Sagittarius
2026.04.15 特集

BL漫画に隠れたジェンダーロール? インドネシア大学生・フェリシアさんが気づいた意外な視点

Writer
  • 西出 咲帆さん
昨年11月20日から1ヵ月間、インドネシア出身のフェリシアさん(愛称フェフェさん、以下、「フェフェさん」)がブラウィジャヤ大学から短期留学生として京都産業大学に来ました! 

フェフェさんは、インドネシアの東ジャワ州マラン市にある名門・ブラウィジャヤ大学のコミュニケーション学科の修士課程2年生で、日本のBLやLGBTQ、同性愛、日本文化を研究している学生です。 

昨年、ブラウィジャヤ大学から京都産業大学への学生短期受け入れの依頼があり、現地に訪れていた本学インドネシア語が専門分野の澤井先生がフェフェさんのBL研究に興味を持ち、インドネシア語専攻生の学びの機会になると判断して受け入れを了承しました。こうしてフェフェさんは日本文化を学ぶため、本学に滞在することになりました。


フェフェさんは日本語で簡単な日常会話ができるため、滞在中はインドネシア語専攻のさまざまな授業にゲストとして参加し、インドネシア語専攻の生徒に自身の研究について、多くの話をしてくれました。 

フェフェさんは、インドネシアから短期留学生として2025年11月から本学に1カ月滞在しました。

Q:インドネシアでの大学生活について教えてください。 

A:インドネシアの大学の授業は朝7時に始まります。ここ京都産業大学は9時からなので、ゆったりで良いなと感じました。1限目は7時から始まり、最後の6限目は夕方の20時に終わります。インドネシアの大学では論文や学術的な記事を書く課題が多いので、ほとんどの学生がコンピューターを使います。 


Q:インドネシアの大学生活で、面白かったこと・楽しかったことは何ですか。   

A:一番面白いと感じているのは、大学にある宗教ごとの学生コミュニティーの活動です。インドネシアには6つの宗教があって、それぞれの宗教ごとに大学の中にコミュニティーがあります。 カトリックやプロテスタントの学生は、キャンパスで小さいお祈りやミサ(カトリック教会の礼拝)のような集まりをしています。イスラム教の学生コミュニティーは特に活動が活発で、 コーラン(聖典)をどれだけ暗唱できるかを競う大会など、宗教に関するさまざまな競技があります。私の大学もそうした大会に参加しています。
また、コーランを一定の単位(「ジュズ」と呼ばれる区切り)まで覚えていると奨学金をもらえる制度もあります。さらに、宗教ごとに応募条件が決まっていて、特定の宗教の信者だけが応募できる奨学金もあります。 


Q:京都産業大学に来て驚いたことは何ですか。   

A:一番驚いたのは「たくさん歩く」ことです。インドネシアはとても暑いので、普段あまり歩かず、移動は車が多いです。 そのため京都産業大学に来て、起伏のあるキャンパスを毎日歩くのは大変ですが、その分、自然も多くとてもきれいだなと思いました。 私の大学は街の中にある「シティーユニバーシティー」で、ビルの中に教室があるような感じなので、京都の中でも「景勝の地」にあるキャンパスは新鮮でいいなと思いました。 

澤井先生が見守る中、簡単な日本語やインドネシア語、英語でフェリシアさんに取材。

Q:現在の研究テーマについて教えてください。   

A:今の研究テーマはBLについてです。漫画におけるBL、つまり「ボーイズラブ」の作品ですね。 ただ、BL作品そのものだけを見るのではなく、作品の中に表れている人物の関係性や家父長制について考えています。
 BLは主に女性が創作し、読者も主に女性が多いため、女性にとって「表現の自由がある場所」のように見えるジャンルだと思います。 しかし、私はその中にも社会における男性と女性の性別役割が固定化されている、いわゆるパトリアーキー(家父長制)的な考え方が残っているのではないか、という視点で研究しています。 


Q:どのような表現に家父長制が表れていると感じますか。   

A:例えば、男同士のカップルの中でも、一人のキャラクターが「女の子みたい」だったり、フェミニンな性格や外見を与えられている一方で、その相手であるもう一人のキャラクターが上に立ち、主導権を持つように描かれることが多いです。 男同士のカップルであるにもかかわらず、関係性の中に男女のような役割や上下関係がそのまま入り込み、伝統的なジェンダーロールが再生産されているように見える場合があります。 BLは少女漫画と似ていて、とてもロマンチックな表現も多いですが、実はそれだけではないのではないか、と考えています。 

フェフェさんとお薦めの日本の漫画を紹介し合い、取材後に意気投合できました。

Q:この研究を通して、どのようなゴールを目指していますか。 

A:私の研究のゴールは、BLを読む女性や、BLを創作する作者が、自分たちの作品にどのようなジェンダーの表現が含まれているのかを、より意識してもらうことです。 BLはしばしば「女性にとって自由な表現の場」だと語られている一方で、無意識のうちに家父長制的な性別的役割や伝統的なジェンダーロールが残っているのかもしれません。 そのことに気づいてもらうことで、より自由で、より多様な表現が生まれていくきっかけになればいいなと思っています。 




今回の取材を通じて、フェフェさんのBL漫画研究に触れ、「自由な表現の中にも家父長制が残っている」という視点に、驚きと同時に納得することができました。今まで意識していなかった視点でしたが、作品を思い返してみるとその通りで、自由なはずの表現の場に、自然と古いジェンダーの考えが入ってしまっていることに、少し残念な気持ちになりました。私たちはもっと気づく必要があると痛感しました。 

フェリシアさんは終始優しく笑顔で応じてくれ、こちらの語学力が追い付かない場面でも「大丈夫だよ〜」と和やかにフォローしてくださいました。柔らかい雰囲気の中に、芯の強さが感じられる、とても魅力的な方でした。彼女の研究と目標を心から応援しています! 

Writer取材をした人
  • 西出 咲帆さん
    外国語学部3年次

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