢で働けなくなったら貯金を切り崩して生活するしかないですよね。いつまで生きるのか分かりませんから、「いつ貯金が尽きるのか」と、とても不安です。終身年金とすることで、貯金がなくなったとしても年金を頼りに生活することができます。
こうした年金を給付する公的年金には、国民年金(基礎年金ともいう)と厚生年金の2種類があります。

「国民年金」について詳しく教えてください。

国民年金(基礎年金)は、日本に住んでいる人全員が加入することになっており、加入者は所得にかかわらず定額で月1万6610円を払っています(2021年10月現在)。また基礎年金は、財源の半分を加入者から集めた保険料、残りの半分を税金でまかないます。
年金の保険料を誰がいつ払ったかは記録されていて、20歳から60歳の手前まで40年間払い続けると、65歳から満額もらえる仕組みです。ただし、払った期間が短くなったり保険料の減免を受けたりするとその分減額されます。

年金といえば、「学生納付特例制度」を聞いたことがあります。

日本に住む全ての人は、20歳になると国民年金保険料を納付する義務を負います。ただし、大学生はまだ働いておらず、保険料を納める経済的余裕がないと予想されます。そこで特例として、保険料の納付の支払いを猶予してもらえるのが学生納付特例制度です。期間後は、過去10年以内なら遡って保険料を追納できます。
保険料が免除になるのではなく、支払うタイミングをずらすことができるのがこの制度の特徴です。経済的に余裕がある学生は今から保険料を支払い、もしそうでない場合は大学卒業後社会人になってから支払うと良いでしょう。もし追納しなかった場合は、その分将来的にもらえる年金が減額されます。

では、「厚生年金」とはどのようなものなのでしょうか。

厚生年金は国民年金に上乗せされる年金で、会社員や公務員の方が加入者となります。加入者と会社が保険料を半分ずつ負担し、働いていたときの給料と納めていた期間に応じて、65歳から年金を受け取れる仕組みになっています。一般企業は給料から事前に保険料が引かれているので、給料をもらったときには払い終わっている状態になります。
それに対して自営業の方の場合、直接納付書が送られてきて期限までに自分で銀行やコンビニに払いに行かなければなりません。

1970年代頃から少子高齢化が進み、年金がもらえなくなるかもしれないといわれていますが、それに対応する施策にはどのようなものがありますか?

実は2004(平成16)年に国民の年金に対する信頼を確保することを目的の一つとして、年金に関する大きな法改正が行われたのです。以前は保険料の額が不安定でしたが、法改正以降は保険料の上限が設定されました。そのうえで100年先までの見通しをたて、5年に一度の見直しで、基礎年金と厚生年金の給付金額が調整されています。またこの法改正には、平均的な勤め人世帯であれば働いていたときの給料の50%の年金が貰えるということを約束する内容も含まれています。改正されて20年弱経った今、実際に調整され減額されたのはわずか3回です。そのため公には「将来これだけもらえますよ」と約束されていますが、実際は約束を守れない可能性もゼロとは言い切れないのが現状です。

なるほど…今後も厳しい状況が続くと思われますが、私たちにどのようなことが求められているのでしょうか?

今現在4人に1人がご年配の方(65歳以上)で、40年後にはそれが5人に2人の割合に上がるといわれています。今後も少子高齢化は進むので、年金問題だけに限らず、これからあらゆる社会保障制度が厳しい状況になってくることは確かです。
そうした中で、今の若者が高齢になったときに支えてくれるのは次世代の子供たちです。なので、次世代について見通し、考えることが大切です。とはいえ将来を具体的に考える余裕はあまりないですよね。まずは、自分にできることから始めればいいと思います。例えば10月末に行われる衆院選で社会保障制度についての公約を読み、投票しに行くということも将来のために必要なことです。

最後に学生にメッセージをお願いします!

これからさらに若者の力が必要とされる時代になってきます。今は自分のことで精一杯だと思いますが、将来を考えて選択するということは自分だけでなくほかの人のためにもなるので、これをきっかけに将来のことについて考えてもらえたらと思います。


今回は私たちが知らない間に利用している社会保障制度と、今後の生活に深く関係してくる年金制度について話を伺いましたが、改めて私たちが知っておくべきことだと感じました。2021年10月31日には第49回衆議院議員総選挙が行われます。選挙公約の社会保障政策には、義務教育の学校給食無償化など、さまざまな社会保障制度の充実が挙げられています。社会保障制度や年金制度について理解することは、将来について考え行動するきっかけにつながると思いました。

年金クイズの答え

① A:現金給付 ② A:2004年 ③ C:50%

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