2021.10.15

カルチャー

10円玉でおなじみ、世界遺産平等院。仏像と秋の散策スポットも紹介します!

紅葉に彩られた平等院鳳凰堂(提供:宗教法人 平等院)

京都には有名なお寺や歴史的名所、文化的スポットがたくさん。せっかくなら在学中に目いっぱい訪れておきたいですよね。そんな「京都の学生なら⼀度は⾏っておきたい学外散策シリーズ」として始まった企画の第2弾では、京都府宇治市の平等院を紹介!鳳凰堂内部にある仏像の雲中供養菩薩像に注目しました。雲の上に乗りながら生き生きとした表情で音楽を奏する雲中供養菩薩像は、躍動感にあふれ、見ているだけで楽しくなります。52躯の雲中供養菩薩像の中から、お気に入りを見つけるのもおすすめです。これを機に仏教美術の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

阿弥陀如来の西方極楽浄土を再現した平等院鳳凰堂へ

宇治川のほとりに広がる平等院。もとは平安貴族の別荘でしたが、末法の初年とされる1052年に、藤原道長の子・頼通が寺院にあらためました。末法とは釈迦の正しい教えが途絶え、人も世も乱れると予言された時代のことです。

翌年に建立されたのが平等院鳳凰堂。世界遺産「古都京都の文化財」の一部であり、10円玉の絵柄としても身近な存在です。取材では平等院 執事の神居俊孝さんにガイドをしていただきながら、鳳凰堂の建つ阿字池周辺や鳳凰堂内部を巡りました。

正面から見た平等院鳳凰堂。平等院の中でも当時の姿を唯一遺す建造物です。2014年の平成の大改修で平安時代の塗料が再現され、鮮やかな朱色に塗り上げられています。

中央に阿弥陀如来坐像を安置した中堂、両脇に翼廊、中堂の後ろに尾廊が建っています。これらを大きく翼を広げた鳳凰の姿に見立て、鳳凰堂と呼ぶようになったわけですが、この呼び名が定着したのは江戸時代だそう。阿弥陀堂が正式な名前です。

——中堂の上の方に丸い穴が開いていて、阿弥陀さまのお顔が見えていますね。

「あの穴はわれわれが中を見るためのものではなくて、阿弥陀如来が下界を見通すための窓なんです。当時は末法と信じられていたこともあり、『南無阿弥陀仏』と唱えれば誰もが分けへだてなく阿弥陀如来に救われるという教えが広まりました」

——中央に灯籠が置かれていたり、両脇の翼廊が中堂につながっていなかったり、気になる部分がたくさんあります。

「鳳凰堂は阿弥陀如来がいらっしゃる西方極楽浄土を再現したもので、全てが阿弥陀如来をたたえるためにあります。実用的なものではないので、翼廊には2階に上る階段もないんですよ。個人的な解釈ですが、仏には階段が必要ないからではないかなあ、と思います」

斜めから見た姿もきれいなので、ぜひ色んな角度から眺めてみてください。

鳳凰堂が建つ阿字池の周囲には100本を超えるもみじが植えられています。紅葉シーズンには鳳凰堂と相まって見事な景色が見られるので大変おすすめです。

——池には何か意味があるのでしょうか。

「仏教の経典『観無量寿経』には『水に映る不完全な姿こそが真実の姿である』と説かれています。阿字池は昭和のころハスで覆われていたのですが、現在は鳳凰堂の姿を映すために池を整えています」

——紅葉のほかに、平等院鳳凰堂の秋の見どころを教えてください。

「四季折々の姿が美しい平等院ですが、秋は日没の時間帯もおすすめです。夏から秋にかけては、夕方になると太陽が鳳凰堂の後ろへまっすぐ落ちていってとてもきれいですよ。西方極楽浄土を再現するために、昔の人が方角まで考えて建てたのだと思います」

それではいよいよ阿弥陀如来が安置されている中堂の内部へ。鳳凰堂右手の受付で内部拝観を申し込みましょう。橋を渡り、靴を脱いで中堂へと進みます。

中堂で阿弥陀如来坐像、雲中供養菩薩像とご対面

本尊である阿弥陀如来坐像。仏師・定朝の作。壁面には阿弥陀如来をたたえる雲中供養菩薩像。かつては鮮やかに彩色されていたそうです。(提供:宗教法人 平等院)

中堂には阿弥陀如来坐像が安置され、人が入れるスペースは意外にこじんまりとしています。その分、どっしりとした阿弥陀如来の存在感は圧倒的。正座をすると阿弥陀如来坐像と目が合い、全てを見通されているかのような気持ちを味わいました。

次に目を引くのが、三方の壁にある52躯の雲中供養菩薩像です。大きさは50センチほど。1体1体が雲に乗り、楽器を奏でたり合掌したり、舞を舞ったりと異なるポーズを取っています。神居さんによれば菩薩とは仏になることを約束された修行中の人であり、雲中供養菩薩は皆阿弥陀如来をたたえているのだそうです。

