2021年度新設の文化学部京都文化学科「観光文化コース」、観光から「地域のまちづくり」を考える目線が新しい!

平竹耕三先生、文化学部のある11号館前にて。

いよいよ2021年4月、京都産業大学の文化学部京都文化学科に「観光文化コース」が新設されます。「観光」に特化したコースを設置するねらいとは?文化学部京都文化学科の平竹耕三教授に、「観光文化」を学ぶ意義やご自身の研究についてお聞きしました。

文化とは人々の営み。観光「文化」が学べるのが、最大の特徴

学生たちと訪れた「KYOTO STEAM」の展覧会場にて。(2020年11月26日撮影)

——「観光学部」ではない、文化学部京都文化学科の「観光文化コース」の特徴を教えてください。
観光立国を目指す日本にとって、観光資源の豊富な京都はその中心都市のひとつといえます。京都は、街中のいたるところに実践例がある、観光を学ぶのには最高の環境です。
さて、観光文化コースの最大の特徴は、他大学では観光の「実務」に近い学びが多いのに対し、その名の通りに観光「文化」が学べることです。観光と聞くと知らない土地へ行って、おいしいものを食べて、と旅行客の立場をイメージするかもしれません。しかし旅行客をもてなす人たちや、受け入れる地域の人々のことも考えなければなりません。観光文化とは、「観光を通じた人々の営み」によってできると、私は考えています。

——「観光を通じた人々の営みによって、観光文化ができる」ことについて、もう少し教えてください。
はい。そもそも観光学という学問はまだ完全には確立されていません。経済学や社会学、人類学、政策学といったほかの学問分野の境界にあり、固有の方法論がまだ明確化されていないために、学問としての独自性に欠けるという意見もあります。ただ、私はその広い学際性が、観光学の特徴だと考えています。

観光学は、経済学、社会学、人類学、政策学などとの境界にある学問として、平竹先生は図示してくれた。
同様に、「観光を通じた人々の営み」とは狭い話ではありません。旅行客、観光業に従事する人々だけでなく、その都市の住民も含まれます。つまり京都に住む人全員が、観光に関わる人々といえるのです。
私たちがもてなすことで、観光客が京都を好きになる。私たちは、観光客をきっかけに京都の良さを見つめなおす。また、地域の人たちも京都のまちのありようを考える。そういった人と人との関わりによって生まれる新しい営みを、観光文化と呼びます。
観光文化で取り上げるテーマはいろいろ考えられます。たとえば観光資源を見つけてまちおこしにつなげる。あるいは、外国人観光客の迷惑行為に対してどんなメッセージを発するべきなのかも、観光文化のテーマです。
観光文化コースでは、京都文化学科での従来のカリキュラムにある歴史や文学のようないわゆる京都が舞台となった過去の学びに、「観光」をプラスして未来に生かせる学びを準備しています。学問分野で言えば、観光政策学や、観光人類学、観光地理学になります。

市役所から大学へ。観光と地域のまちづくりはコインの裏表

写真は岩手県北上展勝地。京都で観光文化を学んで全国に生かせることは多い。
——平竹先生は、以前は京都市役所にお勤めだったそうですね。
はい。京都市役所にいて、最後は文化市民局に在籍していました。ロームシアター京都や京都市京セラ美術館の立ち上げに携わり、ロームシアター京都では初代館長も務めました。文化の仕事に長く携わっています。まちづくりに興味があり、働きながら大学院に通った時期もありましたので、それもあってか在職中にお誘いを受けて、京都産業大学に来ました。
市役所では観光と地域の関係を考える機会が多くありました。観光客がたくさん来ても、地域の人たちが我慢を被ることになったら意味がありません。
私は観光と地域のまちづくりはコインの裏表のように密接な関係にあると考えています。まちづくりは地域の人たちが「自分たちのまちを発展させよう」と考えて実行していることですよね。そこに観光客の視点が入ることがまちづくりに影響したり、逆にまちづくりが訪れた観光客の方に影響を与えたりして、相互に影響し合って新しい文化が生まれます。観光と地域のまちづくりは遊離したものであってはいけないし、観光を取り込んで地域の人たちを豊かにするという考え方が大切です。
京都は特に科学技術と文化芸術、それに加えて観光に強い都市です。京都は観光を利用して、そういった「得意」を伸ばしていけたらいいと思います。

観光のかたちは変わる。でも欲望はなくならない。

——新型コロナウイルスの影響により、観光はどうなっていくのでしょうか。
感染拡大を防止するという意味で、旅行は難しい時期が続いています。それでも人間の未知への憧れといいますか、知らない土地に行きたいという観光への「欲望」がなくなることはないでしょう。時期が落ち着いたら、観光はきっとまた復活します。
しかし全てがこれまで通りとはいきませんから、観光のあり方も変わるのではないでしょうか。大勢の人が一気に来て短時間で観光スポットをたくさん巡るよりは、家族などの少人数で長期間滞在してゆっくりと濃い体験をする欧米のバカンスのようなかたちに変わっていくのかもしれません。

——コロナ禍で、先生ご自身の研究にも影響はありましたか?
思うように自分の研究ができていないんですが……今興味があるのは京都の花街についてですね。今の状況が続けば舞妓さんや芸妓さんが働きづらくなってしまいますよね。そうすると舞妓さんたちをサポートする職人さんたちにも影響が出てしまいます。見えないところで支えている人たちも含め、花街文化をどう守っていくかを研究したいと思っています。

京都を代表する花街のひとつ、祇園新地甲部歌舞練場歌舞練場にて。
——最後に、学生にメッセージをお願いします。
学生時代を京都で過ごせることは貴重です。京都は小さくても、いろんなものが詰まっています。それに京都の人たちも学生の皆さんをとてもかわいがってくれます。ぜひ街に出ていろんなことを学んでほしいですね。

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