【法学部】ゲストスピーカーの特別講義が朝日放送「ニュースおかえり」で紹介されました
2023.03.01

元受刑者から直に聞き、考える社会復帰支援の現状と課題、そして得られたものとは
法学部 服部 達也教授の矯正社会学Ⅰ・Ⅱは若年成人の犯罪や少年非行の要因となる社会的問題点を踏まえ、犯罪・非行の防止及び再犯・再非行の防止のための生き辛さへの支援の内容や矯正施設における社会復帰支援の在り方、関係機関の連携などに関する現状と課題から我が国の社会が現在抱える青少年問題への対応策を考察しています。
2022年11月25日2時限目の矯正社会学Ⅱと3時限目の服部ゼミ・社会安全フィールド・リサーチ服部クラスの合同授業に、福岡県福岡市博多区で犯罪歴のある者の社会復帰のために雇用する協力雇用主をされている、中溝観光開発代表取締役社長 中溝 茂寿氏と従業員の方にお越しいただき、就労支援に関わる問題などについて話していただきました。
今回、中溝社長にお越し頂いた経緯は、2022年9月15日から17日にかけて「社会安全フィールド・リサーチ」服部クラスが福岡に行き、16日と17日に中溝観光開発に訪問したことがきっかけです。
この時の様子については、法学部ニュースの【法学部】朝日放送が紹介 学生が福岡の更生支援施設でフィールド・リサーチ「社会安全フィールド・リサーチ(服部クラス)」(11月24日)をご覧ください。
また、今回の模様は朝日放送の「newsおかえり」のコーナーで紹介されました。
その様子はページ下部にあるYouTubeでご覧いただけます。
(学生ライター 法学部2年次 杉原 翔)
それぞれの授業の様子を下記に紹介します。
矯正社会学Ⅱ

授業の最初に、犯罪を起こしたことがある従業員の方に犯罪を起こすまでの生活環境や犯罪を起こして中溝観光開発に入るまでの過程などをお話ししていただきました。
その後、中溝茂寿氏からは逮捕されてからどうなるのか、刑務所ではどんな刑務作業をしているか、再犯を起こさないための支援がどうなされているのか、今日本で蔓延している薬物について偽薬を使ってどんな値段で売られているかなどを教えていただきました。
そんな中でも「更生には居場所が重要」、「自分が動いて見方を変えるだけで物の本質が見える」、「世の中に今刑務所を出てきている人がいる、その人たちをどうしていかないといけないか考えないといけない」というお話が私たちの心に残る言葉でした。
服部ゼミ(2、3、4年次)&フィールド・リサーチ服部クラス合同授業
授業は中溝社長と従業員の方と私たちの対話形式で行われました。
ゼミ生の中から質問で「暴力団対策法や暴力団排除条例は暴力団から離脱し更生する上で真に役に立つのか」という質問に中溝社長は「暴力団に入ろうとする者を止めるには問題はないが、暴力団から出る者にとっては不便である」と答えていらっしゃいました。
元暴力団であれば本人が更生しようとしても、自分の銀行口座を作ろうとすると、ほとんどの銀行に断られてしまうことを理由として挙げられていました。
また、中溝社長は「今やっと国・行政が更生に動き出しているが、そこに掛けられる予算は少ないのが現状である。だから民間が動いている」と言っておられました。
中溝社長と従業員の方のお話を聞いた生徒の感想は「前科があっても就職はある程度できるだろうと甘く考えていたことに気づいた」、「別世界のように感じていたけれど、刑務所を出てから生きていく世界は私たちと同じ社会であり、彼らを受入れる受け皿や社会的な居場所を作ることが大切だと感じた」、「誰しもが加害者・犯罪者になる可能性を持ち、もしも加害者になってしまった場合、必ず誰かに助けて欲しいと思う。だから加害者になった時のことを考え、自分の今までの支援に対する見方を変える人が増えれば社会も変わると思う」、「反社と繋がったきっかけがあまりにも簡単すぎて驚いた」、「社長が従業員の方を『うちの子』と呼んでいて家族の一員として接するのが重要だと思った」、「”自分の経験で見捨てない”ということの難しさを知っているからこそ中溝社長の手腕の凄さに再度驚かされた」、「京都産業大学の矯正社会学だからこその講義を受講できて、私の人生においても非常に有益な時間であったことを確信しています」などがありました。
私が今回の特別授業を受講させていただいた中で印象に残ったことがあります。
それは従業員のお一人がこの日で会社を退社されるというお話を私たちにしてくれた時です。その時に中溝社長と辞める従業員の方が泣いていらっしゃったのです。
会社で従業員がやめることは当たり前の事です。もちろん従業員の方は犯罪を起こしたことがあり、社会復帰が困難という中、独り立ちしたという部分があったと思います。
それでも従業員一人が辞めることで泣くのは驚きました。また、泣けるような関係を築いていることが社会復帰では必要であり、そのような関係を築ける人の下で働くことが必要だと思いました。
私たちは意識しないうちに犯罪を起こした者にレッテルを張り、壁を作っているのかもしれません。
そんな壁をなくすために、加害者支援とは何か、広い意見を知るために朝日放送で放送された「人生やり直し請負人! 元ワル社長の奮戦記Ⅳ」(1月29日放送)をご覧ください。