2024.04.26

特集

京都府の最低賃⾦がいくらか知っていますか?京都地方最低賃金審議会にも参加する、法学部・岩永昌晃先生が解説!

最低賃金や労働法について岩永先生にお聞きしました。

アルバイトを始める学生が多いこの春に必見!2023年10月、京都府の最低賃金が1,008円に引き上げられたのを皆さんご存知でしょうか。アルバイトをしている学生にとっては大事なことですが、最低賃金についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は、労働法を専門に研究されている法学部の岩永 昌晃 先生に解説していただきました。

最低賃金ってなぜあるのでしょうか。

最低賃金とは、労働者が働くにあたって時間あたりの最低の賃金を決めたものです。
そもそも賃金や労働時間などの労働条件は、労働者が「労働組合」を作り、使用者(会社、個人事業主)との交渉の上決められていきます。しかし労働組合を作ることが難しく、組合に入れない場合は、それらは機能しません。そこで、組合に入って行動ができなくても賃金の最低額を保障し、労働者の生活の安定を確保するために、労働法の一つである「最低賃金法」ができました。 
京都地方最低賃金審議会で答申する岩永先生

近年、最低賃金が引き上げられているのはなぜでしょうか。

最低賃金は2000年代まではあまり注目されていませんでした。景気が良かったということがまず大きな要因です。また、当時は正社員としてお父さんが働き、お母さんが専業主婦またはアルバイトに行くというような家族モデルが一般的でした。そのため、家族の誰かが正社員で働いていれば、家計を助けるために働いている人たちは賃金が高くなくても大丈夫だったのです。
近年、最低賃金が注目を集めているのは、非正規労働者(非正社員)が増加していることが背景にあると思います。非正規労働者(非正社員)の生活の安定のために最低賃金の役割が大きくなってきています。
 
飲食店は学生に人気のアルバイト

最低賃金が都道府県によって異なるのはなぜでしょうか。

最低賃金は、毎年6月の半ば以降から最低賃金審議会で話し合いの上、決められます。審議会には、使用者の代表、労働者の代表、社労士、大学の教員などが参加していて、私もその一人です。その審議会での討論で、ポイントとなるのは3点です。労働者の生活費、その地域でどれだけ賃金が支払われているか、またどれだけ賃金を払えるかという事業者の支払い能力です。それらには、地域による物価や家賃、景気の状況も影響します。そのため、全国一律に決めることは難しく、都道府県によって最低賃金が異なるのです。

私たちが生活している京都府の最低賃金に特徴はありますか。

京都府は府内でも、北部と南部で大きな地域差があるのが特徴です。また、京都市内は旅館やタクシー業などの中小企業も多いため最低賃金の影響を受けやすく、急激に引き上げるわけにはいきません。一方で、労働者側の物価高の影響も考慮していく必要があります。京都府の最低賃金は一律なので、京都市内とそれ以外の地域のバランスを取るのは難しいです。

この春からアルバイトを始める学生も多いと思います。アルバイトを選ぶ際に気を付けた方が良いポイントがあれば教えてください。

一番は、雇用契約を結ぶ前に、労働条件をしっかりと確認することです。
 ★主な労働条件
  • 労働契約の期間
  • 就労場所
  • 始業、就業時刻
  • 賃金
  • 退職に関する事項
労働基準法という法律の中で、労働条件の明示が義務付けられています。最低賃金より低くないかも必ず確認してください。
労働条件を確認するようにしましょう。

アルバイトに関して、「賃金が支払われない」「やめさせてもらえない」などのトラブルをよく耳にします。そういった場合、どこに相談したらいいのでしょうか。

学内では、学生支援センター(10号館1階)で相談に乗ってくれます。「やめさせてもらえない」といったトラブルや賃金に関することなど内容によっては、労働局や労働基準監督署に相談に行った方が良いでしょう。
 
個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)という第三者が間に入ってくれる制度もあります。裁判は、費用も時間もかかり、労働者には難しいものです。行政のサービスは無料なので、安心して利用してください。

先生は、どうして労働法を研究したいと思われたのですか。

弱い立場にある労働者を守るという社会正義にロマンを感じたからです。景気の良かった時代は労働法という法律を意識せずにいられました。雇用が守られ、待遇も悪くなかったからです。しかし、バブル崩壊により、1990年代後半から経済状況が悪化し、労働者と雇用者のトラブルが発生しやすくなりました。そこで、労働法が求められるようになりました。
現在、私が労働法を学び始めたそのころより、非正規雇用(非正社員)が増え、フリーランスなど新しい働き方も一般的になってきました。そのような働き方をしている人々を法的にどのようにサポートしていくか、研究していて非常にやりがいのある学問だと感じています。 

岩永先生のゼミでは、どのように労働法を学ぶのでしょうか。

裁判例を学び、それによって得た知識を前提に、事例問題を検討します。持っている知識は使えなければ意味がないので、知識を具体的に使えるようになることを大切にしています。また、力試しとして他大学のゼミとの討論会も行っています。

「労働法」について、一般の学生でも知っておくべきことを教えてください。

 今、アルバイトをしていなくても、多くの学生が社会人になったら働き、労働者となります。そのときに自分を守ってくれるのが「労働法」です。労働法について知っておけば、「これはおかしいぞ」ということが起きたときに、気付けます。基本的な労働基準法で定められていることは知っておいた方が良いでしょう。厚生労働省のWebサイトなどに学生向けにまとめられたものがあるので、そちらで勉強するのもお薦めです。

私もアルバイトをしていますが、最低賃金が定められた背景や金額が決定される過程などについて知らないことばかりでした。今後、社会に出て働いていく上で欠かせない労働法について、さらに学びたいと思いました。

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