実はこの鳳凰堂、各建築は言うにおよばず、阿弥陀如来坐像も天蓋も、雲中供養菩薩像も国宝に指定されています。こんなにたくさんの国宝に囲まれたのは初めてかもしれません。

雲中供養菩薩像が間近に見られる「平等院ミュージアム鳳翔館」

神居さんいわく、52躯の雲中供養菩薩像のうち半分は模刻(レプリカ)で、本物は保護と展示のためにそばの「平等院ミュージアム鳳翔館」に移されているとのこと。「近くでじっくり見られますから、ぜひお気に入りの雲中供養菩薩像を見つけてみてください」とアドバイスをいただきました。さっそく向かってみましょう!

「平等院ミュージアム鳳翔館」では初代梵鐘や1万円札の裏側にも描かれている初代鳳凰像、そして雲中供養菩薩像26躯を展示。そのほかにも十一面観音菩薩立像や帝釈天像などの重要文化財、宇治市指定文化財の展示が充実しています。

雲中供養菩薩像の1体、南12号。(提供:宗教法人 平等院)

先ほどの中堂よりもかなり距離が近く、ライトアップもされているので、雲中供養菩薩像の木目や表情がしっかり鑑賞できます。その生き生きとした様子には驚くばかり。持ち物や髪型や衣装はもちろん、顔つきも1体ずつ違っていて、モデルがいるのではと感じるほどです。ぜひ訪れて実物を見てみてください。

平等院

住所:京都府宇治市宇治蓮華116
アクセス:京阪宇治線「宇治」駅下車 徒歩9分、またはJR奈良線「宇治」駅 下車徒歩11分
拝観料(個人):庭園+平等院ミュージアム鳳翔館/大人600円、中高生400円、小学生300円、鳳凰堂内部拝観志納金300円

宇治川の周辺には、訪れたい名所や紅葉スポットがまだまだたくさん!

平等院表参道はここから始まります。正面の大鳥居は縣神社のもの。

1. 平等院周辺と宇治川沿い

宇治エリアには紅葉の名所が豊富。平等院を訪れたら、ぜひ散策も楽しみましょう。まずは平等院の表参道。名物の茶団子のほか、ちょっとめずらしい抹茶料理のお店が並んでいます。抹茶好きにはたまらない界隈です。

昔ながらの屋形船が見られる宇治川の風景。

宇治川沿いの遊歩道や、橘島・塔の島といった中洲も絶好の散策スポットです。「宇治川の鵜飼」の地としても有名。屋形船に乗って紅葉狩りも風流ですね。

2. 興聖寺の参道・琴坂

毎年多くの人が訪れるもみじのトンネル。

宇治川を渡ってしばらく歩くと、紅葉の名所として知られる興聖寺が。参道にあたる琴坂の紅葉が有名で、赤く色づくもみじの錦模様が楽しめます。坂といってもゆるやかなので楽に歩けますよ。

3. 天ヶ瀬ダム

自然の空気を感じたい人にはこちらの天ヶ瀬ダムもおすすめです。

興聖寺からさらに30分ほど歩くと天ヶ瀬ダムに到着。寺院らしい静謐な雰囲気の興聖寺に対して、天ヶ瀬ダムは雄大な自然の中の紅葉が魅力。無骨なダムと色とりどりに染まる秋の山とのギャップも見事です。

宇治エリアには平等院のほか、宇治川沿いにもたくさんの名所が広がっています。京都産業大学からは少し離れていますが、日帰り散策にはぴったりの距離なので、ぜひ天気の良い日に訪れてみてください。人出の少ない平日が狙い目です!

Hot Tag 注目のタグ

      学生広報スタッフ募集中!記事の話題になる情報も気軽にお寄せください!

      文章やイラスト作成、写真や動画の撮影や編集に興味はありませんか?広報部直轄の学生団体である学生広報スタッフは、キャンパスWEBマガジン「サギタリウス」に掲載する記事を企画から取材、原稿執筆までスタッフ内で分担して作成しています。また、最近は記事だけでなく写真や動画の撮影と編集、SNSの運用にも力を入れています。

      こんな学生におすすめ
      ★新しいことを始めてみたい
      ★情報発信に興味がある
      ★文章を上手に書けるようになりたい
      ★出版や広告、メディア方面の就職を視野に入れている
      ★写真、動画の撮影や編集に興味がある

      記事作成や撮影についての研修会も実施しているので、誰でもチャレンジできます。 興味があれば、ぜひ広報部までご連絡ください! また、「大学のこの情報も取り上げてほしい!」など、情報提供もお待ちしています。 一緒にサギタリウスを盛り上げましょう!


      広報部(本館2階)
      Tel:075-705-1411
      Mail:kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp
      PAGE TOP