2020.11.30

グルメ

上賀茂神社の名物、2軒の焼き餅屋さんを食べ比べ。それぞれの味わい深さを知る。

2種類の焼き餅。左が「神馬堂」、右が「葵家やきもち総本舗」。

京都産業大学へ向かう上賀茂シャトルバスの発着地、上賀茂神社。「大学への通学路」として、足早に通り過ぎる人も多いかもしれません。
学生にとっては当たり前の風景になっていると思いますが、実は上賀茂神社(正式名は賀茂別雷神社、かもわけいかづちじんじゃ)は神話の時代から続く、信仰の対象です。1994年、17ある「古都京都の文化財」の1つとしてユネスコ世界遺産に登録された歴史と格式ある神社です。京都の三大祭りのひとつ、「葵祭」でも知られています。雷(いかづち)の御神威により、厄を祓いあらゆる災厄をのぞく厄除け明神として信仰を集めてきました。京都産業大学と上賀茂神社は深い縁があり、たとえば学園祭「神山祭」を始め「神山天文台」「神山ホール」など、京都産業大では大学近辺一帯を指して「神山」という呼称をしばしば使うのはみなさんご存じでしょう。実は、上賀茂神社の縁起をひもとくと、祀られている「賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)」が降り立ったのは「神山」と記されているのです。

そんなご縁のある上賀茂神社ですが、今回注目するのは、その門前にある2軒の焼き餅屋さん。焼き餅はシンプルな和菓子ですが、地元の人にも親しまれる門前菓子で、観光客には「上賀茂神社の名物」として有名です。
今回は、京都産業大学のすぐ近くにあるこの「銘菓」を食べ比べ、お店の人にインタビューしました。

上賀茂神社の門前菓子、焼き餅の先駆者 神馬堂

明治5年(1872年)に創業し、昭和初めに上賀茂にお店を構えた老舗「神馬堂」。小豆を炊く火は、時代とともに薪からガスへ変わるなどの変化はあるものの、小豆の炊き方をはじめ、作り方は創業以来変わりません。
また、お客様の来店数や状況を見ながら、お店でその都度お餅をつき、餡を餅に包んで鉄板で焼いているので、いつも出来立てです。餅はその日の夜には硬くなるので、日持ちは1日だけ。ネット通販などはせず、お店に来てくださる人にだけ販売するところも神馬堂の特徴です。
味わい深い民芸調の包装紙は、その昔、上賀茂に住んでおられた日本画家の要樹平さんに依頼されたもの。神が騎乗する動物として神聖視された神馬が描かれています。
上賀茂神社と馬のゆかりは深く、5月の賀茂競馬(くらべうま)は迫力ある行事として知られます。また、この神馬堂の包装紙に描かれた白馬でいえば、1月の白馬総覧神事が印象的です。年の初めに白馬を見ると1年の邪気が祓われるという故事に則った神事で、例年は多くの人が見学に訪れます。他にも、多くの行事で神馬が登場します。
 ちなみに上賀茂神社の神馬「神山号」が普段過ごしているのは、京都産業大学であることをご存知でしょうか。総合グラウンドの北側にある厩舎にて、馬術部が預かっているのです。毎週日曜日、祝祭日、毎月1日、神事等のある日に、馬術部の部員が「神山号」を上賀茂神社まで連れて行きます。
現在の「神山号」は6代目。実は以前の所有者は作家の浅田次郎さんでした。その時のエピソードは2016年に浅田さんが本学で講演したときに紹介されていますので、ぜひこちらもご覧ください。
「図書館書評大賞講演会」で日本ペンクラブ会長 浅田 次郎さん講演
神馬堂の焼き餅を食べると、つきたてのお餅ならではのやわらかさや伸びを感じました。なによりも焦げ目が香ばしく、鉄板で焼いた独特の風味を感じることができておいしかったです。

上賀茂神社の神事に用いられる焼き餅 葵家やきもち総本舗

昭和25年(1950年)に創業された「葵家やきもち総本舗」。作り方は創業当初から改良を重ね、現在の焼き餅になりました。外側の餅の原料は滋賀県江州産の羽二重糯米。おはぎなどで使われる糯米とは違い、いつまでも柔らかくコシがある食感を生み出します。餡は北海道十勝産の大粒小豆を使用しています。この大粒の小豆を使うことによって、しっかりと小豆の粒の触感が楽しめます。
また、よもぎを使った焼き餅があるのもこの店の特徴です。当初は緑豊かな地元のよもぎを使っていました。現在は、蔵王で採られたよもぎを吟味して、年中食べてもらえるようにしています。
葵家と呼ばれることが多いですが、正式名称は「葵家やきもち総本舗」。歴史は長いのですが、店舗は改装されたばかりで新しくなっています。
 
ウェブサイトで通信販売をしているので、遠方でも手に入れることができます。
第20回全国菓子大博覧会「名誉総裁賞」、全日本和菓子展「日本銘菓大賞」といった華々しい賞を受けています。ちなみに、おはぎや赤飯、夏にはアイスもなかといった商品も置いています。
包装紙には葵祭の御所車が描かれ、創業者の杜下長一(もりした・ちょういち)さんの時代に作られた、「孫は孫でやきもちを手に葵祭」という詩が添えられています。「孫と一緒に、葵祭を観ながら、やきもちを持っている」という意味の詩です。
 
葵祭のやきもちは上賀茂神社の神事にも用いられ、地元民、観光客、神社とあらゆる方面の人に愛されています。
この御所車とは牛車のこと。天皇や貴族など、高貴な人が乗る牛車の名称です。藤の花で飾られた牛車は、葵祭の名物。葵祭りのときには、2基の御所車が、薄紫色の藤の花の装飾を揺らしながら、車輪を回してゆっくり進む様子が目を引きます。
葵祭の斎王代を乗せた「御腰輿」(およよ)を担ぐ「輿丁役」(よちょうやく)は、上賀茂神社とのゆかりが深い所功(ところ・いさお)名誉教授がおられたこともあり、代々京都産業大学の学生が担っています。
葵家やきもち総本舗の焼き餅を食べてみて、餡の粒とコシのあるお餅の食感を楽しむことができました。またよもぎを使った焼き餅はよもぎの風味と餡の甘みが抜群に合っていておいしかったです。

京都産業大学生へのメッセージ

神馬堂 池田様より
いつもシャトルバスの乗降のところに並んでいる姿が見えるので、京都産業大学の学生さんには親しみを感じます。コロナ禍で学生さんには先行きが見えにくい不穏な時代だとは思いますが、いま苦労しておくと、年を重ねたときにきっと楽に思えることでしょう。どうぞがんばってください。
葵家やきもち総本舗 杜下様より
百貨店の京都物産展の催事で出店していると、地方で活躍されている京都産業大学出身のOB・OGの皆さんがよく声をかけてくれます。在学中に買って食べてもらうのも嬉しいですが、卒業してからも懐かしんでくださるのがとても嬉しいので、また声をかけてください。
 実際に訪問して食べ比べてみると、どちらの焼き餅もそれぞれに素材の違いなどがあり、味わい深いおいしさでした。焼き餅そのものだけではなく、包装紙や店の構え、お店の方の雰囲気で、また趣が違います。2軒とも、朝早くから営業しているので、少し早めにシャトルバス乗り場に着いたら、ぜひ立ち寄ってみてください。
また、どちらのお店の方も、京都産業大学の学生に親しみを感じてくださっていることが、本当によくわかりました。地域の方々が大学生にあたたかい眼差しを向けてくださっているから、私たちも気持ちよく通学できていると気づきました。
「世界遺産・上賀茂神社の門前菓子といえば、焼き餅」。こうした文化が大学のすぐ近くにあると知り、嬉しかったです。遠くから足を運ぶ価値もあるお店が大学の近くにあるので、せっかくならちょっと通学路から寄り道して、食べ比べてみてください!

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